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彼女はたぶん魔法を使う 【樋口有介】 [最近の素敵な本の棚]

ちょっと興味をそそられる意味深なタイトルと、さわやかな
雰囲気のカバーイラストに魅かれて手にとった作品。
ところで、帯やあらすじの紹介などで「人気シリーズ」という
言葉をよく見かけますよね。この作品の背表紙にも
「人気シリーズ第一弾」との紹介が。
あまりにこの言葉を見かけるので、私はほとんど信じてなく^^;
この作品も、期待半分、疑いの目半分っというところで読み
始めました。
結果はいい方にゴロン! おもしろかったです!!
しかも、ひじょ~に私好みの作品(o^-')b
続編も是非読みたいな

彼女はたぶん魔法を使う_s.jpg
彼女はたぶん魔法を使う (創元推理文庫)
 ( ↑ amazonへはタイトルをクリックね)
作者: 樋口 有介
出版社/メーカー: 東京創元社
発売日: 2006/07/22
メディア: 文庫


【 story 】

フリーライターをしながら、刑事をしていたころの元上司で恋人
の吉島冴子が回してくれる探偵の仕事で食いつないでいる
柚木(ゆずき)草平。
そんな彼の元へあった調査の依頼は、轢き逃げされて死んだ
妹の死に疑問を持つ島村香絵からだった。
香絵によると、車種も年式も判別されているのに、犯人も車も
発見されず、警察では、交通事故で処理しようとしているのだ
という。
香絵からの依頼を引き受け、調査を始める柚木だったが・・・。

【 “大人の男”の魅力の物語 】

表紙やタイトルを見ると、“さわやか”でライトな作品みたい。
ある意味“さわやか”で、実際に読みやすい作品なのですが、
一味違うんです。
何せ主人公の柚木草平は38歳。
妻に逃げられ、刑事をやめることになった暗い過去を持つ男
なので、読み始めは、人生の哀愁漂う、重苦しさのある物語
かな?と思いきや、実はこの男、次から次へと美女に惚れられ
(うらやましい・・・^^;)、変にカッコつけずにウィットに富んだ
会話のできる“大人の男”で、とても魅力的なんです。

例えば、調査に行った先の女の子にキザなセリフをはいて
 「いつもそういう口のきき方するの」 と聞かれ、
 「ハンフリー・ボガートに似てるか」 と切り返しちゃう。
それが決して嫌みがなくて、余裕のある“おとな~!”って感じ。
そんな魅力的な“大人の男”が主人公なので、ストーリの展開
だけでなく、そんな美女たちとの会話も素敵な、魅力的な物語
となってます。

私も、こういう余裕のある“大人の男”になりたいな~!なんて
思っちゃいました。

【 +plus 】

作品の中に出てくる「ハンフリー・ボガート」とは、アカデミー賞
も受賞した名画「カサブランカ」で主演した有名な俳優さん。
作品中の「君の瞳に乾杯」というセリフはあまりにも有名ですよね。
ただ、このセリフが1回だけでないのには驚きましたが・・・(笑)

カサブランカ_s.jpg
カサブランカ [DVD] FRT-017 (←amazonへはタイトルをクリックね!)
出版社/メーカー: ファーストトレーディング
メディア: DVD

もし、カサブランカを観たことがなければ、是非観ることをお薦め!
「名作」が「名作」と言われるゆえんを実感した作品です。
私のだ~い好きな作品なんですヨ о(ж>▽<)y スゴクスキ☆

 


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名前探しの放課後 【辻村深月】 [最近の素敵な本の棚]

この2011年3月23日で、ブログを始めて丸4年になります。
1回でも読んでくださった皆さま、いつもお寄りいただいている皆さま、
どうもありがとうございました *^^*
いつもは記念に、ある作家さんを選んで何冊か読むのですが、
今年は地震のこともあって・・・。
そんな中ですが、最近、気に入った作品を記念に紹介しますネ!


