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凍りのくじら 【辻村深月】 [静かな物語の棚]

『名前探しの放課後』を読んで、むしょ~に辻村深月さんの
作品が読みたくなった私。
この作品の評判もすごくいいのを知って読んでみました。
「冷たい校舎」や「名前探し」と一味違った素敵な作品♪
もしかしたら好みは分かれるかもしれませんが、私はこういう
作品がだ~い好きです ('-^*)b

凍りのくじら.jpg
凍りのくじら (講談社文庫) (←amazonへはタイトルをクリックね!)
作者: 辻村 深月
出版社/メーカー: 講談社
発売日: 2008/11/14
メディア: 文庫

【 story 】

高校2年生、芦沢理帆子。

『ぼくにとっての「SF」は、サイエンス・フィクションではなくて、
「少し不思議な物語」のSF(すこし・ふしぎ)なのです』

尊敬する藤子・F・不二雄先生のこの言葉から始まった彼女の
密かな遊び「スコシ・ナントカ」
本当の意味でのSFに全く関係ない場所で、人や物事の性質
にこの言葉を当てはめる。
ちなみに、現実感が妙に薄く、他人への感情移入がうまく
できない自分は「少し・不在」
場の当事者になることは絶対になく、どこにいてもそこを自分
の場所だと思えない・・・。

そんな理帆子は、7月のある日の放課後、学校の図書室で
3年生の青年から、写真のモデルを頼まれる。
戸惑いつつも、次第に他とは違う内面を見せていく理帆子。
そして同じ頃から理帆子の周りで不思議ことが始まる。
それは理帆子への警告だった・・・。

【 心の深い内面を描かれた素敵な作品! 】

人から一歩引いて、冷めた目で物事を見つめる理帆子。
まるで、心の痛みを感じないように、傷つくのを恐れるように
心に薄いバリアーを張っているかのよう。
そして、世の中を見下し、一方的に他者を見下げている
そんな自分に冷めたものを感じ、嫌悪感を持っている。

人は大概にして、人と触れ合い、傷つくのを恐れ、人より優位
に立っていると思い込むなどして、心を守ろうとしているところ
があるのだと思います。
そして、そういう思いを持ち、そんな思いを持っていることに
嫌悪感を抱えている理帆子の気持がヒリヒリと伝わってきて、
少し胸がチクチクとしました。
何だか自分と重なって共感させられました。

物語の雰囲気は、タイトルのとおり、死に際して、凍りの海で、
深い海の底に沈んでいく “くじら” のよう。
決して、明るく楽しい物語ではなく、沈殿しているような雰囲気が
漂う物語です。
でも、このように心の深い内面を描いた作品は心に染みいって
きてきます。こういう感じはすごく好きです。

【 SF(少し・不思議)を描いた作品 】

藤子・F・不二雄氏は、肩肘の張ったSFを描くのではなくて、
日常のなかに「少し・不思議」の世界を描いたそうですが、
この作品も同じ。
この作品でも「少し・不思議」なことが描かれていますが、その
少し不思議が妙に違和感がなく、すっと受け入れられる不思議。
そして、心が温かくなりました。

最初に書いたとおり、もしかしたら好みは分かれるかも。
でも、心がちょっと元気な時に、じっくりと味わいながら読むのを
お薦めしたい作品です。
ホント素敵な作品ですヨ!

 


タグ:辻村深月
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