瑠璃の雫 【伊岡 瞬】 [静かな物語の棚]
心にずっしりと感動が染み込んでくる素敵な作品で、心が洗われ
たかのように、読後、清らかな気持となりました。
「瑠璃の雫」というタイトルからかもしれませんが、透明でやさしい
輝きを放つ印象の美しい物語でした。
瑠璃の雫 (角川文庫) (←amazonへはタイトルをクリックしてネ!)
作者: 伊岡 瞬
出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
発売日: 2011/07/23
メディア: 文庫
【 story 】
アルコール中毒で入退院を繰り返す母親、幼い下の弟の命を
奪ったかもしれない弟と3人で暮らす小学6年生の杉原美緒。
そんな家庭環境に周囲へ心を閉ざした美緒は、母親のいとこ・
薫の知り合いである初老の元検事・永瀬丈太郎と知り合う。
寡黙であるが心の温かな丈太郎との交流を通して美緒は少し
ずつ心を交わしていく。
しかし丈太郎には娘を誘拐されているという、心に大きな傷を
抱えていたのだった・・・。
※ これより先は物語の核心に触れているので、未読の方は
ご注意ください。
【 “心”が描かれた作品 】
瑠璃を誘拐した犯人は誰なのか?
なぜ誘拐されたのか?
美緒が真実に迫っていくところはミステリーとして惹き込まれまし
たが、その中で、丈太郎の心の奥底に秘めていた“想い”をたど
っていくところには、特に物語にぐっと惹き込まれました。
そして、丈太郎の心の奥底にだけ押し込まれていた事実が明らか
になったとき、涙があふれてしまいました。
娘を誘拐した犯人を目の前にして、人はここまで感情を抑える
ことができるのでしょうか。ましてや、愛娘が殺されている事実を
確信してまで・・・。黙して語らないからこそ、丈太郎の悲しみが
ズシリと伝わってきてきました。心に響く作品です。
そしてもう一つ、描かれているのが美緒の心。
固く閉ざす原因となった事実に隠された秘密が・・・。
視点は美緒だけですが、丈太郎と美緒の二人につい描かれ、
飽きさせることなく物語に惹き込まれます。
どちからというと重々しく、決して明るい物語ではないけど、しっとり
静かなとても素敵な作品でした。
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