ナムジ -大國主- 【安彦良和】 [コミックの棚]
日本最古の歴史書である古事記、日本書紀(いわゆる「記紀」)
にも出てくる、出雲大社の祭神としても有名な大国主命(おおくに
ぬしのみこと)を主人公とする作品。
出自不明のナムジが、やがて大国主命として於投馬(いずも)を
治めることになるが・・・。安彦良和さんの描く魅力的なキャラたち
が躍動しています。
▲ ナムジ―大国主 (1) (中公文庫―コミック版)
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作者: 安彦 良和
出版社/メーカー: 中央公論社
発売日: 1997/09
メディア: 文庫
【 story 】
2世紀後半、倭の国・於投馬(いずも)。その浜に1人の少年が
漂着する。彼の名はナムジ(大國主)。
彼は、鉄山に強制労働に出され、倭人としての印である刺青を
入れられる。そこで、その地を治める王スサノオの娘・スセリとの
出逢いがナムジの運命を変えていく・・・。
【 古代史の魅力♪ 】
いくつか読んだ古代史に関する本によると(詳しくはないので、
ここに書いていることもどこまで定説なのか分かりませんが)、
大国主命などの神々の時代(記紀以前の時代)については、
「真実の歴史は分からない」と言うのが本当のところだそうです。
つまり記紀に描かれた神話は、当時の権力者によって都合
良く描かれている可能性があり(例えば、出雲の国譲りは平穏
に行われたように書かれていますが、実は、武力を背景にした
委譲というのが定説だそう)、遺跡や出土品などから、「当時は
こうだったのだろう」といった推測(解釈)するしかないのだそう
です。
したがって、我々が歴史の真実として教えられている事実も、
実は、推測が幅広く支持されたものなんだそうですが、古代の
人々の価値観や行動様式が現代人のものと一致するとは限り
ませんから、もしかしたら、現代の感覚などで行う解釈(想像)
自体が間違っているのかもしれません。
そんな何も分からない時代のことですから、いろいろな解釈
(想像)がなされますが、もしかしたら真実はこうかもしれないと
想像がかき立てられるからこそ、古代史にロマンを感じ、人々
を魅了しているのでしょうね。
このナムジも安彦版「大国主命」物語。かなり大胆な解釈が
されている印象も受けましたが、現代の常識が通じない世界
を舞台に、ナムジという若者の冒険・出世物語として楽むこと
ができました。面白かったです!
【 +plus 】
▲ 1巻と4巻のカバー。上の中公文庫版と比較して見てネ!
古事記巻之一 完全版 ナムジ 大國主 壱 (カドカワコミックス・エース)
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作者: 安彦 良和
出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
発売日: 2012/08/22
メディア: コミック
カドカワコミックスからも、ナムジが刊行さえています。カドカワ
コミックスはB6判ですので、中公文庫(文庫判)より少し大きい
のかな。
恐怖の宇宙帝王/暗黒星大接近 【エドモンド・ハミルトン】 [古典的名作の棚]
私が “古典的SF” 作品というとまず思い浮かべるのが、この
「キャプテン・フューチャー」シリーズ。学校の図書館で借りて、
止められずに夜中まで読んだ想い出があります。
当然、とっくに、このブログで取り上げていたと思っていたの
ですが・・・。たぶん、ほとんどの作品を読んでいるはずですが、
やはり第1作を取り上げますね。
▲合本版の表紙は、鶴田謙二さん。
大好きなイラストレーターさんです。
恐怖の宇宙帝王/暗黒星大接近! <キャプテン・フューチャー全集1> (創元SF文庫)
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作者: エドモンド・ハミルトン
出版社/メーカー: 東京創元社
発売日: 2004/08/24
メディア: 文庫
【 story 】
幼い頃、両親を殺害され、科学者で「生きている脳」のサイモン、
鋼鉄ロボットのクラッグ、合成人間のオットーにより月面基地で
育てられたカーティス・ニュートン。
3人による英才教育の結果、高度な科学知識とずば抜けた
身体能力を身につけ、正義感に溢れた若者に成長した彼は、
太陽系の未来のためにキャプテン・フューチャーと名乗り、人々
のために生きる決意をした。そして、人々の危機を幾度と救い、
太陽系の人々から尊敬を集める存在となっていた。
そんなキャプテン・フューチャーたちに、太陽系政府主席から、
助けを求める連絡が入る。木星で「祖先返り」と呼ばれる、人々
が獣に変化する事件が発生し、拡大しているというものだった!
