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竜の柩 【高橋克彦】 [SF・伝奇小説の棚]

 人知や常識を超えた伝奇小説が読みたくなり、ネットで探していて
見つけた作品です。私の興味がある歴史の探求を絡めた作品とい
うこともあって読んでみたところ、超、私好みの作品でした。

   竜の柩1(祥伝社)s.jpg
  ▲ この写真では分からないでしょうが、迫力ある龍が描かれて
   います。詳しくは、下の【+plus】を読んでネ!
    
竜の柩〈1〉聖邪の顔編 (ノン・ポシェット)
    ( ↑ amazonへはタイトルをクリックしてネ!)
    作者: 高橋 克彦
    出版社/メーカー: 祥伝社
    発売日: 1997/07
    メディア: 文庫
    

【 story 】

 日本史の表舞台には現れてこないが、中世における国際貿易の
中心地として繁栄したとされる青森・津軽十三湊。その地で山々を
買い占め謎の行動をとる会社・津軽開発の目的を探るため現地に
入ったTV制作会社の九鬼虹人たち。やがて、『龍』というキーワード
が浮かび上がるが、津軽開発だけではなく、虹人たちの行動を
監視する謎の組織が出現し、身に危険が迫る。
 虹人たちは、謎の組織を牽制しつつ、ピラミッド説のある長野・
皆神山や「古事記」にも記されている諏訪大社、そして、出雲へと
各地に遺る龍の痕跡を辿っていく。
 『龍』とは何か、歴史に隠された秘密とは・・・。

【歴史の真実を想像する楽しさ】

 推理小説という形式ながら、我々が真実と信じている史実が実は
真実とは限らず、歴史は謎だらけであり、その謎を紐解いていく楽
しさを教えてくれたのは、北村鴻さんの蓮丈那智シリーズでした。
それまで興味がなかった民俗学などにも興味を持つようになり、
地域に残る伝承などには、実は秘められた歴史の真実が隠されて
いるかもしれないなどと想像する楽しさを知りました。
 この作品(第1巻)は、民俗学とは異なりますが、人々に崇拝され
る『龍』に絡めて、記紀(古事記・日本書紀)などから日本の神話に
まで遡る日本の歴史を紐解いて行きます。

  一見、滑稽にも感じる神話に隠された真実とは?
  『龍』とは何なのか?

 虹人たちが繰り出す説(龍が何であるか)は滑稽すぎると思う人
もきっと多いと思いますが、しかし、妙に説得力があります。
 日本という国の成り立ちに欠かすことのできない「大国主命の
国譲り」ひとつをとっても謎だらけの日本の歴史。埋もれてしまった
歴史の裏側には、もしからしたら、こんな埋もれてしまった真実が
隠されているのかも。そう考えながら読んでいると、知的欲求が
刺激されて、本当にワクワクしました。龍が何であるかは横に置い
ておくとしても、日本の歴史を知ることもでき、とてもおもしろい
作品です!

 このシリーズは全4巻。さらに続編「霊(たま)の柩」もあるよう。
第2巻は、「ノアの箱舟」の謎に迫っていくようです(正確には、
第1巻の終わりから始まっています)。こちらもおもしろそうなので
楽しみです ♪

【 +plus 】

 この作品は、祥伝社と講談社から刊行されています。

  竜の柩2(祥伝社)s.jpg竜の柩2(講談社)s.jpg
   ▲ 祥伝社(左)と講談社(右)の各第2巻のカバーです。 

 どちらもちょっと発行年が古いので、書店ではあまり見かけませんが、
ネットでは十分、手に入ります。
 私は、カバーに惹かれて祥伝社文庫を購入。京都・妙心寺の法堂
天井にある「雲龍図」(狩野探幽作)だそうですが、迫力がありますネ!
この絵を利用してカバーデザインを担当された方のセンスが光ってい
ると思います(*^-')bスバラシイ!


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水の迷宮 【高千穂 遥】 [SF・伝奇小説の棚]

“クラッシャージョウ”シリーズの最新作。
昔、このシリーズが大好きで、興奮して読んだ覚えがあります。
最近は、読む作品の好みも変わってきましたが、そんな想い出もあって、
書店で最新刊が出ているのを見かけたとき、躊躇(ちゅうちょ)なく手に
取りました。

  水の迷宮s.jpg
  ▲ 水の迷宮 (クラッシャージョウ)
    ( ↑ amazonへはタイトルをクリックしてネ!)
    作者: 高千穂 遙
    出版社/メーカー: 早川書房
    発売日: 2013/02/22
    メディア: 文庫

