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生まれる森【島本理生】 [最近の素敵な本の棚]

心情を言葉にするのって本当に難しいと思います。
特に人を好きと想う気持ちとか、通じない想いのやるせなさとか。
それを島本理生という作家はなんでこれほど的確に「ことば」にできるのでしょう・・・。
想像だけなのであればそのリアリティある想像力に驚嘆するし、
経験を元にしているのであれば、なんていう恋を経験してきたのかと
驚愕せざるを得ません。
伝わってくる心の痛さは共感などという生易しいものを通り越して「衝撃」です。

生まれる森 (講談社文庫)

生まれる森 (講談社文庫)

  • 作者: 島本 理生
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/05/15
  • メディア: 単行本


 ▲ この装丁はまさにこの作品の世界を表していると思います。
   この装丁を気に入った方は作品も気に入ると思います。とても素敵な装丁です!

【 あらすじ 】

失恋で心に深い傷を負った「わたし」。
なにげない会話から、夏休みの間だけ大学の友人・加世ちゃんからアパートの部屋を借りて
一人暮らしすることになる。
  癒されない心、心の穴は埋まらない。
そんなときに再会した高校時代の友達「キクちゃん」。
彼女の家族と触れ合いながら、彼女らのやさしさに導かれ、わたしの心は次第に癒やされていく。

【 惹きつける魅力 】

まるで心に薄い膜がかかっているように感覚が麻痺し、夢をみているような非現実的な感覚。
この物語の主人公「わたし」はそんな感覚の中で漂っています。
まるで、あふれんばかりの気持ちを、狂わんばかりの想いを心の奥底に押し込めるため、そして、自分を維持するため心にフィルタをかけている、そんな感じです。
そして、そのフィルタが少しだけ破けてしまったとき、自分でも気づかぬうちに涙があふれ出ている…。

心に強い衝撃を受けたとき、そんな感じになったことがあります。
こういう想いって、なかなか「ことば」に表現できなくて、心の中が「もやもや」としたまま・・・。
やるせなくなります。
この物語は、そんな想いを自分の代わりに的確に表現してくれて、もやもやをすっきりさせてくれた
心地よさに似たものがありました。

だからこそ、「わたし」の漂う心、想い、つらさ、痛みなどがひしひしと伝わってきます。
的確すぎて、読んでいてつらくなるところもあります。
でも、それだけではなく、癒されていく主人公と一緒に癒され、心が再生していくように感じました。
まさに題名からイメージされるような「深く沈み込んだ森から生の息吹を取り戻してゆく」物語。
最後は気持ちをやわらかくしてくれた素敵な作品です。

【 +plus 】

実は島本理生という作家を知らないときからこの作品が気になっていました。
何度も手に取っていた本。
この作品も出会うべくして出会った感じがしています。


タグ:島本理生
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