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カラヴィンカ 【遠田潤子】 [最近の素敵な本の棚]


 遠田潤子さんの作品は
   気力が充実しているときでないと読めない。

 「アンチェルの蝶」を読んだとき、その喪失と再生の物語に、
とても魅了され感動する一方、ストーリーの重さに読後ぐったり
として、こう思いました。そんな訳で、遠田さんの代表作とも
言われる「雪の鉄樹」も発売直後にすぐ入手しながら、まだ読ま
ず(読めず)・・・。でも、この作品は、本屋さんで手に取って、
出だしを数行を読んだだけで惹き込まれてしまい、気力などと
考えることなく買いました。

  カラヴィンカs.jpg
 ▲ 赤く染まった羽根が、カラヴィンカを象徴してます☆
   カラヴィンカ (角川文庫)
  •   ( ↑ amazonへは、タイトルをクリックしてネ!) 
       作者: 遠田 潤子
  •    出版社/メーカー: KADOKAWA
  •    発売日: 2017/10/25
  •    メディア: 文庫

【story】

 「・・・多聞?」
 深夜に青鹿多聞に掛かってきた電話の声。高音と低音が重なり
合って、こすれて震えた。歌っていなくても、歌っているように
聞こえる。そんな実菓子の声だった。 歌詞のない旋律を母音のみ
で歌う「ヴォカリーズ」として絶大な人気を誇る歌手・実菓子。

 「この女は最低だ。惑わされるな」
 彼女との関わりを絶とうと自分に言い聞かせる多聞に持ち込ま
れた仕事は、その彼女の自伝のインタビューだった。幼い頃から
一緒に育ち、義理の弟であり、実菓子のバックギタリストでも
あった多聞。次第に、実菓子、多聞の兄・不動、そして多聞を
めぐる過去の哀しい出来事が明らかになっていく・・・。

【ラストの余韻を味わって欲しい作品】

 「私には言葉がない」
 実菓子にはなぜ言葉がないのか。多聞はなぜここまで激しく
実菓子を憎むのか。過去をたどる中で、隠された想い、哀しみ
が次第に明らかになっていき、そして・・・。

 詳しくは書けませんが、冒頭からラストまで、多聞の、実菓子
の、そして不動のそれぞれの想い、刹那さがじわりじわりと染み
込んでくるような作品でした。特にラストは丁寧に読んで、物語
の余韻をじっくりと味わっていただきたいです (*^-')vイイ!
 改題前のタイトルは「鳴いて血を吐く」。まさに、そんな印象
の物語です。

【+plus】

 タイトルの「カラヴィンカ」(迦陵頻伽・かりょうびんが)とは、
上半身が人で、下半身が鳥の仏教における想像上の生き物。殻の中に
いる時から鳴き出し、極楽浄土に住むとされており、その声は非常に
美しく、仏の声を形容するのに用いられるそうです。

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