【 story 】

銀河連合からの依頼により、内戦が続く“水の惑星マルガラス”で、
先史文明調査チームの責任者デーラーの護衛を請け負った
クラッシャージョーのチーム。
中立地帯と紛争域の境界線上でいよいよ活動を始めようとして
いたやさき、調査チームは戦闘に巻き込まれ、ジョーはそこで
水中行動に特異な能力を持つ傭兵アプサラと出逢う。
マルガスで対立する二つの勢力の思惑が絡み合い、調査は予想外
の方向へと動き始めるのだった・・・。

【 想い出のシリーズ☆ 】

早川書房のホームページで「日本アクション・スペースオペラの祖」と
紹介しているとおり、スペースオペラ(宇宙で繰り広げられる活劇)の
“はしり”のシリーズで、今でこそ設定の目新しさはなくなりましたが、
当時は、ジョーを始めとする個性的なキャラクターたちが銀河宇宙を
大舞台に、いくつもの危機を乗り越え活躍するストーリーに、安彦良和
さん(ファーストガンダムのキャラクターデザイン)のイラストイメージも
手伝って、ドキドキ・ワクワクした本当に大好きな作品でした。

  美しき魔王s.jpg  美しき魔王new.jpg
  ▲ 今はなき「ソノラマ文庫」版(左)の当時は、表紙のイラストを
   見るだけでワクワクしていました♪ 
     現在の「ハヤカワ文庫」版(右)より、ソノラマの表紙のが
   今も好きかも!  

【 この作品は♪ 】

それで、この作品は・・・。
この「クラッシャージョー」という作品の魅力は、クラッシャー(宇宙の
なんでも屋)という仕事にプライドを持ち(高潔!)、不可能とも思える
仕事をやりとげる能力(危機に次ぐ危機にドキドキ!)、そしてタロス、
リッキー、アルフィンというメンバーの軽快な会話(ケンカしていても
仲間への信頼感!)などにあると思いますが、本作品は…。
ジョーたちの出番も少ないし、“ジョーたちでなければ!”というシーン
もないし、私が魅力と感じている要素はなかったかも。
しかも、舞台設定もあまり生かされてなかった印象だし(この設定
だと、「水の惑星」でなくてもいいような…)。

今でこそ複雑な設定、ひねったストーリーのスペースオペラ作品は
多いですし、そういった作品にも慣れてしまっているからかもしれま
せんが、この作品で、
 “この後の展開はどうなる!?”とか、“危機は脱せられるのか!?”
といった、昔のような興奮を味わうことはできませんでした。
でも、久しぶりにクラッシャージョーの世界に触れられて良かったです。
昔の作品をハラハラ・ドキドキした人には楽しめるのかもね ^o^;

【 でもでも! 】

もしかしたら、批判をしてるように見えるかもしれませんが、やっぱ、
“クラッシャージョー”シリーズは大好き O(≧∇≦)O !♪
私が本好きになるのに多大な影響を与えた作品の一つであるこの
シリーズは、きっといつまで経っても、私の心の中で重要な位置を
占め続けるのだと思います

 


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戦闘妖精・雪風 〈改〉 【神林長平】 [SF・伝奇小説の棚]

この作品との出逢いはアニメ!
何年か前、某レーベルの“記念作品”としてOVA化されたそうで、
記念作品になるくらいだからきっと魅力的な物語なんだろうと
思って見たのがきっかけです。
戦闘機デザインや飛行シーンのカッコよさもありましたが、
物語の独特の雰囲気に惹かれました。
そのとき原作があるのを知って、それ以来、本屋さんに行くたびに
手にとっていた作品です。
実は、アニメではストーリーが把握しきれず、ラストも見ていなかった
ので、初めて触れた作品のような感じで楽しめました

yukikaze.jpggoodluck.jpg
戦闘妖精・雪風(改) (ハヤカワ文庫JA) (←amazonへはここをクリックね!)
作者: 神林 長平
出版社/メーカー: 早川書房
発売日: 2002/04
メディア: 文庫

【 story 】

南極大陸に突如出現した巨大な紡錘形。
天空から打ち込まれた巨大なミサイルのように、氷棚に突き刺さる
格好をしたとてつもなく大きな白い霧柱。
それが、異星体ジャムの地球侵略用〈通路〉だった。
30年前、この〈通路〉を飛び出してきたジャムの先制第一撃で
人類はその存在を初めて知る。
そして、その〈ジャム〉に反撃すべく〈通路〉をくぐり抜けた先に
偵察部隊が見たのが惑星フェアリイだった。
そして、地球防衛機構は惑星フェアリイにFAF(フェアリイ空軍)を
派遣し、戦闘は惑星フェアリイへと移った―。

