神様のカルテ 【夏川草介】 [最近の素敵な本の棚]
2010年本屋大賞の第2位にして、櫻井翔さんと宮崎あおいさんで
映画化(2011年公開)されることも決まった 『神様のカルテ』。
読み終えたとき、心地よい余韻に浸りました。
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作者: 夏川 草介
出版社/メーカー: 小学館
発売日: 2009/08/27
メディア: 単行本
▲ くしくも、植物図鑑に続いてカスヤナガトさんのイラスト作品が
続きました。
このやさしい雰囲気は物語にすごく合ってます!
【 story 】
夏目漱石の「草枕」を全文ことごとく暗誦するほど愛読し、その影響で
古風な話しぶりになってしまったという、ちょっと変わった5年目の
内科医・栗原一止(くりはらいちと)。
地域医療は常に医師が不足し、一止も3日間の徹夜など日常茶飯事。
忙しさに、ついには愛妻との記念すべき結婚記念日(しかも初めての!)
を忘れてしまう始末。
そんな一止に、母校の大学病院の医局から誘いの声がかかる。
「大学でしか学べない高度医療ってのがある」
大学時代からの同僚医師にも薦められ、一止は迷っていた。
高度医療を学ぶことが患者たちを救うことになるのかと・・・。
そして、それが自分の進むべき道なのかと・・・。
【 さわやかな物語 】
こうやって「あらすじ」にすると、「地域医療」の問題を背景に、
主人公の一止(いちと)が、医師としての自分が進むべき道を
思い悩む姿が描かれた、ちょっと重そうな作品に見えるかも
しれませんが、一止のちょっと変わったキャラクターや、
愛妻ハルのホンワカとしたやさしさ、同僚医師や看護師、患者、
そして、一止の住む「御嶽荘」の住民たちとやり取りは温かく、
むしろ、とてもさわやかな物語です。
そして、何より一止が魅力的!
自分がいくら辛くても、何ていうこともない当たり前のこととして
患者のことを最優先にするところなど、読んでいて気持ちが
いい (o^-')b!!
また、私的には、一止の悩む姿も魅力の一つかな。
こういう悩みって、きっと誰もが悩んだ経験のあると思いますし、
しかも正解がないもの。
悩む一止に共感し、そして、出した結論には応援したくなり
ました☆
読後、一つの結論を出した一止のすっきり感が伝わってきて、
私もすっきりした気持ちに!
この作品が支持されているのも納得。お薦めでーす♪
【 +plus 】
冒頭にも書いたとおり、櫻井翔さんと宮崎あおいさんで映画化
されるとのこと。
私的には、一止の疲れた心を癒し、支える存在・榛名(ハル)役の
宮崎あおいさんの癒しに期待です。
あと、東西さん(看護師さん)も存在感が難しい役どころ。
でしゃばりすぎず、控え目すぎず。もしかしたら、映画の成否は
東西さん役の演技次第かも。
どんな女優さんが東西さん役をやるのか、不安と期待です☆
あとあと、『神様のカルテ』続編(PART2)が2010年夏発売!
だそうですネ。
って、そろそろ??
