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麦の海に沈む果実【恩田 陸】 [静かな物語の棚]

自分の好みにピタリとはまる小説を見つけたときって、
至福の喜びですよね。
そういう小説ってなかなか見つかりません。
そんな中、恩田陸さんの作品はのきなみピタリ!
こんな作品を読みたいな~って思う作品をどんどん発表してくださいます。
この方の作品のバラエティ性、フィールドの広さ、率直に感嘆します。
この『麦の海に沈む果実』もそう。
私の好みにピタッとはまりすぎるくらいはまった作品です。
この作品も、満を持しての紹介です。

 ★☆☆☆☆★☆☆☆☆★☆☆☆☆★☆☆☆☆★☆☆☆☆★☆☆☆☆★

【 どんなお話・・・? 】

白く濡れた車窓。その外の風景は、灰色の斜面に綿々と続く殺風景な針葉樹林。
湿原と巨大な池に囲まれた北限の学園に向かう理瀬は
不安に押しつぶされそうになりながらいた。
もともとは修道院の跡に立てられた学院。
全寮制の中高一貫教育を実践する学園には、いわくのある生徒たちが集まっていた。
   あなたは二月の最後の日にやってきた-ここは三月の国-
三月以外の転入生は破滅をもたらすという伝説のあるこの学園に
「二月の最後の日」に編入してきた理瀬は、寮で隠された
「三月は深き紅の淵を」という本を見つける。
不自然に学園から姿を消す生徒たち。彼らは殺されたのか。
理瀬が迷いこんだ「三月の国」の秘密とは・・・?

麦の海に沈む果実 (講談社文庫)

麦の海に沈む果実 (講談社文庫)

  • 作者: 恩田 陸
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2004/01
  • メディア: 文庫

 
【 どんなところが好きかというと・・・ 】

雰囲気が好き!
ヨーロッパ(キリスト教)的な『凛』とした雰囲気。
(カバーの絵の雰囲気も素敵ですよね。)
閉鎖された特殊な環境(学園)。

そこに存在する歪んだ世界の住人(生徒)たち。
時に女装をし、時に男装する神秘的な校長。
そして、なにより主人公「理瀬」の存在。
「内気な美少女」という印象とは裏に隠された秘密。

それだけでワクワクしませんか?
不思議がいっぱい、謎がいっぱいのお話って大好きです。

【 ゆるやかな物語のつながり 】

この作品は、「三月」シリーズ(といっていいのか)の基礎となる
『三月は深き紅の淵を』という作品と、
以前、このブログでも取り上げた『黒と茶の幻想』と軽くからんでいます。
そして、「三月は・・・」は「黒と茶・・・」とも絡んでいるので・・・・。
つまりは、それぞれの作品が、少しずつ絡み合っている、そんな物語たちです。
でも、それぞれの作品は完全に独立!
私も「黒と茶・・・」を読んだとき、「三月は・・・」との関係を全く気づきませんでした。
そのくらいの絡みなので、安心して興味を持った作品からお読みくださいネ。

でも、そんな絡み。このごろ、他の作品の登場人物を登場させる作家が増えていて、
ちょっと目新しさというものはなくなってきている感じがしています。
しかし、恩田陸さんの場合、読者に気づかせないような登場のさせ方をしていながら
(絡んでいることを知らなくても気にならない!)、
一方で、「これでもか!これでもか!」って物語を絡ませているようにも思います。
この「しつこさ」(ゴメンなさい!)、「徹底さ」といった「こだわり」が、
素晴らしい作品を書かれるゆえんなのかも・・・。

ところで、 『黄昏の百合の骨』 は「麦の海・・・」の理瀬の後日談。
両作品は「ゆるやか」ではなく、「しっかり」と絡み合ってます。
このまま、シリーズ化しそうな雰囲気も。
この「麦の海」が気に入られた方は、是非とも読んでみてくださいネ。
私は大好きです。

黄昏の百合の骨 (講談社文庫)

黄昏の百合の骨 (講談社文庫)

  • 作者: 恩田 陸
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/04/13
  • メディア: 文庫

【 後記 】

この作品は、ホントどう書いていいのか分からなくて悩んだんです。
「好き」なんだけど「理論的に説明できない」、
そんな感じの、まるで「恋愛」を説明するような作品でした。
読み直して、書き始めて1か月。
満足いく内容ではないけど、本当に紹介したかったので、あえて我慢してアップします。
ちょっと肩の荷が下りた、そんな感じです(^^)


タグ:恩田陸
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