FAF最強の戦闘機・シルフィード。
そして、そのシルフィードのうち戦術偵察用に改良された13機の
スーパー・シルフィード。通称スーパーシルフ。
より高度な戦術戦闘情報を収集するため、戦闘空域の遠くから
情報を集め、“友軍機を見殺しにしても帰投せよ”という任務を
遂行するため、冷徹な心が要求される「特殊戦」のパイロットたち。
その「特殊戦」に所属し、スーパーシルフの特殊戦3番機である
パーソナル・ネーム“雪風”を操るのが深井零。
非情で孤独な任務の中、零が信じるのは愛機・雪風だけだった・・・。

【 謎と静かさが魅力の物語 】

人類の前に姿を現したことのない異星体・ジャム。
その姿が人間と似通っているのかも不明―
そして、ジャムとの最前線である惑星フェアリイも、ジャムの母星
なのか、そうでないかも分からない。
戦う相手は何なのか?本当にジャムは存在するのか?
明確なものがない、そんな霧に包まれたような印象の物語です。
そして、そんな霧が少しずつ晴れていくように、物語の謎や戦いの
意味が少しずつ(本当に少しずつ)明らかになるにしたがい、
どんどんと物語に惹き込まれました。
( <改> を読み終わっても、まだまだ謎なんですけどネ!)

そして、主人公の零。
“信じるのは雪風だけ”
零が戦う理由は、生残るため。そのため以外の他人とのコミュニ
ケートは不要、他人が自分をどう思おうと「それがどうした」という
ように、余計な感情を削ぎ落としたようなクールガイ。
私自身、正直なところ、どうして零に魅力を感じるのか言葉にでき
ないのですが、何かカッコよくて魅力的です。
主人公がそんな感じなので、ある意味、非常に静かな物語。
この静かさも魅力な作品だと思います。

この<改>は、まだ物語が始まったばかりという感じ。
続編“グッドラック”、“アンブコークンアロー”と非常に続きが気に
なります!

unbroken arrow.jpg 


【 +plus 】

『戦闘妖精・雪風』は第16回(1985年)の星雲賞を、
『グッドラック - 戦闘妖精・雪風』は第31回(2000年)の星雲賞を
受賞しているそうです。

ちなみに、「星雲賞」とは、日本国内および海外のSF小説と、その
周辺ジャンルを対象にした賞で、日本では最も長い歴史を誇るそう。
ちょっと古いですが、1988年には「銀河英雄伝説」(田中芳樹)とか
最近では2008年に「図書館戦争シリーズ」(有川浩)が受賞してい
るそう。
ところで、「図書館戦争」って、恋愛のジャンルばかりじゃなくて、
SFのジャンルにも入るんですネ!

 


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銀河英雄伝説【田中芳樹】 [SF・伝奇小説の棚]

「もっと読みたい!」

ラスト近くになって、読み終わるのが「おしい!」と思う作品(シリーズ)がときどきあります。
そんな作品に出逢えると、ホントうれしいです。
最近では、森博嗣さんの「S&Mシリーズ」(そうはいっても5年以上前ですが・・・)。
そして、この作品もそう。
最初に読んだのは、10年以上前。
時間を惜しんで読んだ覚えがあります。
先を読みたいんだけど、終わるのが寂しい・・・。
7巻くらいまで読み進めたとき、そんな感覚を味わった思い出があります。

そんな作品、『銀河英雄伝説』。
あまりにも有名で、漫画、アニメといろいろなメディア化された作品。
今更かもしれませんが、語らせてくださいネ

【 ストーリーは・・・? 】

銀河系をあまねく支配する一大王朝を築きあげた『銀河帝国』。
銀河帝国に反旗を翻し、民主主義を掲げて成立・発展を遂げてきた『自由惑星同盟』。
両者が繰り広げるあくなき闘争のなか、
それぞれの陣営に不世出の天才が出現したことで歴史が動き始める。
銀河帝国の若き天才軍略家、「ラインハルト・フォン・ローエングラム」。
そして、同盟において“不敗の魔術師”と異名をとる知将、「ヤン・ウェンリー」。
一方は自己の大望を成就するがため、一方は意図せずながら、
国家組織と歴史の渦に巻き込まれていく。
この二人の英雄の邂逅(※)が、銀河系の命運を大きく揺るがし、歴史は大きく動き始める。
    ※邂逅(かいこう・「めぐりあい」の意味)

銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)

銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)

  • 作者: 田中 芳樹
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2007/02/21
  • メディア: 文庫

 【第1巻・黎明編】  (※黎明・れいめい:「夜明け」「新しい事柄が始まろうとすること」の意味)

