刻まれない明日 【三崎亜記】 [静かな物語の棚]
大好きな三崎亜記さんの作品。
三崎さんの作品の余韻を味わうには、時間があってゆっくり読め
るときがいいと思い、購入してからちょっと我慢して大切に読み
ました。
▲ 刻まれない明日 (祥伝社文庫)
( ↑ amazonへはタイトルをクリックしてネ!)
作者: 三崎 亜記
出版社/メーカー: 祥伝社
発売日: 2013/03/13
メディア: 文庫
【 story 】
10年前、ある地方都市の一部が消滅。3095人の人々も一緒
に消え去った。原因は分からず、ただ、開発保留地区という呼ば
れる誰も住まない新しい地区だけが存在する。しかし、あたかも
消え去った彼らがそこに存在するかのように、消滅地区にあった
図書館の第5分館では本の貸出しが続き、消え去った住民の
ためのラジオ局“ひかりラジオ”にはリクエスト葉書が届く。
残された人々は、それらに消えた人々の息吹を感じていたが、
少しずつある変化が起こり始めていた・・・。
【「失われた町」のアナザーワールドのような作品】
町とともに大切な人々を失い、残されてされてしまった人々を
描いた連作短編。私が大好きな作品「失われた町」とこの作品
の世界は異なる世界のようですが、大切な人を失い、深い哀し
みの想い出を抱えた人々が、静かに現実を受け入れて、一歩
踏み出していこうとするところは同じ。この作品でも、残された
人々が、人との出逢いをきっかけに、止まっていた時間が動き
だし、そして新たに歩み出していきます。
「失われた町」と違うのは、残された人々が歩み出した先(未来)
をより強く感じさせるところでしょうか。「失われた町」と同じよう
な世界のため、当然、読後のインパクトは低くなってしまうかも
しれませんが、心地よい余韻が素敵な、心を温めてくれる素敵
な作品です。
序章から始まって各章のどれもが素敵な作品(あえて言うと、
私は第1章の“第五分室だより”と第3章の“紙ひこうき”が好き
かな)なのですが、やはり、新たな序章(最終章)の“つながる道”
の余韻が一番良かったですね (o^-')b
是非、穏やかな余韻に浸ってください。
【 plus+ 】
図書館で「海に沈んだ町」(2011.1)という作品をみかけました。
調べてみたら、「失われた町」や「刻まれない町」に連なる作品
だそうです。今年(2014)2月には、文庫(朝日文庫)も出版され
ているようなので、入手しよっ!
でも、“町”の物語をいっきに読んでしまうともったいないので、
しばらく時間を空けてから読もっかな♪
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