神去なあなあ日常 【三浦しをん】 [最近の素敵な本の棚]
2010年本屋大賞にノミネートされたり、本好きの人のブログを
読んでいても、非常に評判のいい 『 神去なあなあ日常 』
評判にたがわず、とても素敵な作品でした。
神去なあなあ日常 (← amazonへはタイトルをクリックしてネ)
- 作者: 三浦 しをん
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2009/05
- メディア: 単行本
【 story 】
高校を卒業したら、適当にフリーターで食っていこうと思っていた
平野勇気。
ところが、卒業式を終えて教室に戻ったとたん、担任が言った。
「おう、平野。先生が就職先を決めてきてやったぞ」
家に帰ると母親から「みなさんの言うことをよく聞いて、頑張るのよ」っと
わけも分からず叩き出され、たどりついたのは携帯も圏外となる奥深い
山奥の神去(かむさり)村だった。
神去村で林業の研修生として働くことになった勇気。
都会とちがった時の流れの中で、勇気は次第に村の魅力に惹き込まれ
ていく・・・。
【 ほっとする理想郷!? 】
タイトルの「なあなあ」とは、神去村の人たちの口癖で、「ゆっくり行こう」
「まあ落ち着け」などのニュアンスだそう。
語尾にも「な」がつくので、のんびりした感じになる神去弁で、その
言葉の感じのとおり、のんびりした村です。
私は現在、都会と言われる街に住んでいて、何かに追われるように
あわただしく、まさに息つく暇のない毎日。
都会の生活は刺激があって楽しい反面、ギスギスしていて辛いなぁと
感じるときもあります。
なので、自然に囲まれ、のんびりした雰囲気の神去村は、まさに
理想郷ですネ ♪
そう思うのは、私が神去村まではいかなくとも、少しは近所付き合いが
残り、田舎のやわらかな雰囲気の中で生まれ育ったからかもしれませ
んが・・・。
この作品を読んでいて、ほっと緊張感が和らいだような、そんな感覚を
受けました。
しかし、この物語の素敵な雰囲気を醸し出しているのは、神去村の
存在だけではありません。
主人公の勇気、そして、村人たちの“ やさしさ ”があるでしょう。
勇気は「よそ者」とカヤの外にされますが、勇気には相手の立場を
理解しようとする度量の大きさがあり、また、村人たちもそんな勇気を
温かく見守っています。
そういう温かな目線が、より心地いい物語の雰囲気にしているのかな
と思います。
読んでいて、とても心地いい作品。お薦めです (o^-')b
【 +plus 】
もちろん、林業、それ以上に神去村の生活は生優しいものではないんで
しょうネ。ヒルがいたり、花粉症に悩まされたり・・・。
そして、神様を、山々を信仰する神去村の人々を冷ややかに見たら
滑稽なのかも。
しかし、それが自然と共に生きていることなのかもしれませんネ。
私は北アルプス登山などをしますが、山々など自然の雄大さというか
迫力に圧倒されます。
なので、山々をあがめる気持ちって、なんとなく理解できます。
武士道シックスティーン 【誉田哲也】 [最近の素敵な本の棚]
誉田(ほんだ)哲也さんは初めて。
この作品を読んだのは、
すがすがしい物語が読みたかったこと
私の好きな北乃きいさんと成海璃子さんの主演で映画化されること
ず~と、なんとなく気になっていた誉田さんの青春小説だったこと
(警察小説ってジャンルに少し抵抗感があって・・・)
からでした。
当然、映画を見る気が満々だったので、映画を観てから読もうと思っていた
のですが、我慢できずに先に読んでしまいました ^^;
武士道シックスティーン (文春文庫)
作者: 誉田 哲也
出版社/メーカー: 文藝春秋
発売日: 2010/02/10
メディア: 文庫
【 story 】
切るか切られるか、そこに甘えは許されない。
勝負にこだわり、剣道にすべてを捧げる少女・磯山香織。
そんな磯山は、全中準優勝に満足できず、地元の小さな大会に出場する。
難なく優勝すると信じて疑わなかった磯山の前に現れたのが無名の甲本。
追えば逃げる、逃げれば寄ってくる。でも、自分からは何もしない。
次第にペースを乱され、磯山は決して油断したわけでもないのに、
真正面からど真ん中にメンを決められてしまう。
それは、相手の姿が急に膨らみ、検先があり得ない大きさに膨張したように
迫ってきたメンだった。
なぜ負けたのか、あのメンはなんだったのか?
磯山はもう一度、甲本と対戦したいと、多くの推薦を蹴って、甲本のいる
東松女子高校を選ぶ。
そんな磯山の前に現れたのが、勝負に固執しない西荻早苗。
しかし、西荻の構えは甲本のものに他ならなかった・・・。
【 正反対のようで共通する二人! 】
ときどき突っ走ってしまうけど、ゴチゴチのガチガチに剣道一直線に生きる
磯山香織。
だって、 愛読書は宮本武蔵の「五輪書」ですよ!
