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湖底のまつり 【泡坂妻夫】 [推理小説の棚]

 書店で本を手に取ったとき、たまに『好みの小説かも!』
っと予感することがあります。この作品は、あらすじを読ん
で正にピンっときた作品。
 静かに、じっくり物語が進む正に私好みの作品でした!(^^)!

  湖底のまつりs.jpg

 ▲ このカバーデザインも素敵♪ センスいいですネ! 
   湖底のまつり (創元推理文庫)

  •    ( ↑ amazonへはタイトルをクリックしてね)
  •     作者: 泡坂 妻夫
  •     出版社/メーカー: 東京創元社
  •     発売日: 1994/06/18
  •     メディア: 文庫

【 story 】

 傷ついた心を癒すためにあてもない旅に出た香島紀子は、
東北の山間の奥にある温泉にたどり着く。古地図から、その
温泉から更に奥まったところに渓流があることを知り出かけ
るが、急に増水した川に呑み込まれてしまう。
 そんな紀子を救ったのは植田晃二という男性だった。その
夜、紀子は晃二と結ばれるが、翌朝、晃二の姿は消えていた。
晃二を探して彼が話していた村まつりに赴いた紀子は、そこ
で晃二がひと月前に殺されていたことを知る・・・。

【 上質なミステリ♪ 】
 こつ然と消え去ってしまった男性。紀子が出逢った男性は
夢だったのか・・・。 そんな不思議な謎に始まる作品。紀子の
次に、まさに晃二からの視点で出来事が語られると、さらに
謎が重ねられ・・・。
最初の謎と、重ねられた謎の矛盾は何だろうと引き込まれて
読み進めました。

 登場人物たち視点からそれぞれ描かれることにより、次第
に明らかになってゆく謎。そこに交錯するそれぞれの想い。
矛盾する事実も納得いくラストと残る余韻。レベルが高くて
魅了された作品でした。
 泡妻さんの作品は初めて!少し古い作品のようですが、それ
を全く感じず、とても読み応えがあって気に入った作品でした。
久しぶりに、私の好みにピタリとはまった作品に出逢えました。

【 +plus 】
 amazonで好みの作品がないかと探していたら、この作品を
見かけました。そこに紹介されたあらすじだけ見ても惹かれず、
きっと読まなかっただろうなと思います。やはり、本との出逢
いは本屋さんだなって改めて認識しました! 

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扉はとざされたまま 【石持浅海】 [推理小説の棚]

映像化もされ、5~6年前から気になっていた作品なのですが、
なぜか手に取らず・・・。
読んでみる気になって探したときには店頭になく・・・(ネットで
取り寄せて!というまでの感じではなくて)。
っと、なかなかご縁がなかった作品なのですが、この度ついに!

この作品は、2006年版の本格ミステリ大賞で最終候補作に
残り、「このミステリーがすごい!」や「本格ミステリベスト10」で
共に第2位、週刊文春ミステリーベスト10では第5位になるなど、
もともと評価の高い作品(実は、知らなかったのですが ^^;)。
その評価に違わず、とてもおもしろかったです。
もっと早くに読んでいればよかった~ ^^

  扉は閉ざされたまま .jpg
  扉は閉ざされたまま (祥伝社文庫)
   ( ↑ amazonへはタイトルをクリックしてネ!)
    作者: 石持 浅海
    出版社/メーカー: 祥伝社
    発売日: 2008/02/08
    メディア: 文庫

【 story 】

大学時代、表向きサークルの酒好きの6人が集まって作られ
た「アル中分科会」。卒業以来、会うことのなかった6人だが、
同窓会を開くことになり、久しぶりに再会する。場所は、都内
の閑静な高級住宅街に建つ洋館。会の中心メンバーの一人、
伏見亮輔は、その洋館で仲の良かった後輩・新山を殺害する
計画を実行に移すのだった。
密室で、事故死に見せかけた殺人。伏見は遺体発見を遅ら
せるために、仲間たちを言葉巧に誘導して、部屋の扉を開け
させまいとする。
しかし、碓氷優佳だけが開かない扉に疑問を抱き、鋭利な
推理で伏見を徐々に追い詰めていく・・・。

【 異色の展開のおもしろさ! 】

異色のストーリー展開石持さんは少しひねった作品を書くと
いうイメージの作家さん。この作品も、まず犯人が殺人を犯す
ところから始まるのですが、犯人が誰なのかも、被害者との
関係も、当然、犯行の方法(密室トリックがどんなものか)も
明かにしていて、謎なのは動機くらい。
犯人が犯行の発覚を遅らせようと(そうそう、なぜ、発覚を遅ら
せようとしているかについても謎)、仲間をミスリードしていくの
ですが、仲間に違和感を抱かせないよう仲間の思考や行動
傾向を考慮しつつ、その場面場面で臨機応変に頭脳を駆使
してミスリードをしていくという、ちょっと変わったおもしろさの
作品です。
それが、明晰な頭脳を持つ優佳(主人公と因縁がある)の
存在によって少しずつ崩されていく切迫感(なぜか、犯人に
感情移入している ^^;)が加わって、作品に惹き込まれま
した。