辻村深月さんは、以前、取り上げた『冷たい校舎の時は止まる』以来。
『冷たい校舎の時は止まる』も、すご~くおもしろかったのですが、
自殺をめぐる物語。
そういう物語って、いじめられている人の「つらさ」が伝わってきたりして
ちょっと苦手。この作品も自殺をめぐるお話だったので、ちょっと躊躇
していたのですが、人にお薦めいただいて読んでみました。
おもしろかったです! しかも、すご~く о(ж>▽<)y ☆
だって、上下巻の比較的に量がある作品ですけど、たった4日で
読み終えましたもの!
私にとってはかなりの(というか、メチャクチャ)ハイペースです。 

名前探しの放課後(上).jpg名前探しの放課後(下).jpg
名前探しの放課後(上)  (←amazonへはタイトルをクリックね!)
作者: 辻村 深月
出版社/メーカー: 講談社
発売日: 2010/09/15
メディア: 文庫

【 story 】

― あれは、何でまだあそこにあるんだろう

“依田いつか”が最初に感じた違和感は、既に撤去されたはずの
看板だった。
季節が違う・・・。今日は一体、何月何日だ?

3か月前の過去に戻された“いつか”。
動揺する中で浮かんだ一つの記憶は、3か月後に同学年の生徒が
自殺するということ。しかし、自殺の詳細も、名前も思い出せない。
いつかは高校のクラスメートの“坂崎あすな”に相談を持ちかける。
そして二人は、自殺を止めようとその「誰か」を探し始める・・・。

【 ぐっ!ときた作品 】

読み始めたら、その先が気になって、気になって。読むのがやめ
られませんでした。
それは、「誰かの自殺を阻止できるのか?」といったこともありま
したが、それ以上に、自殺を止めようといかなる努力をいとわない
“いつか”の姿とか、その中で深まっていく友情とか、人間的に成長
していく”いつか”たちの姿とかが心地よくて!

そして、ラスト。
ぐっ!ときました。
詳しく書けないのが残念~! 心が温かくなりました。

最初に書いたように、自殺をめぐる物語って「つらさ」を共感して
しまって苦手なのですが、この物語のメインテーマは「友情」や
「人間的成長」といった感じ。
陰湿さや痛さのない、温かさに満ちた素敵な雰囲気の作品です。
とてもお薦めでーす (o^-')bスゴクイイ☆


タグ:辻村深月
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神様のカルテ2 【夏川草介】 [最近の素敵な本の棚]

“ふんわり”と心をやさしく包み込んでくれるような素敵な作品の
『神様のカルテ』
続編というのは、往々にして期待はずれに終わってしまうことが
ありますが、この『神様のカルテ2』は期待に違わない素敵な
作品でした。
休むことなくイッキ読みしてしまうほど惹き込まれました!
(o^-')bスゴクイイ!

神様のカルテ2.jpg
神様のカルテ 2 (← amazonへはタイトルをクリックしてネ)
作者: 夏川 草介
出版社/メーカー: 小学館
発売日: 2010/09/28
メディア: 単行本

【 story 】

悩んだ末、本庄病院に残って地域医療に携わることに決めた
栗原一止(いちと)。
3月、一止はハルに誘われて雪の美ヶ原高原に登り、雲海の
向こうにある北アルプスの悠々たる山並みを望むのだった。

4月、一止の大学時代の親友・進藤辰也が内科の医師として
東京の病院から着任する。
かつて“医学部の良心”と呼ばれるほど医療への志をもっていた
辰也。しかし、一止の期待とは裏腹に、患者の緊急時に連絡が
つかないなど辰也の医師としての行動は、かつての姿からは
想像もできないものであった。
そんな不協和音の中、さらに本庄病院に激震が襲う・・・。

【 ふんわりと心を温かくしてくれる物語 】

小説を読んでいて泣きそうになっても、我慢してしまう私が
自分でも戸惑うくらい涙があふれてしまいました。
“ふんわり”と心が温かくなって、とてもやさしい気持にさせて
くれる、この作品の魅力は健在です。

いつ呼び出しがあるか分からない、いつ家に帰れるかも分から
ない、休みもほとんど取れない、そんな過酷な職場環境。
そんな中で一止たちがやっていけるのは、地位とか名誉とか、
まして報酬だとか、そんなものではなくて、
“人が人としてやるべきことをやる”という純粋な思い。

 「良心に恥じぬということだけが、我々の確かな報酬だ」

一止と辰也の間で何度か交わされる言葉ですが、愚痴りたくなる
ほどの忙しさの中で(きっと私なら愚痴ってしまうと思います…)、
そんな思いを一切表に出さず、当たり前のようにヒョウヒョウと
患者と向き合い、あたかも当然のことのようにその言葉を口に
できてしまう一止がとても素敵です。
そして、こういう地域医療の問題が決して物語だけのことでなく、
実践している医師たちが現実に存在するからこそ、この言葉が
リアリティをもって心に伝わってきて、感動させられるのかもしれ
ません。