昼休みは五輪書を読みながら握り飯で、握り飯が終わると鉄アレイに代えて、
常に心と身体の鍛錬を欠かないという半端でない剣道「命」娘。
そんなことを平気でしてしまうところは、真っすぐで、ほほえましくて。
そして、自分の気持ちを表現するのが苦手で、素直な気持ちを伝えられずに
とまどう不器用なところは愛らしくもある少女。
一方、そんな磯山から不条理に痛めつけられても、磯山の良さを見ようとし、
悩む磯山の力になりたいと願う西荻早苗。
勝負にこだわらず、少しでも自分の理想形に近づければ満足というのは、
ある意味、達観の域。
そんな彼女の、肩の力の抜けた、前向きな考え方もとても素敵な少女。
そんなそんな、正反対の魅力の二人の共通点は剣道に魅了されていること。
この物語の最大の魅力は、定番かもしれませんが、違う性格の二人が剣道を
通してお互いに理解し合い、絆を深めていくところ。
特に、磯山が西荻との出会いによって悩みもがき、乗り越えていく姿や、
西荻が磯山を通して自分に必要なことを見つけていく姿がとてもよかったです。
そして、正反対のような二人がそしてたどり着いた結論は・・・。
とてもさわやかで、冒頭から魅了された作品でした (o^-')bステキ!
何を思い描いて戦っていたか、というところも楽しかったです。
続編の「武士道セブンティーン」と「武士道エイティーン」が楽しみ☆
図書館戦争 【有川 浩】 [最近の素敵な本の棚]
「塩の街」ですっかり有川浩さんのファンになった私。
やはり、有川浩さんといったら「図書館戦争」でしょ!っと手に取りました。
ちょうど、このblog開始3周年でもあるし、“有川浩さんづくし”したいな ♪
(ちなみに、1周年、2周年には、村山由香さんを取り上げてたんですよ。)
図書館戦争
作者: 有川 浩
出版社/メーカー: メディアワークス
発売日: 2006/02
メディア: 単行本
【 story 】
公序良俗を乱し、人権を侵害する「表現」を取り締まる法律として
『メディア良化法』が成立・施行された現代。
そんな超法規的検閲に対抗するため、狩られる本を、そして、
明日を守るため図書館が立ち上がった!
行き過ぎた検閲から本を守るため、図書館員たちは銃を手に取る!
そして、昔、図書隊員に助けられた笠原郁は、図書隊員になるため
教官・堂上篤の厳しい指導を受けるが・・・
【 熱血!図書館員物語?? 】
昔、図書隊員に助けられたことから隊員を目指す笠原郁。
そんな彼女を厳しく、でも、そっと優しく見守る教官・堂上篤。
郁の直球のようなまっすぐな性格が清々しく、でも、純粋過ぎて
危なっかしいところにハラハラして、まるで教官の堂上になった
気持ちで読んでいました ^_^;
武器の携帯を許され命の危険もある、まさに「戦争」状態の
物語なのに、重くなりすぎず妙に楽しいのは、熱血新任隊員の
郁の性格と、厳しい鬼教官の堂上の(ほほえましい?)関係だけでなく、
笑いながら厳しい正論をグサっと叩きつける小牧教官、
恋愛から始まって図書館内のあらゆる情報に通ずる郁の友人・柴崎、
適当のように見えながら実は戦略家である玄田隊長
などなど、ちょっとトボケた個性豊かなキャラクターが周りを固めて
いるからかな ♪
ところで、この物語、やっぱラブストーリー??
郁と堂上の微妙な関係がどうなるか!
続編が楽しみです ☆
船に乗れ!Ⅰ 合奏と協奏 【藤谷 治】 [最近の素敵な本の棚]
作者の名前も知らず、実はそれほどの興味もなくて、そんなに
いい作品なら読んでみようか!くらいの感覚でした。
しかし、さすが本屋大賞にノミネートされている作品。
物語に惹き込まれて、主人公の津島サトルと一緒に恋して、
緊張して、ドキドキして、音楽を楽しんだという印象です。
【 story 】
音楽家の家系に生まれた僕・津島サトル。
その影響でチェロを学び、芸高を目指すが失敗。
不本意ながらも祖父が学長をする新生学園大学附属高校音楽科に進む。
そこで、サトルはフルート専攻の伊藤慧や澄みきった目をした
女の子・南枝里子に出遭う。
夏休みのオーケストラ合宿、市民オケのエキストラとしての初舞台、
南とピアノの北島先生と組んだ最高の演奏会。
サトルは、南に恋し、伊藤との友情を深め、友人たちと音楽を語らい、
貴重でかけがえのない時間を過ごして行く・・・。
【 スゴイ! 】
スゴイ! O(≧∇≦)O !!