都内の住宅街に「雪山の山荘」シチュエーション(※雪山の山荘
であったり、無人島や陸の孤島など外部と遮断された環境で、
人が殺されていく)を構築してしまうところも異色で上手ですね。

【 plus+ 】

プラスこの作品は、第3作目がつい最近、文庫で出版された
ばかり。頭脳明晰な優佳が活躍するようですが、本作品では、
伏見との微妙な対立(?)関係が甘いテイストになって作品の
魅力を増幅させていました。その関係がなくなっているであろう
第2作目以降は、どんなテイストを加えて作品の魅力を創り出
していくのか楽しみです。
そもそも、伏見と優佳の関係がどうなったのかも興味深いので、
第2作目以降の作品を近々読んでみたいな


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占星術殺人事件 【島田荘司】 [推理小説の棚]

名探偵 “御手洗潔” の名前は知っていましたので、常々、一度は
読んでみたいと思っていましたが、正直、どの作品から読んだら
いいか分からなくて (やはり初期作品から読みたいですからね。
まあ、ネットで調べれば良かったのでしょうが・・・ ^^
この作品は、名作としてタイトルは聞いたことがありましたし、ちょうど
講談社でフェアをやっていたので、きっとハズレはないだろうと読んで
みることに! 今さらの御手洗潔デビューです ^^;ハハハ

  占星術殺人事件s.jpg
  ▲ 新書版のカバー!文庫版のカバーも作品の雰囲気が
   あるんだけど、こちらのが好みなので ^^
   
占星術殺人事件 (講談社文庫)
   ( ↑ amazonへはタイトルをクリックしてネ!) 
   作者: 島田 荘司
   出版社/メーカー: 講談社
   発売日: 1987/07/08
   メディア: 文庫

【 story 】

昭和11年に東京で起こった一種の猟奇犯罪的な連続殺人。
密室で殺された画家が遺した手記には、6人の処女の肉体を繋ぎ
合わせて「完璧な女=アゾート」を創る計画が書かれていた。
彼の死後、その画家の娘6人が行方不明となり、肉体の一部を切り
取られた姿で日本各地から次々と発見される。
そして、事件から40数年・・・。
日本中が大騒ぎで知恵を絞り、犯人を捜したが未解決であったその
迷宮入り事件に御手洗潔が挑む!

【 噂どおり、名作! 】

警察のみならず、あまたの素人探偵たちが謎に挑み、推理も出尽く
しているが、迷宮入りしてしまっている事件。私も、読み進める中で、
 “こんなトリックの可能性はないのかなぁ” と思ったことがいくつか
あったのですが、そんな私の思い付きのレベルなど、作中の素人
探偵の推理と同様、ことごとく一蹴されてしまいました。まあ、私の
推理など、何の確たる理論的な思考もなく、ただの思い付きレベル
なので、当然と言えば当然なのですが・・・ ^^;

しかし、作中でここまでいろいろな可能性を否定されると、思い付き
レベルでも思いつかなくなってしまい・・・
 “これだけ全否定してしまったら、作者はどんな真相を用意して
 いるんだろう!” 
とそちらの興味のが増してしまいました。
そんな感じなので、先へ先へと読み進めて、あっという間に読み終え
てしまった感じです。

結末も無理なコジツケではなく、明らかになってみれば、作中で御手洗
潔が触れているように単純な構図。
納得でした。

名作と言われるのが納得の作品でした。お薦めです!
♪( ̄▽ ̄)ノ オモシロイ♪″


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月光ゲーム Yの悲劇’88 【有栖川有栖】 [推理小説の棚]

何年か前に、有栖川有栖さんの作品を読んでみたことがあったの
ですが、正直なところ“あまり好みに合わないなぁ”という印象で、
それ以来読んでいませんでした。
(実は何を読んだかも覚えていない・・・ ^^;)。

今回、この“学生アリス”シリーズを人に薦められて読んでみたら・・・
о(ж>▽<)y オモシロイ☆
も~、早く続きが読みたくて一気に読んでしまいました。
さっそく、続編も読んだほどです。

月光ゲームs .jpg
月光ゲーム―Yの悲劇’88 (創元推理文庫)
 ( ↑ amazonへはタイトルをクリックね!)
作者: 有栖川 有栖
出版社/メーカー: 東京創元社
発売日: 1994/07
メディア: 文庫

【 story 】

夏合宿のために長野県・小諸にある矢吹山のキャンプ場へ
やってきた有栖川有栖たち英都大学推理小説研究会の面々。
そこで、他の大学生たちのグループと一緒になる。
意気投合し、楽しいキャンプを過ごすアリスたち。
しかし、矢吹山の噴火という予想だにしない事態が待ち構えて
いた!
登山道が崩れ落ち、陸の孤島と化したキャンプ場。
そんな閉ざされた世界で殺人事件が発生する。
犯人はこの中にいる!?
犯人は誰か?
そして、なぜ、被害者は殺されなくてはいけなかったのか・・・?

