イニシエーション・ラブ【乾 くるみ】 [ラブストーリーの棚]
【ご注意】 この作品は何の先入観も持たずに読んでください。
その方が楽しめると思いますよ。
このブログも、読み終わってから読むようにしてくださいネ!
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文庫の背表紙の解説に「最後から二行目(絶対に先を読まないで!)で、
本書は全く違った物語に変貌する。」
とありましたが、最初、読み終わっても気づきませんでした。
さらに解説は
「『必ず二回読みたくなる』と絶賛された傑作ミステリー」
と続いていたけど、「確かに私好みなので2回目を読みたいと思ったけど、
ラブストーリーが好みじゃない人は2度目を読みたくなるかな?」
って不思議に思っていました。
なので、この小説を最初に読んだときは、自分の恋と重ね合わせて、
気になる女性が現れたとき、「こんな女性と恋人になれたらなぁ」とか、
ちょっとしたしぐさに、「もしかしたら自分のことが好きなんじゃないか」と
あわい期待をいだいてみたり、自分が傷ついたりがっかりするのが嫌で
「いやいやそんなことはない」と思い直してみたり
と、うじうじと悩んだり、臆病になったり、時には自分でも信じられない勇気がでたり
したことを思い出してひたってました。
なので、私好みの「純粋な」ラブストーリーとして、気に入って、
二度目を読み始めていたんです。
解説の「必ず二回読みたくなる」とは違う意味でネ。
なのでこのブログでも、純粋なラブストーリーとして、
私の「お気に!」として取り上げようと思っていました。
背表紙の解説をふっと思い出しました。
「最後の二行?なんだったのだろう」
疑問に思ってラストを再度、注意深く読み直したら、まさに衝撃が待っていました。
まさに衝撃の作品です!
【 お話は? 】
代打で呼ばれた合コンの席。
「合コンで出会った女性などと付き合いたくはない」 そう思っていた僕は
「マユ」と出会う。
やがて僕らは恋に落ちて・・・・。
- 作者: 乾 くるみ
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/04
- メディア: 文庫
【 最初の感想 】
「side-A」と「side-B」という2部構成の作品。
「side-A」は、「たっくん」と「マユ」の出逢いから、二人の恋愛が瑞々しく描かれています。
最初にも書いたとおり、恋をしたときの男性の心情がとてもリアルに描かれていて、
自分の恋と重ね合わせました。
気になる女の子が他の男性とニコニコしながらおしゃべりしているのを見るだけで
なんともいえない嫉妬心が沸いてきたり、押さえ切れない「会いたい」という気持ち、
想いを伝えることができなくて悶々とするところなんて、まさに
「あ~、そうなんだよね」
って、そのときの気持ちが思い出されて、
なんともいえない気持ち、心に「チクッ」とさせられるものがありました。
「side-B」は、「たっくん」と「マユ」が、お互いに気持ちが通じ合った後の第2段階の物語です。
会えないこと、会わないことがすれ違いを生じさせたりする・・・、
そんな恋愛の難しさを実感させてくれます。
「遠距離恋愛」って経験したことないけど、一般に言われるように、
距離って、心と心にも距離をつくってしまうのかもしれません。
でも、それらを超えられる「恋」から「愛」への発展であればいいなぁっと思います。
なので、恋・愛に「イニシエーション」(※)はないのが理想かな。
ただ、たっくんの「もったいない」って気持ちは分かります(女性に怒られそうだけど・・・)。
※イニシエーションとは、しばしば苦痛を伴う通過儀礼の一つだそうです。
【 再読後の衝撃の感想 】 ※ まだ読んでいない方は、以下は絶対に読まないでください!!
「えっ?!」っということは・・・・ 。
(最後から二行目を再読して衝撃がはしりました)
「side-A」と「side-B」のたっくんは別人・・・。
それを前提に内容を思い返してみると、まったく違った物語が浮かび上がってきました。
そこで再度、読み進めるにあたって「時系列」を作成してみました。
その時系列をブログに載せようか迷いましたが、やめておきます。
マユの心情がつづられていない以上、一方的な「マユ」への批判になりそうだから・・・。
それはフェアじゃないからね。
でも、マユはどういう気持ちで、夕樹を「たっくん」と呼ぶつもりになったのか、
二人と平行して付き合っているとき何を考えていたのだろうかと、
マユの心理を知りたくなりました。
きっと、マユにはマユの言い分があるのでしょうね。
(もしかして女性だったら共感できる部分があるのかな?)
最初読んだときは、たっくんについて、男性として気持ちは分かるけど・・、
でもマユがかわいそう。
それが、最後から二行目を読んだ後は・・・。
二度目がこんなに違った角度から読める作品はすごい!
本当に感嘆でした。
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