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狐罠【北森 鴻】 [推理小説の棚]

読み応えのある本が読みたくなって手に取った作品
 『狐罠(きつねわな)』
予想以上に読み応えがありました(^^) 

【 story 】

店舗を持たず、自分の鑑定眼だけを頼りに骨董を商う「旗師」。
「冬狐堂」を名乗る宇佐見陶子は、日は浅いものの、若さには似合
わない目利きと噂される旗師。
ある日、陶子は同業の橘薫堂(きくんどう)から唐様切子紺碧碗
(からようきりここんぺきわん)を仕入れる。
しかし、その古代のガラスの器は贋作だった。
プロを騙す巧妙な「目利き殺し」を仕掛けられた陶子。
贋作をうまく相手に売るつけたものが「やり手」と呼ばれ、売られた
ほうは「目がない」と蔑まれると言っていい骨董の世界。
陶子は、自分がその世界でプロを名乗る資格があるのか確かめ
るため、橘薫堂に意趣返しの罠を仕掛ける!

  狐罠s.jpg
  ▲ 「冬狐堂」の“狐”が仕掛ける“罠”という意味なのでしょうか。
    表装も妙に魅せられました!
     
狐罠 (講談社文庫)
     ( ↑ amazonへはタイトルをクリックしてネ!)
     作者: 北森 鴻
     出版社/メーカー: 講談社
     発売日: 2000/05
     メディア: 文庫

【 読み応えある物語 】 

魑魅魍魎(ちみもうりょう・老獪に人を出し抜く化け物のような人間の意)
が跋扈(ばっこ)し、百鬼夜行(ひゃっきやこう・得体の知れない者たち
が我が物顔に振る舞うことの意)の特異な世界。
僕の偏見も多分に含まれているのでしょうが、骨董の世界とはそんな
イメージです。

そんな荒海をひとり渡る主人公が「やり手」の橘薫堂に立ち向かい、
「はたして仕掛けは成功するのか!」と読者を魅了する展開だけでなく、
陶子の贋作に手を染めることへの緊張感や橘薫堂との駆け引き、
贋作師の迫力などが伝わってきて、非常に読み応えがありました。

さらに、陶子の「仕掛け」とは別の策謀がうごめき、複雑に絡み合って
いく様相に、物語にぐいぐいと惹き込まれて、次へ次へと待ちきれずに
読み進めました。

ただ、ラストの展開には、あまり細かく書けないけど(う~、書きたい!)、
ちょっと肩透かしを受けた感もあります。
しかし、私が期待していたラストの方向性とは違ってはいたものの、
決して内容の荒い力技ではなく、読者を驚かせるに十分な、練り込ま
れたラストだと思います。

陶子の仕掛けは成功するのか・・・。
まだ未読の方は楽しみにお読みください!


【 +plus 】

他の作品(シリーズ)の登場人物が登場することってたまにありますよね。
これが思いっきり出てきて物語に絡むと、その物語に他の作品の色が
混ざってしまい、物語の雰囲気を壊してしまうことがあります。
この「狐罠」にも「ビアバー香菜里屋」の主人が登場し、逆に、「蓮丈那智」
シリーズには宇佐見陶子が登場したりしています。
しかし、いずれもでしゃばり過ぎない控えめな登場なので、このくらいだと、
偶然、街で親しい友人に出会えたようなうれしさを感じます。
「ビアバー香菜里屋」で出される料理のように、
北森鴻さんの作品への絶妙な味付けに感動します。

  ※ レイアウトや誤字を修正しました。(2015年12月20日追記)

 


タグ:北森鴻
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