【 ミステリの王道に挑戦した勢いのある作品 】

作者の有栖川有栖さんがエラリー・クイーンの作品がお好きだ
そうで、エラリー・クイーンにならって、謎が明かされる直前に
「読者への挑戦状」があります。
私もちょっと挑戦してみようかなって思いましたが、犯人や理由、
犯行の方法など数々の謎が早く知りたくて、先を読み進めて
しまいました ^^;
ちなみに、正直なところ、提示されていた内容から犯人を推理して
解決まで導くのは、メモでもしながら、相当、細部まで注意して
読んでいないと難しいかなっていう印象です。
(少なくとも、私には無理かなぁ)

ストーリー的には、犯人の動機など説得力に欠けているように
感じたところもあり、粗さを感じた部分もありましたが、この作品は、
有栖川有栖さんの初期作(というか処女作)だそうなので、
若干の粗さはやむを得ないのかも。
しかし、一種の「雪山の山荘」シチュエーション(※外部との連絡が
一切断たれた、いわゆる密室のような状態で殺人事件が発生する
設定)というのは、ミステリの王道として推理小説好きには
たまらないシチュエーションですが、そんなミステリの王道に挑戦して
いるなっという気概が感じられるところや、
 “恋した女の子が犯人かも・・・” 
っという葛藤も描かれたストーリーは、青春ミステリーの要素もあって、
とても魅力的な作品になっています。

とても勢いがあって、タイトルにあるとおり「’88」と少し古い作品
かもしれませんが、それを感じさせないおもしろい作品です!

【 +plus 】

“有栖川有栖”が登場するのは、この“学生アリス”シリーズ(どちらか
というと“江神二郎シリーズ”と言う方が正しい?)と“作家アリス”
シリーズがあって、“学生アリス”シリーズの方が人気があるそうです。
私はまだ、“作家アリス“シリーズを読んでいないので、そちらの
シリーズも楽しみだなぁ!

【 ++plus 】

ところで、「月光ゲーム」の続編『孤島パズル』
「英都大学推理研“初の女性会員”マリアと共に南海の孤島へ赴いた
江神部長とアリスたちが絶海の孤島で遭遇する殺人事件」という
あらすじ(文字どおりアライ・・・^^;)ですが、これもおもしろかった~♪
お薦めです!

孤島パズルs .jpg
孤島パズル (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)
作者: 有栖川 有栖
出版社/メーカー: 東京創元社
発売日: 1996/08
メディア: 文庫

 

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凶笑面【北森 鴻】 [推理小説の棚]

最近、北森鴻さんの「冬狐堂シリーズ」の『狐闇』『緋友禅』
『瑠璃の契り』とたて続けに読みました。
おもしろ~い! O(≧▽≦)O

「冬狐堂シリーズ」の『狐罠』(←ここをクリックしてネ)は、以前、
このblogでも触れましたが、ホント、 読んでいて、肩に力が
入り続けて、読後に “ ぐったり ” としたほど読み応えがある
濃厚なミステリー。
喰うか喰われるかといった緊張感と、骨董という特異な世界で
一人立ち向かう陶子にハラハラ・ドキドキのしっぱなしでした。

さてさて、今回ご紹介する『凶笑面』は「蓮丈那智シリーズ」の
第1作で、以前から取り上げたいと思っていた作品です。
ちょっと怖いタイトルと表紙のイラストですが、
内容はおもしろいですよー! (^_-)

凶笑面―蓮丈那智フィールドファイル〈1〉 (新潮文庫)

凶笑面―蓮丈那智フィールドファイル〈1〉 (新潮文庫)

  • 作者: 北森 鴻
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2003/01
  • メディア: 文庫

 

【 story 】

「美貌」と「才能」という、天がニ物を与えてしまったという
異端の民俗学者・蓮丈那智。
彼女の研究室の元に一通の手紙と資料が届いた。
それは、悪名高い骨董業者からの調査依頼であった。

「ある寒村で、ある凶々しい笑いを浮かべた木造りの「面」を
村人が手に入れてから、村内に急に死者が増え始めた。
由来を神託によって調べたところ、面に怨念がこもっている
ことが分かり、怨念は権現の社に封印し、面そのものは
神様として勧請(かんじょう)した」 という由来のある面。

蓮丈那智と、その助手の内藤三國は、骨董業者からの依頼に
胡散臭さを感じつつも調査に向かう。(表題作)

【 「民俗学的な謎」の魅力 】

蓮丈那智シリーズは、東敬大学助教授の蓮丈那智と、その助手の
内藤三國が「民俗学」のフィールドワーク(調査)を通して遭遇する
ミステリー(連作短編作品)。
鋭い観察眼と思考力、冷徹とも思わせる言動を持つ彼女が
「民俗学的な謎」と「事件の謎」をクールに解き明かしていきます。

民俗学というと、なじみが薄くて、なんとなくとっつきにくそうな
イメージがありますが、この物語で語られる「日本書紀」や日本各地に
伝わる「伝承」や「伝説」の裏側にある隠されたものが、「事件の謎」
以上に、我々読者の興味を惹きます。
この物語で語られる「説」が、実際こまで民俗学としての「定説」であり、
どこまでが北森鴻さんの「仮説」なのかは分かりませんが、
それは別にして、遥か昔、そのような事実が実際にあったかもしれない
と想像するだけで胸がワクワクしてきます。

このシリーズを書くには非常に時間がかかるようです。
確かに、かなり調べ込んで、手間暇かけて書かれているように感じます。
だからこそ、読み応えがあるのかもしれませんネ。

このシリーズは、「香菜里屋シリーズ」や「冬狐堂シリーズ」よりは若干、
地味な印象を受けますが、とてもおもしろくて、魅力的なシリーズです。
北森鴻さんの作品は読みやすいし、他の作家さんとは違った
深い味わいがあって、どの作品もとてもお薦め!
イチオシです (o^-')b

 

【 +plus 】

このシリーズ中で 『狐闇』 とリンクする物語があります。
私的には、この蓮丈那智シリーズを読んでから「狐闇」を読むことを
お薦めします。
それで、もう一度、その物語を読むと、最初に読んだとき感じていた
物語の印象と違ってきて、再度、物語が楽しめますよ!


