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アンチェルの蝶 【遠田潤子】 [静かな物語の棚]

読んだことのない作家さん。あらすじを読んでも重そうですし、私的
には、通常あまり飛びつく感じではないのですが、何だか妙に
気になって手に取った作品です。
実際、重い作品でしたが、こういう作品って実は好きで(過去に取り
上げた作品を見ていただくと分かるかもしれませんが)、惹き込ま
れました。

  ▼ 表紙の美しさに惹かれたのも、手に取った理由かもしれません。
    デザインがとても素敵(*^-')b

  アンチェルの蝶.jpg
  ▲ アンチェルの蝶 (光文社文庫)
    ( ↑amazonへは、タイトルをクリックしてネ! )
    作者: 遠田 潤子
    出版社/メーカー: 光文社
    発売日: 2014/01/09
    メディア: 文庫

【 story 】

大阪の港町で、細々と居酒屋を営む藤太。
そんな彼の元へ、ある日突然、中学を卒業以来、会うことのなかっ
た同級生・秋雄が少女を連れてくる。
その少女・ほづみの母親・いづみと、秋雄、藤太の間には、忘れ
ようとしても忘れることのできない記憶があった・・・。
ほづみと奇妙な共同生活を始める藤太。
しかし、秋雄が行方不明になり、そして、いづみも行方が分からなく
なっていることを知る。
秋雄に何があったのか、そして、いづみはどうしているのか。
沈滞していた藤太の時間が、否応なしに動き始める・・・。

【 再生とミステリ 】

過去のある出来事を境に、人生の全てを捨て去り、死人のように
どん底で生きてきた主人公。そんな彼の元に、飛び込んできた
ある人の娘。それは、色のない世界にひらりと舞い降りた美しい
蝶のように、主人公の沈む心の中に光を与えてくれます。
その娘との関わりを通じて、どん底から立ち直ろうと努力を始める
再生の物語。

同時に、
 藤太を束縛し続ける「過去の記憶」とは何なのか?
 秋雄はなぜ、ほづみを預けて失踪したのか?
 いづみに何があったのか?生きているのか?
少しずつ謎が明らかにされていくといったミステリ要素。

それらが混ざり合った物語に惹き込まれ、あっと言う間に読んでし
まいました。
ラスト!全ての謎が明らかにされ、哀しい現実を知った主人公は・・・
絶望と希望が描かれ重い作品ではありますが、懸命に生きる人が
描がかれた、このような作品は大好きです。

【 +plus 】

タイトルのアンチェルとは、有名な指揮者「カレル・アンチェル」のこと
だそう。波乱の人生を送った方のようです。
主人公の藤太が心の支えにし、そして、記憶とともに封印したのが、
アンチェル指揮の、ドヴォルザーク・交響曲第9番「新世界より」。
アンチェルの代表的な録音だそうです。
アンチェルについては、日本コロムビアに解説HPがありますし、
KING RECORDSでは、2013.11.27にNEWアルバムが発売され
ているほど。相当に素晴らしい演奏なのでしょうね。機会があったら、
是非、一度聴いてみたいです。


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