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となり町戦争 【三崎亜記】 [静かな物語の棚]

三崎亜紀さんの「失われた町」を読んだとき、温かさ、寂しさ、
もの悲しさといったものが少しずつ心に染み入ってきて、読後、
しばらく静かにその余韻に浸りました。
そんな三崎作品の余韻をまた味わいたい!と思って読んだ
作品です。
この作品も、じわじわと静かに心に染み入ってくるような素敵な
作品でした(*^-’)bウン!イイヨ~☆。

  となり町戦争.jpg
  となり町戦争 (集英社文庫)
       ( ↑ amazonへはタイトルをクリックしてネ!)
 
       作者: 三崎 亜記
        出版社/メーカー: 集英社
        発売日: 2006/12/15
        メディア: 文庫

【 story 】

ある日、町の広報紙でみつけた「となり町」との戦争の知らせ。

   【となり町との戦争のお知らせ】
     開戦日   9月1日
     終戦日   3月31日(予定)
     開催地   町内各所
     内 容   拠点防御 夜間攻撃
            敵地偵察 白兵戦
       お問合せ  総務課となり町戦争係

だが、その9月1日を迎えてもなんら変わらぬ日常と光景に、
“僕”は戦時下という実感が持てないままでいた。
そして戦争のことさえ忘れかけていたある日、役場から
戦時偵察員の委嘱の呼出状が届く・・・。
僕はその“見えない”戦争を知りたいという興味も手伝って
委嘱を受けることにする。
増える戦死者。でも、目の前に広がるのは平穏な町並み。
僕はとなり町との戦争を実感できないまま関わっていく・・・。

【 独特の余韻! 】

「失われた町」も、「となり町戦争」も、逃れようのない過酷な
“現実”があって、その“現実”に直面する登場人物の悲しみ
に共感し、その“現実”に前向きに向き合う姿に心があたたまり
ました。
そして、その“悲しみ”と“あたたかさ”が少しずつ染み入って
きて、読後に味わう独特の余韻。
「失われた町」とこの「となり町戦争」しか読んでいないので、
三崎作品がすべて“そう”だと言い切ることはできませんが、
心の奥に何か“ほわっ”としたものが残るこの余韻は、もう
“やみつき”になりそうです!
この独特の余韻を醸し出す三崎作品はお気に入りです

【 妙技 】

ところで「失われた町」も、「となり町戦争」も、一見、現実的な
社会を舞台にしていながら、少しだけ“非現実”を混入した
世界が舞台です。
「失われた町」では、何かの意志により、町が丸ごと消滅して
しまうことが人々に“当然”として受け入れられている世界で
したし、この「となり町戦争」では、町の活性化のため、事業と
して戦争をすることが“当然”に許容されている世界・・・。

私が三崎さんの妙技だなっと思うのは、登場人物たちが直面
する過酷な“現実”を、「町が消滅してしまう」とか、「となり町と
戦争する」といったように、読者には“非現実”的なものにして
いるところ。
それにより、過酷な現実がやわらかなオブラートに包まれた
かのようになり、悲しみに“痛さ”をあまり感じさせずに、読後に
“悲しみ”より“あたたかさ”の余韻の方を強く感じさせている
のだと思います。

“あたたかさ”と“悲しみ”がないまぜになて、じわじわ~と染み
入ってくる素敵な作品!
この独特の余韻を是非、味わってみていただけたらと思います。
(o^-')b 


タグ:三崎亜記
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