 


タグ:北森鴻
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狐罠【北森 鴻】 [推理小説の棚]

読み応えのある本が読みたくなって手に取った作品
 『狐罠(きつねわな)』
予想以上に読み応えがありました(^^) 

【 story 】

店舗を持たず、自分の鑑定眼だけを頼りに骨董を商う「旗師」。
「冬狐堂」を名乗る宇佐見陶子は、日は浅いものの、若さには似合
わない目利きと噂される旗師。
ある日、陶子は同業の橘薫堂(きくんどう)から唐様切子紺碧碗
(からようきりここんぺきわん)を仕入れる。
しかし、その古代のガラスの器は贋作だった。
プロを騙す巧妙な「目利き殺し」を仕掛けられた陶子。
贋作をうまく相手に売るつけたものが「やり手」と呼ばれ、売られた
ほうは「目がない」と蔑まれると言っていい骨董の世界。
陶子は、自分がその世界でプロを名乗る資格があるのか確かめ
るため、橘薫堂に意趣返しの罠を仕掛ける!

  狐罠s.jpg
  ▲ 「冬狐堂」の“狐”が仕掛ける“罠”という意味なのでしょうか。
    表装も妙に魅せられました!
     
狐罠 (講談社文庫)
     ( ↑ amazonへはタイトルをクリックしてネ!)
     作者: 北森 鴻
     出版社/メーカー: 講談社
     発売日: 2000/05
     メディア: 文庫

【 読み応えある物語 】 

魑魅魍魎(ちみもうりょう・老獪に人を出し抜く化け物のような人間の意)
が跋扈(ばっこ)し、百鬼夜行(ひゃっきやこう・得体の知れない者たち
が我が物顔に振る舞うことの意)の特異な世界。
僕の偏見も多分に含まれているのでしょうが、骨董の世界とはそんな
イメージです。

そんな荒海をひとり渡る主人公が「やり手」の橘薫堂に立ち向かい、
「はたして仕掛けは成功するのか!」と読者を魅了する展開だけでなく、
陶子の贋作に手を染めることへの緊張感や橘薫堂との駆け引き、
贋作師の迫力などが伝わってきて、非常に読み応えがありました。

さらに、陶子の「仕掛け」とは別の策謀がうごめき、複雑に絡み合って
いく様相に、物語にぐいぐいと惹き込まれて、次へ次へと待ちきれずに
読み進めました。

ただ、ラストの展開には、あまり細かく書けないけど(う~、書きたい!)、
ちょっと肩透かしを受けた感もあります。
しかし、私が期待していたラストの方向性とは違ってはいたものの、
決して内容の荒い力技ではなく、読者を驚かせるに十分な、練り込ま
れたラストだと思います。

陶子の仕掛けは成功するのか・・・。
まだ未読の方は楽しみにお読みください!


【 +plus 】

他の作品(シリーズ)の登場人物が登場することってたまにありますよね。
これが思いっきり出てきて物語に絡むと、その物語に他の作品の色が
混ざってしまい、物語の雰囲気を壊してしまうことがあります。
この「狐罠」にも「ビアバー香菜里屋」の主人が登場し、逆に、「蓮丈那智」
シリーズには宇佐見陶子が登場したりしています。
しかし、いずれもでしゃばり過ぎない控えめな登場なので、このくらいだと、
偶然、街で親しい友人に出会えたようなうれしさを感じます。
「ビアバー香菜里屋」で出される料理のように、
北森鴻さんの作品への絶妙な味付けに感動します。

  ※ レイアウトや誤字を修正しました。(2015年12月20日追記)

 


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パラレルワールド・ラブストーリー【東野圭吾】 [推理小説の棚]

時間を忘れてその世界に浸ってしまう、そんな小説にときどき出会いませんか?
  「気がついたらすごく時間が経っていた。」
  「気がついたら周りがフェイドアウトしていた(集中していた)」
といった感じ。「気がついたら」驚くときがありますよね。
そういう小説に出会えたときってすごく幸せ!
そして、この作品は私にとってまさに「それ」です!
初めて読んだとき、待ちきれなくて「次へ、次へ」と読んだ覚えがあります。


今回、このブログを書くに当って改めて読み直しました。
「さすがに今回は・・・」と思っていたのですが、
ところが、ところが、今回も時を忘れてのめり込んでしまいました(自分でも驚き!)。
でもでも、何度読んでもいいものはいいですよね~(は~満足!)。
ちなみに、いままで何人かにお薦めしましたが総じて好反応。
ず~と紹介したいと思っていた大好きな作品。
そう、今回は、満を持してのご紹介なのです。


