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光 【三浦しをん】 [静かな物語の棚]

きっと、人によって好き嫌いがある作品ではないかと思います。
心に何か響いているんだけど、その正体は何か、自分のどの部分
に響いているのかが分からない(整理できない)という深い作品に
久しぶりに出会いました。

    光.jpg
    ▲ 光 (集英社文庫)
         ( ↑ amazonへはタイトルをクリックしてネ!)
     作者: 三浦 しをん
     出版社/メーカー: 集英社
     発売日: 2013/10/18
     メディア: 文庫

【 story 】

美しい島・美浜島。そんな島を、地震による黒い津波が突然覆い、
家族、知人そして街の何もかもを奪い尽くす。
偶然、難を逃れた中学生の信之、美花、そして輔(たすく)。
そして、その混乱の中、信之は美花のためにある罪を犯す。

20年後、信之は、妻と娘との家庭を築いていた。そこに、信之の
秘密を知る輔が現れるが・・・。

【深い闇の底に溜まった澱】

これから読まれる方は、上に書いた「あらすじ」から想像する物語
とは、きっと全く違う物語に出逢うでしょう。
いつもは、内容に踏み込みすぎず、でも、少しでも作品の雰囲気
などが伝わるように意識しながら「あらすじ」を書くようにしていま
すが、この作品は、内容に踏み込まずに物語の雰囲気などを
書き表すのは本当に難しくて、結局、諦めました。
ですので補足的に付け加えると、感覚的ですが、深い闇の底に
溜まった澱(おり)のような読後感の物語です。重いです。

  [ご注意] この先は、物語の内容に少し踏み込みます。
       まだ読んでいない方はご注意ください

この物語は、信之を中心に、輔や信之の妻・南海子の視点から
交互に描かれています。
信之の心はまるで空虚。表面的にはおだやかで真面目ですが、
自分のことをでさえ他人事のようであり、輔や妻子の痛みを痛み
とも感じない、仕事や家庭に喜びや希望を見いだす訳ではなく、
まるで無感覚、無痛覚です。しかし、心の奥底には、暗い津波と
ともに深い海の底に沈んでしまったかのように深い闇を抱えて
います。まるで、生きることに“光”を見いだすことを否定している
かのようです。

そういった信之の心理や心情に共感している訳ではないのですが、
上手く言葉にできないのですが、私の中に何か彼の心理や心情を
理解しているところがありました。もしかしたら、私の心のどこかに
も信之のような闇があって、それが心を揺さぶっているのかもしれ
ません。

そして、信之だけでなく輔もまた同様であり、そして、どこにでも
いる普通の人として描かれる南海子の心についても、また簡単
には理解できない複雑さ、あるいは怖さが描かれています(美花
については心理がほとんど描かれていないため、意図的な行動
なのかそうでないのか、考えが見えない違う怖さがあります)。
このように、登場人物たちの人の心の闇というか、理解できない
複雑さ、怖さといったものが、この作品に惹きつけられる理由な
のかもしれません。

最初に、深い闇の底に溜まった澱のような読後感で「重い」と書き
ましたが、この重さが私の嗜好を刺激する作品です。
私は好きです (*^-')bコノミ♪


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