「素敵」というより「スゴイ」の方が適切な表現だと感じた作品。
演奏シーンでは、まるで小説の中でクラシックのメロディが流れてくるよう。
音楽に打ち込む主人公たちが生き生きとしていて、作中に出てくる曲名の
メロディは知らないのに、奏でる迫力ある曲が聴こえてきそうでした。
ラスト近くのオーケストラ演奏や学長宅での演奏会など、サトルや南と一緒に
緊張したり興奮していたほど。
昔、少しだけ携わったことがあった演奏会での緊張や興奮を思い出しました。
サトルの、その年代特有ともいえる根拠のない自信とか、高慢なところとか、
憧れの女の子が気になるけど声をかけられない自信のないところなんて、
学生時代の自分と等身大。
なので、尚更、サトルと一緒にドキドキして、ワクワクして、ホッとしていた
のだと思います。
ホント、最高にスゴイと感じた作品でした。
【 +plus 】
昨年は、私が満足した作品になかなか出会えなかったのですが、今年は
年明け早々からベスト1候補といっていい作品に次々と出会えて幸せ!
もちろん、この作品もベスト1候補。
もう、ベスト3以内と決めちゃってもいいくらい!それくらい気に入りました。
すごーく、お薦めです (*^-')b
第2作、第3作がどうなっていくのか!
とても、楽しみです ♪
八日目の蟬 【角田光代】 [最近の素敵な本の棚]
“ 心揺さぶる ” とはこういうことでしょうか。
- 悲しくて、切なくて、そして、やるせない ―
その言葉がこの小説を表わす言葉として適当か分かりませんが、
胸にぐっ!と来て、ラストは涙が出ました。
心に響いてくるその余韻を感じたくて、読後、しばらく浸っていたほど。
「読んでよかった」と実感した作品です。
【 story 】
「ただ、見るだけだ。あの人の赤ん坊を見るだけ。これで終わり。」
そう自分に言い聞かせて、忍び込んだ不倫相手の家。
その子を抱いたとき、赤ん坊は野々宮希和子に笑いかけてきた。
その赤ん坊のやわらかさ、あたたかさ、強さ、すべてを感じたとき、
希和子は赤ん坊を抱いて、がむしゃらに走っていた・・・。
自分の娘として育てながら逃亡を続ける希和子と薫と名付けた娘。
安住のない逃亡の行きつく先は・・・。
そして、犯罪者に育てられた娘として大人になった赤ん坊は・・・。
【 心に響きます 】
薫と名付けた娘(赤ん坊)を愛おしむ希和子の想い、そして、母親への
純粋な愛を示す薫の姿。
裏には悲しんでいる薫の本当の家族があって、そして、希和子の行為は
他人から見れば身勝手なものであることは分かるのですが、読んでいて
その幸せそうな希和子と薫の生活がいつまでも続けばいいなと思って
しまいました。
破滅の未来しかない希和子と薫の生活。
一瞬一瞬、一日一日、希和子が感じる小さな幸せが心に響いてきます。
この作品は二章構成。
一章は希和子からの視点でしたが、二章では、一転して、成長して大人
となった娘からの視点で描かれています。
大人となった娘から見た「あの人」、家族、そして・・・。
希和子も、成長した娘も、自分のことを他人のことのように、ちょっと
離れたところから冷めた目で淡々と見ているところが、感覚がマヒして
しまっているようで、はかない幸せが、さらに物悲しく感じられます。
蝉は7年土のなかにいて、外に出て7日目に死んでしまう。
生きながらえた「八日目の蟬」が目にするものは、何なのでしょうか・・・。
エンド・ゲーム 【恩田 陸】 [最近の素敵な本の棚]
この作品は、「光の帝国―常野物語(とこのものがたり)」に
収められている『オセロ・ゲーム』という短編の続編。
『オセロ・ゲーム』は、異様なほどの緊張感と雰囲気の重さが
非常に印象に残っていた作品でした。
なので、『エンド・ゲーム―常野物語』のハードカバーが刊行
されたときには、文庫が待ちきれなくて購入したほど。
( 普段、ハードカバーは買わないのにネ ^^; )
そして昨秋、『エンド・ゲーム』の文庫が発売されてから、
不思議と無性にもう一度読みたくなって・・・。
実は、以前読んだときには、自分の中でこの物語のラストが
消化しきれずにいたので、今回、じっくりと読み返したところです ^^
▲ 文庫は赤が基調のデザイン。
私は、ハードカバーの影響か、この物語は緑のイメージです。
【 story 】
「裏返さ」なければ「裏返される」!