 ★☆☆☆☆★☆☆☆☆★☆☆☆☆★☆☆☆☆★☆☆☆☆★☆☆☆☆★


【 ストーリーは?? 】

路線は違うが、二つの電車が同じ方向に、
しかも同じ駅に止まりながら並行して走ることがある。
大学院生の敦賀崇史は毎週火曜日、並走する電車の、同じ車両の、
同じドアのところに立つ女性に気づく。
彼女を見た日は一日中なんとなく気分がよく、逆に、たまに彼女を見つけられなかった時には、
どうしたのだろうと、崇史は気になって仕方がなかった。
そんなある時、崇史は一つの重大な発見をする。
彼女のほうも自分を見ているのではないか・・・ということを。
   双方のドアが最も近づく瞬間。
   ほとんど向き合った状態となるほんの二秒か三秒。
   二人は二枚のガラスを挟んで見つめ合う。
しかし、二人は言葉も交わすことなく時は過ぎていった。

就職を控えた最後の火曜日、崇史は一つの冒険を試みた。
彼女がいつも立っている場所に行き、彼女に近づいてみようと。
しかし、いつもの場所に彼女はいなかった。
落胆して、ガラスの外に目を向けると、ガラスの向こうにはいつも自分が乗る電車。
その電車の中に彼女の姿が・・・。

こうして出逢うことのなかった二人。
1年後、思わぬところで彼女は崇史の前に現れる。
親友の彼女として・・・・・。

パラレルワールド・ラブストーリー (講談社文庫)

パラレルワールド・ラブストーリー (講談社文庫)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1998/03
  • メディア: 文庫

 

【 魅力1:ほろずっぱさ 】

これに似た経験ってしたことありませんか?
素敵だな、魅力的だなって気になる女の子。
でも、話したこともなく、話しかけることもできず・・・。
ちょっと甘く、苦い、ほろずっぱい想い出。
そんな想い出をチクチクと刺激する導入部です。
も~、これだけで自分の好みの感覚にはまって
のめり込んでしまいます。

【 魅力2:苦しさ,つらさ 】

でも、ストーリーはここからまったく色彩の違う展開をします。
  現実に対する違和感。
  ときおり現れるまったく覚えのない記憶。
  崇史は自分の中で矛盾して存在する「記憶」への謎を追う。
  そして、交互に進行する二つの記憶(事実)が重なり合ったとき、真実が・・・。
実は、この「記憶」をめぐる謎を追うストーリーが中心です。
  ※ここからはネタバレになりそうなのでご注意を。


「かけがえのない友を選ぶか、それとも好きな彼女を選ぶか。」
恋愛の永遠の命題なのかもしれません。
多くの人が、理性的に考えればきっと「
親友」と言うのでしょう。
ただ、人の感情、特に恋愛感情ってそう割り切れるものではないですよネ・・・。
私も、もし崇史と同じ立場になったら、こんな選択を突きつけられたら、
もしかしたら崇史と同じ選択をしてしまうかもしれないと思います。
理想と現実。永遠に出ることのない答え。
「苦しさ」、「つらさ」という、恋愛の二面性(裏面)を
東野さんはみごとに描いていると思います。

【 私のベスト3に入る作品です! 】

東野圭吾さんの作品は一度「私が彼を殺した」を取り上げていますが、
実は数ある東野さんの作品の中で、この作品が一番好きです。
このブログを書き始めるときも、1番最初に取り上げる作品は、
自分の好きな作品、思い入れのある作品にしようと思ってかなり迷いました。
そのとき、「記念すべき第1号」の候補に挙がっていたのが、
この作品と栗本薫さんの「猫目石」です。
さんざん迷ったあげく、「猫目石」を取り上げましたが、いつかこの作品に触れなくては
と思っていた作品なので、今回触れられてちょっと肩の荷が下りた、そんな感じもしてます。

現在も、自分の好きな作品を3つ挙げてっていわれたら、
まず間違いなく挙げるこの作品。
是非ともお試しあれ!!

【 episode+ 】

最初、この作品を買うとき、実は躊躇(ちゅうちょ)したんです。
  「パラレルワールド」(平行世界って好みを刺激する~!)
  「
ラブストーリー」(大好き!!)
でも、併さった話って大丈夫?
SFは大好きだけど、ラブストーリーはラブストーリーで、
SFはSFで楽しみたいなって。
でも、そんなことはありませんでした。
もし、私みたいにタイトルだけで躊躇してしまっている方がいるのなら、
だまされたと思って読んでみてくださいネ。

決して後悔はしないと思いますよ!


タグ:東野圭吾
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すべてがFになる【森 博嗣】 [推理小説の棚]

皆さんって本を読むときはどういうときですか?
電車の中ですか?家のリビングですか?
ちゃんと姿勢を正して読んでいるのですか?