【 冒険ロマンに満ちたシリーズ☆ 】
善は善、悪は悪と単純明快なのが古典的作品のいいところ。
善が実は悪であったり、悪であると思ったら実は正義の真実が
隠されていたりといった複雑さはなく、単純に、善が悪と戦い
懲らしめていくので安心して読めます。
また、第1作の敵が「宇宙帝王」のように、今だったら絶対に
つけないであろうネーミングがほほえましくもあります。
そして、最大の魅力は、現在の科学的常識にとらわれること
のないロマンが満ちあふれたところ。
この第1作の舞台は木星ですが、木星人がいたり、失われた
高度な文明の痕跡があったり、まだまだ未知・未開の地が多く、
想像を絶する生物がいたりして、まさにフロンティアでの冒険
ロマンに満ちあふれています。
そして、キャプテン・フューチャーが発明した人の姿を見えなく
する装置(ただし、万能の装置ではなく、効果の時間が限られ、
それで窮地に立つこともあるところがニクい!)などの高度な
科学技術を活用して、幾多の危機をくぐり抜け、コメット号で
太陽系を所狭しと駆け回るところなどワクワクさせられます。
今では、きっと、こういう魅力の作品は描けないでしょうね。
▲ ハヤカワ文庫版の表紙。このシリーズは、古書店など
で見つけると、手に入れるようにしています。
味があるイラストですよネ♪
【 +plus 】
この合本版では、キャプテン・フューチャー誌(というものが
あったよう)に掲載されたコラムが紹介されています。それによ
ると、キャプテン・フューチャーの世界では、月に人類が到達
したのは1971年(現実は1969年)だそう。月への到着は、
現実とほとんど一致していますね。
キャプテン・フューチャーの第1作が発表されたのが1939年。
そして、キャプテン・フューチャーの世界では、1988年に木星、
2002年には冥王星に到達しているそうですから、作者のエド
モンド・ハミルトンは、2016年って世界をどんな世界になって
いると想像していたのかなぁ!
ストーリー・セラー 【有川 浩】 [ラブストーリーの棚]
この作品は、ハードカバーが出版された際、デザインが素敵だ
と感じたのと、内容も非常に評判が良かったのを覚えています。
なので、文庫になるのを待っていたのですが、ここ最近、ラブ
ストーリーに触手がのびなくて・・・^^;
文庫が発売されたのを知っても、手に取りませんでした。読んだ
きっかけは人が貸してくれて。読んでみたら(*^-')bグッド♪
▲ 青いリボンが鮮やかな素敵なデザインですネ♪
ストーリー・セラー (幻冬舎文庫)
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作者: 有川 浩
出版社/メーカー: 幻冬舎
発売日: 2015/12/04
メディア: 文庫
【 story 】
「彼」に背中を押され作家になった「彼女」
二人は夫婦になり、幸せな生活はいつまでも続くと思っていた。
しかし「彼女」を襲った病・・・「致死性脳劣化症候群」。
「彼女」のためだけに名付けられたその病気は、複雑な思考を
すればするほど脳が劣化し、やがて死に至る病だった。
二人が選んだ道は・・・。
【 有川作品って“だ~い好き” ^-^ 】
最初に触れたとおり、ラブストーリーは久しぶりで、ましてや有川
作品に限定するとなるとなおさらでした。読んでみたら、さすが
有川さん、読みやすい!冒頭からスーと物語に惹き込まれ、
とても心地よく物語が展開、そして、胸をギュッとつかむ読後感!
どうしたら、このような読後感を醸し出せるのでしょうね。
「もっと有川作品を読みたい!」っとスウィッチが入ってしまい
ました。
作品としては、side:Aとside:Bの2作品が収録されています。
いずれも、「彼女」が作家であることを共通に、「彼女」と「彼」を
めぐる物語ですがそれぞれは独立した全く別の物語。
いずれの作品も、運命的とも言える出逢いに始まり、お互いを
深く理解し合った夫婦の絆、そして死が二人を別つまでのキレイ
すぎるくらい美しい、理想とも言える二人の関係が描かれていま
す。こんな美しい関係など、現実にはありっこないよと突っ込み
たくなります(笑)
でも、この徹底した理想と美しさに嫌みがないところがいいです
よね。だから有川作品って大好きです。