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百瀬、こっちを向いて 【中田永一】 [ラブストーリーの棚]

「せつない恋心が感動を呼ぶ」という帯の宣伝に、正直、
「せつない」のは苦手だなぁと思ったのですが、その横に、
大好きな岩井俊二監督の紹介文もあって、半分試しで
買ってみた作品でした。
そんな感じなので、正直なところあまり期待していなかった
のですが、“痛いせつなさ”ではなくて、読後感がなんとも
心地のいい、とっても“素敵なせつなさ”の作品でした。
 (o^-')bオススメ!

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百瀬、こっちを向いて。 (祥伝社文庫) (←amazonへはタイトルをクリックね!)
作者: 中田 永一
出版社/メーカー: 祥伝社
発売日: 2010/08/31
メディア: 文庫

▲ 真っ白な表紙に、ターコイズブルーのような美しい
  色の文字。
  物語のさわやかさを表現したような素敵な表紙です♪

【 story 】

「ノボルにたのみがある」
幼馴染の先輩に連れ出された図書室には、野良猫のように
挑戦的な目つきをした女の子が待っていた。
そしてその頼みとは、その女の子・百瀬陽(ももせよう)と恋人
のふりをすることだった。
そうして始まった百瀬との嘘の恋人関係―
ふたりだけの屋上で百瀬に髪を切ってもらったとき、頭上に
高く広がっていた7月の空。先輩とその彼女とのダブルデート。
ひとつひとつ増える思い出が僕の気持を切なくさせていること
に気づく・・・。

                (「百瀬、こっちを向いて」より)

【 繊細な“恋”を描いた作品 】

タイトルにもなった「百瀬、こっちを向いて」を含め4つの短編
からなる、繊細な恋心を描いた物語。
いずれの作品も、“好き”という気持に気づくまでの微妙な心が
描かれているのですが、ちょっと“キュン”として、甘酸っぱくて、
でも、青空の下で爽やかな風に身をなでられているような心地
よさが残る素敵な作品でした。

4作品のうちでも、私は“特に”「なみうちぎわ」という作品が好き。
家庭教師をしていた教え子・小太郎を助けようとして遭った
海の事故により5年後に意識を取り戻した姫子が、時が止まっ
ていた間に自分の年齢を追い越してしまった小太郎へ対する
心の変化が描かれた物語です。
物語の雰囲気自体も静謐ですが、姫子が静かに心と向き合い、
そして、気持を確かめていくところが、ほんのりとあたたかい
気持にさせてくれました。

そして、最後の「小梅が通る」(この作品もいいです♪)を除いて、
いずれの作品も、最後にちょっとした謎が明かされるのですが、
これがビターテイストとなっていて、物語の味を引き立ててくれて
います。
ホント、2010年の最後に素敵な作品と出逢えて嬉しいです!
о(ж>▽<)y ウレシー☆

【 +plus 】

例えば、私の特に好きな作品のタイトルを「波打ち際」とせずに
「なみうちぎわ」としているように、この物語に限らず意識的に
“ひらがな”を使っているようです。
登場人物たちの会話も、「素の気持」が伝わってくるような感じが
して、そんなところも良かったです。
“ひらがな”って、やわらかい“ことば”ですネ!


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