私の場合、
 ・「あと寝るだけ!」っという状態で、
 ・ベッドの上で枕元に電気スタンドを置いて寝転んで、
 ・眠くなったらそのまま寝てしまう、
というのが、最高の幸せです。

どきどきしながら読んで、読み終わって、その余韻にひたりながら寝るのなんて、
最高すぎて、も~言葉にできない!
このごろ、仕事が忙しくて、そういう時間がとれないのが悲しいです。

さて、さて、今回は森博嗣さんの「すべてがFになる」を紹介します。
も~、ずっと前から書きたかったけど、うまく書けなくて・・・。
ん~難しー。


 ★☆☆☆☆★☆☆☆☆★☆☆☆☆★☆☆☆☆★☆☆☆☆★☆☆☆☆★

【 さてさて、お話は? 】

天才工学博士・真賀田四季の最先端研究所がある妃真加島。
彼女は、その孤島の研究所で、少女時代から完全に隔離されて生活を送っていた。
その隔離された四季の部屋からウエディング・ドレスをまとい
両手両足を切断された死体が現れた。
その部屋は地下にあり、出入り口は一か所のみ。
部屋の出入りにはビデオで記録され、コンピュータにより完全に管理された密室。
誰の出入りも映っていない、記録も残っていない密室でいかに殺人が起こったのか。
その孤島にゼミ旅行で訪れていた、那古野にあるN国立大学建築学科の
犀川創平助教授と西之園萌絵はやむを得ず(積極的に?)謎に挑むことになる。

【 私にとって最高レベルの作品です 】

森博嗣さんのデビュー作にして、第1回メフィスト賞に輝いた作品。
そして人気のS&Mシリーズの1作目です。
(ちなみに、Sは犀川創平のS、Мは西之園萌絵の萌絵のМ)
あまりに有名すぎて、説明の必要はないですよネ。

さてさて、この作品は密室物です。
しかも、作品の中でも触れていますが、二重、三重の密室です。
どんな密室かというと、
 ・直接の
船の行き来のない孤島、
 ・その島にある閉鎖された研究所、
 ・出入りが徹底的に管理された部屋、
「密室、これでもか!これでもか!!」っていう感じですね。
こ~いうこだわりって、私の趣味を刺激するんです。

さらに私の趣味を刺激する要素がもうひとつ。恋愛の要素です。
『恋愛ものが好き』というと、「なんだ~、こいつぅぅぅ」といわれそうかな?
男としては、こう明言するのはちょっと恥ずかしい(考え方が古い!?)
けど、こういう匿名だから言えるのかも。
だから、ここでは宣言しちゃいます。「大好きで~す!」

さてさて、この作品ですけど・・・
西之園さんの犀川先生への想い。そして、犀川先生の気持ち。
進んでいるのか、進んでいないのか分からないような二人の関係の
「まどろっこしさ」がいいかも(笑)。
西之園さん自身、犀川先生が本当に好きなのか分かっていないし、
そして犀川先生自身も、彼女に対する気持ちがよく分からない。
でも、そんな恋愛初心者っぽい雰囲気が、作品に「すがすがしさ」を
感じさせてくれます。
でもでも、そんなに「恋愛」について自己分析しなくてもういいのにねぇ、
って思ったりしてしまいます。

【 ところで・・・ 】

批判するわけではないのですが(ごめんなさい!)、
このごろの森博嗣さんの作品にちょっと不満です。
っていいますか、難しすぎて内容が理解できない・・・(汗)
しかも、すべての主な作品が、このS&Мシリーズというか、
真賀田四季につながってしまっている感じ。
多少、リンクさせるならいいのですが、こんなにリンクしてしまうと、
各々のシリーズの素敵な世界がすごく狭くなってしまった感じがして・・・。
S&Мシリーズすべての作品が「大好き」なので、余計、
それらの作品を大切にしておきたいなぁっというのが正直なところです。
ただの私の勝手なのでしょうが。

【 どーでもいいのですが・・・ 】

西之園萌絵さんっのイメージって、私の中では常に
 「ふりふりのスカートをはいて、まさにゴスロリ?」
って感じなんです。
でも、パンツルックでタンクトップを着て、キャップをかぶった・・・・。
そのイメージがなかなかわかないんですよね。
でも、いまさら変わらないので、ゴスロリイメージで読んでいます。
そのギャップがまたいいかも!って思うこのごろ。
みなさんはどういうイメージで読んでらっしゃるのですか?
ん~、私だけなんでしょうか??


タグ:森博嗣
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十角館の殺人【綾辻行人】 [推理小説の棚]

宮﨑あおいさんが結婚されました。おっどろいた~
おめでとうございます。お幸せになってくださいね。
でも、仕事は続けて欲しいなぁ。

あと、映画「そのときは彼によろしく」の興行成績が伸びていない、
という記事を読みました。
私は好きなんだけどなぁ。
よかったら、
私のブログの熱い想いも読んでみてくださいネ。


 ★☆☆☆☆★☆☆☆☆★☆☆☆☆★☆☆☆☆★☆☆☆☆★☆☆☆☆★

さてさて、今日は、綾辻行人さんのデビュー作、「十角館の殺人」を紹介します。
この作品を最初に読んだのはいつだろう?
少なくても、も~10年以上前なのは確かです。
なので、きっかけも覚えていませんが、カバー裏のストーリー紹介に魅かれたことはもちろん、
辰巳四郎さんのカバーに魅かれたことはまちがいありません。
やわらかい線で、深緑を基調とした、とても重厚感のある絵だと思います。
とても好きです。
でもでも、辰巳さんの作品群を見ると、なかなかグロテスクというか、
デフォルメされた衝撃的な絵で、この作品の装丁とイメージが合いませんでした。
是非とも、「辰巳四郎イラスト・ギャラリー」を覗いてみてください。
私は、「館シリーズ」の装丁ような作品郡が好きだなぁ。装丁の画集が欲しいなぁ。