そこに、一止のやさしさ、ハルのやさしさ、病院に働く人たちの
やさしさ、といった人のやさしさに溢れている物語だからこそ、
きっと心を温かくさせてくれるのでしょうね。

【 +plus 】

「神様のカルテ2」も2011年本屋大賞にノミネートされました。
読んでみて、ノミネートされたのも納得です!
そして、櫻井翔さん、宮崎あおいさんで主演する映画の公開日も
2011年8月27日(土)に決まりましたネ。
とても楽しみです!(絶対観に行きまーす^^)

神様のカルテmovie _s.jpg

ところで、「神様のカルテ」でハルは、一服の清涼剤のような存在。
ハルが前面に出過ぎると物語の良さが崩れてしまいそうなので、
宮崎あおいさんは大ファンなのですが、どのように描かれるのか
楽しみあり、不安でもあります。
素敵な映画になるとい~な!♪


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船に乗れ!Ⅲ 合奏協奏曲 【藤谷 治】 [最近の素敵な本の棚]

まさに“痛かった”前作、 「船に乗れ!Ⅱ 独奏」 。
「独奏」というサブタイトルから受けた印象のとおり、痛さと衝撃に
読んでいた私もツラかったです・・・。
そして、いよいよ最終巻。主人公・サトルに何が待っているのか、
期待と不安にドキドキしながら読みました!

船に乗れⅢ.jpg
船に乗れ! (3) (← amazonへは ここ をクリックね!)
作者: 藤谷 治
出版社/メーカー: ジャイブ
発売日: 2009/11/05
メディア: 単行本


【 story 】

最終学年になった津島サトル、伊藤慧(けい)、そして、鮎川千佳。
実力ある1年生が入り、学校の雰囲気も一変。
南とのつらい出来事から抜け出すことのできないサトルも、いや
応もなしに現実と向き合うこととなる。
やがてサトルに訪れる転機。
最終学年に人生の音楽のすべてをかけるかのように、サトルは
音楽に打ち込んでゆく・・・。

 

【ご注意】
  この作品は、Ⅱのときもそうだたのですが、物語の核に触れな
 ければ感想を書けなさそうです。ちょっとネタバレになってしまうと
 思うので、ご注意ください。

【 燃え尽きました! 】

「夢はかなう」 「乗り越えられないことはない」

学生時代ってそんなふうに、自分の能力を疑うこともなく、可能性と
根拠のない自信にあふれていませんでしたか?
今思うと、夢と希望にあふれていた時期だったような気がします。
そんな時期に自分の限界を認めることは、非常につらい現実です
よね!

主人公・津島サトルは、能力の限界という現実に突き当り、音楽を
やめる決心をします。恋人を失った喪失感の上に、さらに追い打ち
をかけるかのようなつらい選択。
しかし、サトルは逆に、これまで音楽に打ち込んできたすべてを注ぐ
かのように音楽に取り組んで行きます。
そんな想いがグイグイっと伝わってきて胸が熱くなりました。
そしていつの間にか、まるでサトルに同化したかのように感情移入
して読んでいて、読み終えたときは、何だかサトルと一緒に燃え尽き
たかのような気持になったほどです。

このⅢに限らず、3作すべてがそんな感じ。私にとって、これほど
主人公に感情移入した作品はめずらしかったです。
ホント気持が熱くなった作品でした。
とてもとても素晴らしい作品なので、まだ読んでいない方には是非、
読んでみていただきたいです!

【 +plus 】

このタイトルとなった「船に乗れ」という言葉はニーチェの言葉だそう。
主人公・サトルの青春時代、その後の人生、そして私自身の人生と
重ね合わせてみると、ラストで触れられているとおり、人生ってまさに
船のようですね。
のろのろと、しかし絶え間なく、波に揺られながら、航行し続ける・・・
 - 船は揺れ続けている-
この言葉とタイトルの意味がズシリと重く響いてきました。


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孤宿の人 【宮部みゆき】 [最近の素敵な本の棚]

宮部みゆきさんの作品は「レベル7」に始まって、「龍は眠る」、
「模倣犯」、「理由(わけ)」しか読んだことがありませんでした。
超人気作家ですし、評判の作品も多いながら、何となく
社会派的イメージが強くて(きっと「模倣犯」や「理由」の印象が
強いのだと思います)、その分野が比較的苦手な私の触手が
沸かなかったのだと思います。

