SSブログ

ナラタージュ 【島本理生】 [ラブストーリーの棚]

窓の外は、瑞々しく、そして、やさしく輝く若草色の葉。
乱舞するようにあふれんばかりの光。
窓際には、女性がたたずむ。
その女性の顔は、陰になって表情をうかがい知ることはできない。
まるで彼女の心のうちのように・・・。

  ナラタージュs.jpg
  ▲ ナラタージュ (角川文庫)
   ( ↑ amazonへはタイトルをクリックしてネ!)
    作者: 島本 理生
    出版社/メーカー: 角川書店
    発売日: 2008/02
    メディア: 文庫

この小説の表装を担当した片岡忠彦さんという方に脱帽である。
そう思うほど、この表装は、この小説を物語っている。
若草色と黒を基調としたコントラストがすばらしい。

そして、帯

 壊れれるほどに、愛した。

この小説をまさにひとことで表している。
こちらも脱帽...。

私にとって、もしかしたら、最も大切にしたい作品かもしれない。

 

【言葉はいらない】

この作品は語る必要がない。
語ったら、その素晴らしさを壊してしまいそうだ。
文字にしてしまうと、その素晴らしさが半分も伝わらなくなりそう。

  とまどい
  迷い
  願い
  祈り
  あきらめ
  かっとう
  そして、想い

それらの心の叫びがググッと伝わってくる。
瑞々しいまでの感性。そして、痛々しさ。
  「祈りにも似た、絶唱の恋愛文学」
帯にはそう紹介されていたが、私には作者の「絶叫」にも感じられた。
この小説はすごすぎる...。
そして、こんな
全身全霊の恋をしてみたい

【感じて欲しい】

いつもとは逆に、最後にストーリーを紹介する。
ここも余計なことは語らないようにするので、雰囲気を味わっていた
だきたい。

大学2年の春、母校の演劇部顧問の葉山先生から携帯に電話が
かかってきた。

   「ひさしぶり。元気にしていましたか」
   電話ごしに彼の声が聞こえてきたとき、昨夜みた夢が現実に
   飛び込んできたような気がして、
私はすぐに返事ができなかった。
   「こちらこそおひさしぶりです、葉山先生」
   相手の名前を口にした瞬間、自分の心拍数が上がったような
   気がした。
   「良かった、返事がないから間違えてかけたのかと思ったよ」
   「あんまり突然だったので、びっくりしたんです。どうしたんですか
   急に」

泉が所属していた演劇部の公演の手助けして欲しいという依頼だった。

   「葉山先生」
   私は少し迷ってから、言った。
   「本当にそれだけの理由ですか」
   そう尋ねると、次の言葉まで間があった。電話の向こうで言葉を
   選んでいる気配が伝わってくる。
   いや、と彼は呟いた。
   「ひさしぶりに君とゆっくり話がしたいと思ったんだ」
   なぜか、こんなふうに電話がかかってくることが分かっていたよう
   な気持ちになった。
   「そうですね。私もひさしぶりに話したいです」
   一年前は四六時中ずっと胸の中を浸していた甘い気持ちがよみ
   がえりそうになったので、すぐに感傷だと思い直し、次の土曜日に
   行くという約束をして電話を切った。
   携帯電話から頬を離すと、右耳がぼんやりと熱くなっていた。

【ナラタージュとは】

【narratage】
 :映画などで、ある人物の語りや回想によって過去を再現する手法。


タグ:島本理生
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。