【 ストーリーは?? 】

半年前、凄惨な四重殺人の起きた九州の孤島・角島の「十角館」に、
大学の推理小説研究会の男女7人が訪れる。
島に建つ奇妙な建物「十角館」は、その名のとおり十角形―正十角形の外壁の内側に、
中央に正十角形の部屋(ホール)があり、その周りを十個の台形の部屋が取り囲んでいる。
その「十角館」で彼らを待ち受けていた、恐るべき連続殺人の罠。
アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」のように、一人ひとり殺されていく。
はたして生きて残るのは誰か?犯人は誰なのだろうか・・・・。

十角館の殺人 十角館の殺人
  • 作者: 綾辻 行人
    出版社/メーカー: 講談社
    発売日: 1991/09
    メディア: 文庫

 ▲ 辰巳四郎さんのイラストを感じてみてください!

【 密室物 】

この作品は「密室物」です。
密室物には文字どおり、物理的に人の出入りができない空間において
殺人が発生するというパターンと、物理的な密閉性はないものの、
人の出入りができないに閉鎖された空間で殺人が発生するという
パターンがありますよね。
この作品は、孤島において発生する殺人なので基本的に後者のパターンのお話です。

このようなストーリーって、森博嗣さんの「すべてがFになる」などもそうですが、
比較的多くの作家に用いられているモチーフかと思います。
でも、このようなストーリーは、なんとなくワクワクします。
非日常性の世界で、魅力的な世界が構築されるからでしょうか。
綾辻さんは、きっと、この密室物というか、本格派の推理小説に、
かなりのこだわりがあるのでしょうね。
本書の中でも、登場人物に推理小説についてとか、
「嵐の山荘」パターンについて、熱く語らせています。
この登場人物が語る解説。
「なるほど~」と感心し、納得させられます。

【 登場人物の名前 】

この作品の登場人物は、島を訪れる7人が、
「エラリイ」、「カー」、「ルルウ」、「アガサ」、「ポウ」、「ヴァン」、「オルツィ」
と、欧米の著名なミステリィ作家に由来するニックネームで呼ばれており、
その他、「江南(かわなみ)」(※「コナン」と呼ばれている。)、
「守須」(※「モリス」はそのまま)
といった人物が登場します。
これが、綾辻さんの「こだわり」というか、巧みなところなのでしょうね。

それにしても、恥ずかしながら、私は「ガストン・ルルー」っていったら
「オペラ座の怪人」しか知りませんでした。
”名前は知っていても、内容を知らない”作品の代表例だった「オペラ座の怪人」は、
何年か前に読んでいましたが・・・。
なかなかおもしろかったですよ。

【読みやすさ!】

本書の最後は、犯人が自ら、犯行の動機や犯行方法などを語ります。
よく犯行動機とか犯行方法をあまり明確にしない場合もありますが、
あまり語らなすぎると、その理由が理解できず、
読者に消化不良を起こさせてしまうことがあります
(すべての読者が読解力を持つわけではありませんよね。
最後の最後でよく分からないときがあったりして・・・(^^;)。
本書のように自ら語ることは、読者にとってとてもやさしいと思います。
そういう意味でも、推理小説の初心者とか、
本格物の初心者にとって読みやすい作品かもしれませんネ。

 ★☆☆☆☆★☆☆☆☆★☆☆☆☆★☆☆☆☆★☆☆☆☆★☆☆☆☆★
 
【 関係ない話ですが・・・ 】

以前、ある作品で、登場人物に、
  「重要な事実が偶然判明したり、偶然であった人物が事件の関係者で、
  重要な鍵を握る人物である」
なんていうストーリーは問題外だ!というようなことを熱く語らせている
作家(綾辻さんではありません)がいました。
ところがところが、その後のストーリー展開で、偶然、事件の鍵を握る人物と出会うんです。
なんなの?この作家は・・・っと唖然としました。
その作品、なかなか読みやすくておもしろかったけど、そこで興ざめ。
それ以来、その作家の作品は読んでいません。
今回、登場人物が推理小説について熱く語っている「十角館の殺人」を読み返していて、
そんなことを思い出しました。

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「新装改訂版」なるものが出ました。
装丁の雰囲気もいいですね(色使いが好きです!)。
改稿部分を読み比べてみるのもいいかもしれませんね。

十角館の殺人 新装改訂版 (講談社文庫 あ 52-14)十角館の殺人 新装改訂版 (講談社文庫 あ 52-14)
  • 作者: 綾辻 行人
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/10
  • メディア: 文庫


                         <平成19年11月4日追記>
 


 


タグ:綾辻行人
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そして二人だけになった【森 博嗣】 [推理小説の棚]

今日は暖かかったですね~。
映画情報をテレビで見ていて、久しぶりに映画を観に行きたくなりました。
前は映画の日などハシゴしたんだけど。
GWに向けて新しい映画も上映されるし、よ~し!映画雑誌とかでチェックだぁ

さて、今日は、森博嗣さんの『そして二人だけになった』を紹介します。

 森博嗣さんといったら・・・ 】

森博嗣さんの作品といったら、まず『すべてがFになる』に始まる
S&Mシリーズを思い出される方が多いと思います。
私自身、森さんの本を紹介しようと思って、まず浮かんだのがS&Mシリーズ。
もちろん、私が森さんの作品に初めて触れたのもこのシリーズ。
あまりに有名すぎて紹介するまでもないと思いますが、
知らない方もいるかもしれないので念のために簡単にご紹介!