この「孤宿の人」も評判がいいのは知っていて、本屋さんで
何度も手に取っていながら、宮部作品のイメージとあまり読まない
時代物ということもあって、元に戻していたものです。
今回、人に薦めていただいて読んでみました。
すごく素敵な作品でした  (o^-')bトテモイイ~♪

koshuku-1.jpgkoshuku_2.jpg
孤宿の人〈上〉 (新潮文庫) ←amazonへはここをクリックね!
作者: 宮部 みゆき
出版社/メーカー: 新潮社
発売日: 2009/11/28
メディア: 文庫

【 story 】

大晦日。江戸市中、建具商「萬屋(よろずや)」の陽の当らない
女中部屋で生まれた“ほう”。
預けられた家で“ほう”は躾らしい躾もなく育てられた。
そんな“ほう”が9歳になった正月明け、「萬屋」の都合で
四国・金毘羅さまへ代参することになる。
しかし、金毘羅さまへお参りする直前、“ほう”は置き去りに
されてしまう。
そこは、北は瀬戸内海に面し、南は山々に囲まれた
讃岐国・丸海(まるみ)藩だった。

幸い、藩医を勤める井上舷洲の家に引き取られ、その息子・
啓一郎と妹・琴江のおかげで初めて人らしい暮らしを始めた
“ほう”。
しかし、、その井上家に不幸な出来事が襲う。
そして折しも、流罪となった幕府要人・加賀殿が丸海藩へ入領
しようとしていた。
やがて領内では、不審な毒死や謎めいた凶事が相次ぐ・・・。

【 人情味があるれる物語♪ 】

正直なところ、好みに合うか不安だったので、おそるおそる
読み始めたのですが、すぐにグッと惹き込まれ、上下巻を
一気に読んでしまいました。
すごく、素敵で魅力的な作品です о(ж>▽<)y スゴクイイ☆

“ほう”を始め、宇佐、渡部、舷洲に啓一郎などなど、皆が
心やさしく、でも脆(もろ)さを併せもった人情味があふれる
人物たちで、読んでいて心温かくなってきました。
一方で、丸海という土地の人々の素朴さ故の残酷な一面と、
江戸時代という不条理さが入り混じる時代ということもあって、
その不条理さに“ほう”たちが飲みこまれてしまわないかと
心配になりました。
そんな感じで、物語にグイグイ惹き込まれてしまいました。

【 「孤宿の人」の魅力 】

そして、この物語の魅力は、孤独に幽閉される加賀様。
鬼だ、悪霊だと噂されながら、すべてを受け入れる聡明さと
思慮深さ、そしてやさしさ。
ラスト、“ほう”に贈ったもの。
そして、丸海の人々へのやさしさ。
「孤宿の人」の器の大きさに涙が出そうになりました。
とても感動した、ホントお薦めな作品です ^^


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船に乗れ!Ⅱ 独奏 【藤谷 治】 [最近の素敵な本の棚]

前作の 『船に乗れ!Ⅰ 合奏と協奏』 を読んだとき、主人公の
津島サトルになったように、音楽を心から楽しみ、南枝里子に
恋した気持になりました。
そのときと同様、この『船に乗れ!Ⅱ 独奏』でも、サトルに
感情移入して、音楽に恋にと、緊張しドキドキしてしまいました。

 ※ よかったら、 「船に乗れ!Ⅰ 合奏と協奏」の感想も読んで
    いただけるとうれしいです( ↑ リンクを貼ってあります。)

船に乗れⅡ.jpg
船に乗れ!(2) 独奏 (←amazonへはここをクリックね!)
作者: 藤谷 治
出版社/メーカー: ジャイブ
発売日: 2009/07/02
メディア: 単行本

【 story 】

サトルの自宅で開かれたホーム・コンサートでの最高の演奏を通して
枝里子にグッと近づくことができたサトル。
1月には、枝里子とオペラ『魔笛』を観劇することができ、これ以上の
ない幸せな時間を過ごす。

そして、芸大に合格した先輩の卒業演奏に刺激を受けて芸大を
目指すことにした枝里子に引っぱられるように、サトルもまた芸大を
目指すことになり、高校2年生になると、サトルと枝里子はさらに
「音楽漬け」の毎日を過ごすこととなった。

そして、またオーケストラ発表会に向けての練習が始まり、難易度の
高い曲に取り組む中、サトルは短期のドイツ留学をすることになる。
壁にぶち当たり、帰国したサトルを待っていたのは・・・。

 