人々の中に入り混じって現れる正体不明の「あれ」。
その敵と拝島母子は二人、孤独な戦いを続けてきた。
だが、ある日、母の瑛子が旅先で倒れて発見される。
母が裏返された!?
残ったのは、娘の時子ひとり・・・。
時子は母を助けるため、遠い昔に行方不明となった父が
「もし、自分に何かあったときには電話するように」
と残していた番号に電話をかけると・・・。
【 漂う緊張感・緊迫感 】
恩田陸さんの創り出す物語には、「夜のピクニック」のように、
青空の下、さわやかで心地よい風が吹いているような雰囲気の
作品から、「月の裏側」のように、どんよりした曇り空と、
身にまとわりつくような重い空気をまとった作品まで幅が広く、
まるで違う作家さんが書いているのではないかと思わせるほど。
そしてこの小説は、最初にも触れたとおり後者の雰囲気を
まとった作品。
― 得体の知れない「敵」との戦い ―
― 「裏返す」か「裏返される」かといった緊迫感 ―
― 時子に迫りくる謎・なぞ・ナゾ ―
そんな、重い空気と緊張感が張り詰めた中で、物語は進んで
いきます。
この緊張感・緊迫感に、妙に惹きつけられた作品です♪
ただ、「裏返す」とか「裏返される」とかといった緊張感・緊迫感は
「オセロ・ゲーム」の方があったかも。
「オセロ・ゲーム」は、短い物語の中に内容がギュっと凝縮されて
いた感じ。短編の良さが十分に発揮されているかな!
もちろん、この「エンド・ゲーム」も、「オセロ・ゲーム」にあった
緊張感・緊迫感を承継しています。
そして、ラストへ向かって二転三転する展開、隠された真実など、
まさに恩田ワールド。
後半に若干、展開が乏しくなった感はあります、楽しめますヨ
(*^-')b
ラストの展開は少し複雑なので、じっくり読んでみてネ!
きつねのはなし 【森見登美彦】 [最近の素敵な本の棚]
「魔」とか「闇」とか、そんな古(いにしえ)の物の怪(もののけ)が
潜む妖しげな雰囲気に惹きつけられる小説です。
森見さんは、ホントこんな妖しげな雰囲気を表現するのが非常に
上手な作家さんですよね。
▲ この小説に漂う雰囲気は、まさにこんな感じです。
装丁のセンスがいいですネ *^^*
【 story 】
古道具屋「芳蓮堂」にアルバイトする「私」は、主人のナツメさん
から届け物を頼まれた。
彼女は風呂敷の中身を決して見てはいけないと言う・・・。
届けた先は、背後に夕闇に沈み始めた竹林が生き物のように
蠢(うごめ)く奇妙な屋敷。
その後、何かに魅入られたかのように不思議なことが起こり
始める・・・。
(表題「きつねのはなし」より)
【 怪しさ(妖しさ)の魅力 】
この作品は4つの物語から成り立っています。
これらの物語はそれぞれ登場人物も、もしかしたら時間も(?)
異なっていますが、「芳蓮堂」という古道具屋、不可思議な「幻燈」
といった共通する場所や物が出てきます。
なので、知らず知らずに他の物語と絡み合っている感じ。
この物語を読んでいると、日常の現実にありながら、現実でない、
なんだか一人、蜃気楼の中の別世界(迷宮)に紛れ込んでしまった
ような感じを受けました。
森見さんの作品はそれほど読んでませんが、きっと、そんな感覚
にさせるところが魅力なんですよね。
皆さんも、この「きつねのはなし」で京都の迷宮に迷い込んでみて
はいかがですか?
ちなみに、4つの物語の中で表題作の「きつねのはなし」が好きです♪
【 +plus 】
文庫についていた帯には
「闇の中でケモノが笑った。 漆黒の京都奇譚集」
の文字。
もう、この言葉に物語の雰囲気が集約されている感じがします。
装丁だけでなく、この言葉を考えた新潮文庫の担当者さんに脱帽です!
