ネクロポリス【恩田 陸】 [最近読んでみた本の棚]
感性が自分と非常に近い作家。
もし、自分が小説家だったら、こんな物語が書きたいなと
思うような世界を舞台に、期待どおりのストーリー展開を
提供してくれる作家。
恩田陸さんという作家は、まさにそんな印象です。
いずれの作品も期待はずれはなし。
なので、意識して他の作家を読むようにしないと、
恩田陸さんの作品ばかり買ってしまいそうです。
【 story 】
英国と日本の文化が融合した世界「V.ファー」にある「アナザーヒル」。
そこでは、「ヒガン」と呼ばれる行事が毎年行われており、「ヒガン」には
故人が「お客さん」として現れ、再会することができる。
その「V.ファー」では、連続殺人事件の「血塗れジャック」が世間の注目
を集めていた。
そして、アナザーヒルに向かう多くの人々の興味は、その被害者たちから
犯人を聞きだすこと。
「お客さんは嘘をつかない」から。
そんな中、初めてアナザーヒルに向かった大学院生「ジュン」の目の前に、
鳥居に吊るされた死体が現れる。
犯人探しが進む中、聖地である「アナザーヒル」で新たな被害者が・・・。
不思議と「ジュン」の前に多く現れる「お客さん」たち。
「アナザーヒル」で何かが起こり始める―。
▲▼ 2冊を横に並べると「アナザーヒル」の全貌が望めます。
素敵なデザインですよネ。こういう雰囲気だ~い好きです ^^
【 魅力的な世界 】
この物語は、和と洋が混在するあいまいな世界。
恩田さんは、こういう無国籍風の不思議な雰囲気をかもし出す
ことが本当に上手だと思います。
決して、完全な虚構の世界ではなく、現実感を引きずりつつ、
不思議な世界を描き出します。
なんだかオブラートにつつまれたような感じ。
そんな感じなので、「ヒガン」での故人との再会という突拍子のない
物語の世界も、まるで現実的な話のように違和感がなく、
すっとその世界に入り込んでしまいました。
そんな不思議な世界で新たに起こる殺人事件。
「ジュン」の周りで起こる数々の不思議な出来事。
謎と不思議な世界にどんどん引き込まれて、先が気になって
読み始めたらやめられないくらいでした。
ラストの展開は、若干、意をそがれた感じですけど楽しめた作品です。
【 舞台のイメージ 】
物語を読んでいて、舞台である「アナザーヒル」をイメージしたのが、
フランスの「モン・サン・ミッシェル」。
恩田さんが「モン・サン・ミッシェル」をイメージして書かれていたのか、
装丁のイラストがそうイメージさせるのか、はたまた、単に僕が勝手に
イメージしたのかは分かりませんが、「アナザーヒル」はまさに、
教会が孤高にそびえ立つ「モン・サン・ミッシェル」のイメージに
ぴったりでした。
たしか、僕の大好きな作品「麦の海に沈む果実」の世界も、
日本でありながら異国(ヨーロッパ)の雰囲気が漂う、小高い丘に建つ
学校が舞台で、やはりモン・サン・ミッシェルをイメージした覚えがあります。
皆さんは、どんなイメージで読みましたか?
【 +plus 】
題名の「ネクロポリス」の意味って知っていました?
僕は恥ずかしながら知らなかったので調べてみると、
『巨大な墓地または埋葬場所のことで、語源は、
ギリシャ語のnekropolis(死者の都)。
大都市近郊の現代の共同墓地の他に、古代文明の中心地の
近くにあった墓所、しばしば人の住まなくなった都市や町を指す。』
のだそうです。
なるほど!物語のタイトルにぴったりですネ!
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