宇宙暦796年、帝国暦487年。
アスターテ星域において、銀河帝国軍と自由惑星同盟軍は対峙していた。
戦力比は帝国軍20,000隻に対し、同盟軍40,000隻。
圧倒的物量をもって同盟軍は三方から帝国軍に迫りつつあった。
誰もが同盟軍の勝利を疑わない中、
弱冠20歳にして帝国軍司令官のラインハルト・フォン・ローエングラムは、
戦闘の常識を打ち破った戦術に出る。
劣勢を好機に変え、二つの同盟軍艦隊を瞬く間に葬り去った帝国軍は、
残る同盟軍第二艦隊に矛先を向ける。
しかし、その第二艦隊の幕僚に、ラインハルトの戦略を見抜く、
弱冠29歳の若き天才「ヤン・ウェンリー」がいた。
― ここに新たな歴史が始まる ―


【 魅力1・登場人物! 】

作品の魅力を語る上で、登場人物の魅力というものは最大の要素の一つ。
一方の主人公、ラインハルトは、誰もが想像だにしない大望に、
強い意志を持って突き進みます。
普通、自分の限界を自分で決めてしまい、最初から諦めてしまうことはありがちですが、
ラインハルトの「自分を信じること」、そして、目的のためにはすべてを破壊してしまう
ような「強さ」が魅力なのかもしれません。
もう一方の主人公、ヤンは、ラインハルトとは異なり、時代がヤンの才能を必要とし、
自己の意思とは無関係におのずと表舞台に引き出されることになります。
溢れる才能への「憧れ」と、表舞台や栄進を本意としない「生きる姿勢」に魅力を感じます。
そんな対極で、しかも甲乙つけがたい両者の魅力が、
相乗的に物語の魅力を高めているのではないでしょうか。


【 魅力2・説得力! 】

物語には必ず背景があります。
登場人物のとった行動をひとつとっても、登場人物がどうしてそのような判断をしたのかを
読者が理解できないと、その人物に共感できず、同化して読むこともできません。
実際の人間関係もそうですが、その人の生い立ち、影響を与えた周りの社会環境・文化、
といった諸々の「背景」を理解して始めて、その人物に同化でき、
一緒に喜び、悲しみ、恋し、苦しみを共にすることができるのだと思います。
つまり、小説では、読者がその人物を理解できるように
「背景」を描かれることが必要で、
それがなければ、共感を得ることのない、深みのない物語に終わってしまいます。

しかし、「背景」を描くといっても、SFやファンタジーは、誰もが経験したことのない
世界・歴史を創造することになります。
現代小説や時代小説は、「現実」が舞台なので、自然と現実感がありますが、
SFやファンタジーは、それらと異なり、「現実感に乏しい行為」は
そのまま「現実性がない」と吐き捨てられてしまうので、物語の構成(世界観)をしっかりと
組み立てて説得力を与えなければなりません。

その点、本作品は、登場人物の人生を始め、銀河帝国の歴史・自由惑星同盟の歴史、
それぞれの国家の現状、思想といった「背景」が非常に緻密に描いていることから、
歴史の流れ、登場人物の行動の意味に有無を言わせない「説得力」があります。
これだけの「背景」を描くためには、作者の筆力と構成力も必要ですが、
その裏側に、深い知識と歴史認識・見識が必要なのだと思います。
田中芳樹さんすごいです。感嘆です!

このようにしっかりとした世界観が構成された中、魅力あるキャラクター、
そして多彩なストーリー展開の作品がおもしろくないわけありません!!

 【 雑感 】

田中芳樹さんの作品には、アジアを舞台にした作品も多いですが、
この作品は中世
ヨーロッパ、特にドイツをイメージさせる世界(特に名前)で、
どこか貴族・騎士道をイメージさせてくれて好きです。
「高貴」っていうイメージ!

【 どうでもいいけど・・・ 】

今回、東京創元社から刊行が始まったため、久しぶりに買いました。
10年以上前に買った新書版も持っているけど、気軽に読めるように文庫本にしました。
表紙は星野之宣さん。いいですネ!
本作品は、「叙事詩」といわれるように非常に大河小説のような作品で、
自分の抱いたイメージを大切にしたいと思った作品なので、
アニメっぽい表紙や挿絵は避けて欲しかったです
(表紙や挿絵は、その絵が作品のイメージを固定してしまうことがあるので・・・)。
なので、東京創元社さんの選択はGOODかな!!


 ※平成20年1月18日現在、5巻まで刊行されています。
   ちなみに、全10巻、外伝5巻だと思います。


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