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銀河英雄伝説【田中芳樹】 [SF・伝奇小説の棚]

「もっと読みたい!」

ラスト近くになって、読み終わるのが「おしい!」と思う作品(シリーズ)がときどきあります。
そんな作品に出逢えると、ホントうれしいです。
最近では、森博嗣さんの「S&Mシリーズ」(そうはいっても5年以上前ですが・・・)。
そして、この作品もそう。
最初に読んだのは、10年以上前。
時間を惜しんで読んだ覚えがあります。
先を読みたいんだけど、終わるのが寂しい・・・。
7巻くらいまで読み進めたとき、そんな感覚を味わった思い出があります。

そんな作品、『銀河英雄伝説』。
あまりにも有名で、漫画、アニメといろいろなメディア化された作品。
今更かもしれませんが、語らせてくださいネ

【 ストーリーは・・・? 】

銀河系をあまねく支配する一大王朝を築きあげた『銀河帝国』。
銀河帝国に反旗を翻し、民主主義を掲げて成立・発展を遂げてきた『自由惑星同盟』。
両者が繰り広げるあくなき闘争のなか、
それぞれの陣営に不世出の天才が出現したことで歴史が動き始める。
銀河帝国の若き天才軍略家、「ラインハルト・フォン・ローエングラム」。
そして、同盟において“不敗の魔術師”と異名をとる知将、「ヤン・ウェンリー」。
一方は自己の大望を成就するがため、一方は意図せずながら、
国家組織と歴史の渦に巻き込まれていく。
この二人の英雄の邂逅(※)が、銀河系の命運を大きく揺るがし、歴史は大きく動き始める。
    ※邂逅(かいこう・「めぐりあい」の意味)

銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)

銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)

  • 作者: 田中 芳樹
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2007/02/21
  • メディア: 文庫

 【第1巻・黎明編】  (※黎明・れいめい:「夜明け」「新しい事柄が始まろうとすること」の意味)

宇宙暦796年、帝国暦487年。
アスターテ星域において、銀河帝国軍と自由惑星同盟軍は対峙していた。
戦力比は帝国軍20,000隻に対し、同盟軍40,000隻。
圧倒的物量をもって同盟軍は三方から帝国軍に迫りつつあった。
誰もが同盟軍の勝利を疑わない中、
弱冠20歳にして帝国軍司令官のラインハルト・フォン・ローエングラムは、
戦闘の常識を打ち破った戦術に出る。
劣勢を好機に変え、二つの同盟軍艦隊を瞬く間に葬り去った帝国軍は、
残る同盟軍第二艦隊に矛先を向ける。
しかし、その第二艦隊の幕僚に、ラインハルトの戦略を見抜く、
弱冠29歳の若き天才「ヤン・ウェンリー」がいた。
― ここに新たな歴史が始まる ―


【 魅力1・登場人物! 】

作品の魅力を語る上で、登場人物の魅力というものは最大の要素の一つ。
一方の主人公、ラインハルトは、誰もが想像だにしない大望に、
強い意志を持って突き進みます。
普通、自分の限界を自分で決めてしまい、最初から諦めてしまうことはありがちですが、
ラインハルトの「自分を信じること」、そして、目的のためにはすべてを破壊してしまう
ような「強さ」が魅力なのかもしれません。
もう一方の主人公、ヤンは、ラインハルトとは異なり、時代がヤンの才能を必要とし、
自己の意思とは無関係におのずと表舞台に引き出されることになります。
溢れる才能への「憧れ」と、表舞台や栄進を本意としない「生きる姿勢」に魅力を感じます。
そんな対極で、しかも甲乙つけがたい両者の魅力が、
相乗的に物語の魅力を高めているのではないでしょうか。


【 魅力2・説得力! 】

物語には必ず背景があります。
登場人物のとった行動をひとつとっても、登場人物がどうしてそのような判断をしたのかを
読者が理解できないと、その人物に共感できず、同化して読むこともできません。
実際の人間関係もそうですが、その人の生い立ち、影響を与えた周りの社会環境・文化、
といった諸々の「背景」を理解して始めて、その人物に同化でき、
一緒に喜び、悲しみ、恋し、苦しみを共にすることができるのだと思います。
つまり、小説では、読者がその人物を理解できるように
「背景」を描かれることが必要で、
それがなければ、共感を得ることのない、深みのない物語に終わってしまいます。

しかし、「背景」を描くといっても、SFやファンタジーは、誰もが経験したことのない
世界・歴史を創造することになります。
現代小説や時代小説は、「現実」が舞台なので、自然と現実感がありますが、
SFやファンタジーは、それらと異なり、「現実感に乏しい行為」は
そのまま「現実性がない」と吐き捨てられてしまうので、物語の構成(世界観)をしっかりと
組み立てて説得力を与えなければなりません。

その点、本作品は、登場人物の人生を始め、銀河帝国の歴史・自由惑星同盟の歴史、
それぞれの国家の現状、思想といった「背景」が非常に緻密に描いていることから、
歴史の流れ、登場人物の行動の意味に有無を言わせない「説得力」があります。
これだけの「背景」を描くためには、作者の筆力と構成力も必要ですが、
その裏側に、深い知識と歴史認識・見識が必要なのだと思います。
田中芳樹さんすごいです。感嘆です!

このようにしっかりとした世界観が構成された中、魅力あるキャラクター、
そして多彩なストーリー展開の作品がおもしろくないわけありません!!

 【 雑感 】

田中芳樹さんの作品には、アジアを舞台にした作品も多いですが、
この作品は中世
ヨーロッパ、特にドイツをイメージさせる世界(特に名前)で、
どこか貴族・騎士道をイメージさせてくれて好きです。
「高貴」っていうイメージ!

【 どうでもいいけど・・・ 】

今回、東京創元社から刊行が始まったため、久しぶりに買いました。
10年以上前に買った新書版も持っているけど、気軽に読めるように文庫本にしました。
表紙は星野之宣さん。いいですネ!
本作品は、「叙事詩」といわれるように非常に大河小説のような作品で、
自分の抱いたイメージを大切にしたいと思った作品なので、
アニメっぽい表紙や挿絵は避けて欲しかったです
(表紙や挿絵は、その絵が作品のイメージを固定してしまうことがあるので・・・)。
なので、東京創元社さんの選択はGOODかな!!


 ※平成20年1月18日現在、5巻まで刊行されています。
   ちなみに、全10巻、外伝5巻だと思います。


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