やさしい旋律【井上香織】 [静かな物語の棚]
昨年のクリスマスのころ、上映された作品の原作。
映画を観に行けず、この小説は映画の上映開始前に買ったのですが、
先送りになってしまっていました。
なぜか急に、ふっとこの小説が読みたくなって、読み始めました。
透明感のある素敵な作品でした。
【 story 】
愛していた彼に裏切られ、その彼の相手は親友・・・。
深く傷ついた過去を引きずるOLの美月茉莉亞(まりあ)。
誰かを信じて、そしてまた裏切られるのが怖い!
恋愛に臆病になっていた彼女は、心を閉ざしたまま
会社と家を淡々と往復する毎日を送っていた。
職場の先輩、榊に心惹かれても、自分の心の扉にしっかり鍵をかけて...。
そんな茉莉亞はクリスマス間近な雪の降る晩、ゴミの集積所に捨てられた
木製の細長いローテーブルのようなものを見かける。
それは、心の奥底に染み渡るようなやさしい音色を響かすピアノだった。
茉莉亞は自分にとまどいつつもピアノを自分の部屋に運び入れる。
そして、それ以降、茉莉亞の心をときほぐすかのような出来事が起こってゆく。
【 「本当の恋」と「運命の人」 】
恋愛の痛手って、それが本気であればあるほどつらいですよね。
ホント、簡単には割り切れないです。
なので、この物語の主人公「茉莉亞」が、恋に失敗して臆病になってしまうところ・・・。
あんなつらい思い、二度と味わいたくない・・・と思い、心に薄い膜のようなシールドを
張りめぐらして、なんとか自分を守ろうとするところ・・・。
そういうのって、自分を守るために、当然のことと思います。
そして、自分もそうだからか、すごく共感します。
また、命の人を求める茉莉亞の恋愛観。これも共感!
ロマンチックな理想論かもしれないけど、
もし破れたときに、つらく感じない、あっさりと気持ちを整理できてしまう恋愛は、
本当の恋愛ではない。
と思います。皆さんはどう思いますか?
それは真理ではないかもしれませんが、私の恋愛観です。
こんな風に、「茉莉亞」の性格や恋愛観は、自分の感覚と非常に近くて、
読んでいて同化し、物語がす~と私の中に入ってきた感じです。
また、この小説は、心に傷を負った女性の物語なので、内容的には重いと思うのですが、
茉莉亞の心が解きほぐされていくところがすがすがしく、まさにピアノの音色のように
透明な雰囲気に包まれた小説という印象でした。
なかなか素敵な小説ですよ!
【 +plus 】
ロマンチックすぎるかも知れませんが、私も茉莉亞のように
「運命の人=心から愛することができる人」
と出逢えたらいいな。
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