【 S&Mシリーズって・・・ 】

那古野にあるN国立大学建築学科助教授の犀川創平と、
学生でミステリー好きの西之園萌絵が主人公。
それぞれの名前の頭文字をとってS&Mシリーズと呼ばれています。
このシリーズは10冊で一応の完結をします。

主人公が年上の男性と女子学生というのは赤川次郎さんに代表される
ライトミステリーを思い出しますが、このシリーズは、
犀川助教授が抜群の頭脳と独特のキャラクター性、
西之園萌絵も心に深い傷をもつなど、物語に重厚感と魅力を与えています
(もちろん、赤川次郎さんをけなしているわけではありませんヨ。
どちらかというと大好きで、少なくとも100冊以上は読んでいますから!)

すべてがFになる―THE PERFECT INSIDER (講談社文庫)

すべてがFになる―THE PERFECT INSIDER (講談社文庫)

  • 作者: 森 博嗣
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1998/12
  • メディア: 文庫


 ▲ 『すべてがFになる』は第1回メフィスト賞を受賞した作品。
    森ミステリーの原点なので、まずこれを読むのがお薦めです。

【 この作品を選んだわけは・・ 】

S&Mシリーズでは、「今はもうない」などはとても好きな作品なのですが、
これらを紹介するのはあまりにも当たり前すぎて新鮮味がないですよね。
多くの人が語っているし、「いまさら!」、なので。
今回はシリーズものではない「そして二人だけになった」を紹介します。
(「そして二人だけになった」も有名で、紹介しても新鮮味がないなんて
言わないでくださいネ。S&Mシリーズに比べれば、ということですから)
この作品もとても素敵!おもしろいデス。

そして二人だけになった―Until Death Do Us Part (新潮文庫)

そして二人だけになった―Until Death Do Us Part (新潮文庫)

  • 作者: 森 博嗣
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2002/11
  • メディア: 文庫

 

【 さてさて、どんなお話・・・ 】

全長4000メートルの海峡大橋を支える「アンカレイジ」。
(※橋のケーブルの端を定着する大きな巨大なコンクリート構造物)
その内部に密かに国家機密的プロジェクトとして造られた「バルブ」
と呼ばれる閉鎖空間。
そこに、盲目の天才科学者「勅使河原潤」とそのアシスタント「森島友佳」のほか
物理学者、土木構造物専門家、大学教授、医師の6名が実験のために籠もる。
しかし、プログラムの異常なのか、外界との完全に遮断され、
完全な密室と化した「バルブ」内で、物理学者が殺される。

お互いがお互いを犯人ではと疑心暗鬼の中、土木構造物建築家、
大学教授と次々に殺されていく。
残された盲目の天才科学者と彼のアシスタントの運命は・・・

【 どこがいいの・・・ 】

この物語は、密室物です。そう!推理小説といえば「密室物」ですよね。
私はどちらかというとトリックを見破ろうというよりも、
そのトリックがどんなものなのかワクワクします。
推理小説は好きだけど、推理は苦手なので・・・。

題名からも想像がつくように、隔離された世界で一人ひとりと殺されていくのは、
いうまでもなくアガサクリスティーの「そして誰もいなくなった」と同じモチーフ。
「そして誰もいなくなった」をモチーフにした作品は数多くあり、
やはり魅力的なモチーフですよね。
私も「そして誰もいなくなった」を初めて読んだときの衝撃は忘れられません。
本書は「そして誰もいなくなった」のようにマザーグースの歌(ロンドン橋おちる)
が出てきます。マザーグースの使われ方は違いますが・・・。

勅使河原潤、森島友佳、それぞれが秘密を持ち、物語はそれぞれの視点で
進んでいきます。
二人の視点から綴るストーリー展開の巧みさは逸品です。
ちょっと目的については消化不良でしたが。
状況からすると、残った二人はそれぞれが犯人は相手としか思えない。
しかし、それぞれが自分は犯人ではないと知っている中で、
実際の犯人は誰なのか、その目的は!こう聞いただけでワクワクしませんか?
そして残った二人とは・・・?

 も~お薦めです!!

そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 作者: アガサ クリスティー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2003/10
  • メディア: 文庫

 ▲ 久しぶりに読みたくなってしまいました。
   これを読んだのは夜中。暗くして。
   犯人が後ろにいそうで怖かった思い出があります。

 ※ ブログの移転に伴い、レイアウトを修正しました。<2009年5月31日追記>


タグ:森博嗣
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