まほろ駅前多田便利軒【三浦しをん】 [最近の素敵な本の棚]
『風が強く吹いている』の「三浦しをん」さんの作品にして
第135回直木賞受賞作。
文庫本が発売されたときから気になっていた作品でした。
▲ 多田と行天の間での「たばこ」のやり取りが、ふたりの
結びつきを表わしているようでおもしろいですネ ^^
【 story 】
東京のはずれに位置する都南西部最大の街「まほろ市」。
その駅前で便利屋を営む多田啓介のもとに、高校時代の
同級生・行天春彦が転がり込む。
なんとなく居ついてしまった行天とともに、ペットのあずかり、
子どもの塾への送迎、納屋の整理などなど。
普通にありふれた便利屋への依頼のはずが、なぜか
複雑なことに・・・。
【 ふたりの中年男の魅力? 】
この物語の魅力は、何と言っても主人公ふたりの魅力ですネ!
この物語の主人公は、行天から “ おせっかい ” と言われる
多田と、多田からは何を考えているか分からないと言われる
行天。
多田は“おせっかい”と言うより、実は心優しく、やさしすぎて
自分が傷ついているような男。
一方、行天は物事に無気力で何も考えていないようでありながら、
実は、さりげなく気を遣うような男。
そんなふたりの中年男のさりげない“やさしさ”と“暖かい心”が
物語全体をやさしく包み込んでいます。
それぞれが過去につらい人生を送り、心に癒えぬ傷を抱えて
いて、どちらかと言ったら重い話なのに、意外と軽快に「さらっ」
と読めるところも魅力。
いれば厄介者、でも、いないとさみしい・・・
そんな感じで、多田にとって行天の存在の重みが増していく
ところが、何だかふたりの心の結びつきが深まっていくようで、
すごく印象に残りました。
【 +plus 】
さてさて、多田の抱えるつらい過去は物語の最後に明かされ
ますが、最大の謎、行天の過去には触れられていません。
つい最近、続編(番外?)が刊行されたところです。
いよいよ、人生を捨ててしまったかのような行天の過去が
明かされるのでしょうか。それとも謎のままなのでしょうか。
「番外地」だけでなく、もっともっと、多田と行天と出逢いたいな!
一瞬の風になれ【佐藤多佳子】 [最近の素敵な本の棚]
2007年の本屋大賞受賞作だし、TBS「王様のブランチ」でも
絶賛していて、前から読みたい!っと思っていた作品。
今年の7月、ついに文庫化され、 「やった~! O(≧▽≦)O」
っていう感じです。
そして、読み始めたら「も~、止まらない!」 まさにそんな感じで、
第3部までいっきに、時間さえあれば読んでました。
久々に読み終わるのが「さみいし」って感じた作品。
年齢を問わず楽しめると思います!
▲ 3部構成で、第2部が-ヨウイ-、第3部が-ドン-。
【 story 】
神奈川県にある春野台高校陸上部。
親友「連」の走りに魅了されて入部した陸上初心者の新二。
「速くなりたい」、「少しでも連の背中に追いつ付きたい」
ただ、それだけを目標に、ただただ、ひたすらに走るうち、
その魅力に惹き込まれていく。
「努力の分だけ結果が出るわけじゃない。だけど
何もしなかったらまったく結果は出ない」
新二は親友の背中を追い続ける・・・。
【 さわやかな風を感じる作品 】
読んでいて、ときおり「さわやかな風」を感じた作品。
それは、陸上で走っているときの「風」だけではなくて、
新二たちの陸上に取り組む姿勢とか、仲間を思う気持ちとか、
そんなところで感じる、すがすがしくて心地よい「風」。
読んでいる僕も心地よくさせてくれました。
この作品の魅力は「風」だけではなくて、共感したところ。
スタート前、落ち着いていると思っていた自分が、スタートしたとたん
頭が真っ白になってしまったり、落ち着こうとすると
余計に舞い上がってしまったり、そんな心理描写は自分の経験と
重なって、一緒にドキドキしてしまいました。
なので、新二が感じる短距離走という「一瞬の世界の快感」
というか、「心地よさ」も自分のことのように伝わってきて、陸上、
特に短距離が嫌いな僕も走りたくなってしまったほど ^^;
それほど、主人公に共感して、走っている楽しさが伝わってくる
作品です。
さらに言うと、新二のちょっぴりの恋心とか、仲間たちとの触れ合いは、
昔、自分が経験した淡い恋心や楽しかった部活を想い出したりして・・・。
ちょっと胸がキュンとしてしまいました。
そんな素敵な作品。
もし、まだ読んでいなかったら、まず読んでみてくださいネ。
まさに、さわやかな風が通りすぎるかのように、読んでいてホント気持ち
いい作品。きっと魅了されますよ!