【ご注意】
  普段は、これから読む方の楽しみを奪わないように、物語の核に
 触れないように、
でも、できるだけ物語の魅力が伝わるようにと意識
 しながら書いています。
  しかし、この「独奏」は、物語の核に触れなければ、私が受けた
 衝撃を伝えられそうにありません。
  できるだけ“あらすじ”には触れないようにしていますが、それでも
 先の展開が分かってしまうと思いますので、まだ読んでいない方は、
 読み終わった後に以下を読んでいただけるとうれしく思います。

 

【 痛さ、衝撃 】

最初にも触れたように、サトルに感情移入して読んでいたからか、
帰国したサトルを待っていた状況に、サトルと同じように、不安と疑問と
戸惑いで一杯になり、それが最高潮に達したとき、衝撃として襲って
きた感じでした。

 なぜ枝里子は・・・。どうして??

サトルの疑問、衝撃、混乱をそのままのように、私自身もやるせない
気持になって、つら過ぎてすぐには先を読めなかったです。

しばらく本を閉じ、一息ついて気持ちを落ち着かせると、今度は
なぜ?っと気になり始め、どんな展開になっても自分(私)の気持が
傷つかないように用心しながら恐る恐る読み進めました。
「自分が傷つかないように」なんて、それだけサトルに感情移入して
いたのかもしれません。枝里子と上手くいって欲しかったですし・・・。

上の感想は、読み終わった直後に感じるままに書いておいたものを
できるだけそのまま残しました。なので、私の率直な感想です。
読み終わってから1日という時間を置いて見ると、ちょっと感情移入
し過ぎる気もしますが、それほど惹き込まれ、心が痛くなり、衝撃を
受けた作品でした。
まさに、私にとってこの作品は、「痛さ、衝撃」という言葉に尽きそう
です。


さてさて、心に深い傷を負い、また、取り返しのつかないことをして
しまったサトルの混乱は続いています。
もう一度、光明を見つけることはできるのか、どうなってゆくのか、
続編「Ⅲ 合奏協奏曲」が心配であり、楽しみなところです。

 


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サクリファイス 【近藤史恵】 [最近の素敵な本の棚]

「サクリファイス」という作品の評判は何度も聞いていたので、
文庫が発売されたとき迷いなく購入しました。
さすが第10回大藪春彦賞の受賞作にして、2008年本屋大賞
の第2位!
評判どおり、とても素敵な作品でした。
すご~くお薦めです (o^-')bヨカッタ!

sacrifice.jpg
サクリファイス (新潮文庫) (←amazonへはここをクリックね!)
作者: 近藤 史恵
出版社/メーカー: 新潮社
発売日: 2010/01/28
メディア: 文庫

【 story 】

中距離走の選手として優秀な成績を残し、将来を期待されながら
走ることに苦痛しか感じなかった高校時代。
深夜、何気なく見たテレビで自転車ロードレースの世界を知り、
白石誓(ちかう)は、初めて知るその世界の魅力に惹かれ、
ロードレースの世界に足を踏み入れた。

勝つことを義務づけられた「エース」と、エースを勝たせるため
サポートに徹する「アシスト」。
ある意味、冷酷に分担された「ロードレース」の世界で、誓は
「アシスト」として自分のいる場所を見い出していく。

所属するチームの「エース」をめぐる黒い噂が囁かれる中、
誓は、ロードレースの本場、ヨーロッパ遠征に選抜される。
ところが、レース中、誓は思いも寄らない悲劇に遭遇する。
そして、それは単なる事故ではなかった・・・。

【 タイトル「サクリファイス」の真の意味 】

「自転車ロードレースを舞台にした小説?マイナーな競技だし、
あまり興味が惹かれないなぁ」

な~んて思わないでくださいネ!(実は、私がそう思っていた・・・)
そんな先入観で読まなかったら、すごく素敵な作品を読み逃して
しまいますヨ!

正直、ロードレースについては、「ツール・ド・フランス」くらいしか
知らず、しかも、単に体力勝負で1位でゴールすればいい競技
くらいの、非常に乱暴な理解(スミマセン。無知でしたm(_ _)m)
だった私が読んでも、ぐぐっと惹き込まれたこの作品。

ロードレースの紳士的な暗黙のルール、そして、たとえ優勝を狙え
たとしても、エースを勝たせるためには自分を犠牲にしなくては
ならないといった、ある意味「非情さ」を併せ持つこのスポーツの
奥深さにも驚かされましたが、それ以上にストーリーが魅力的♪

純粋にスポーツに向き合う姿や、選手間の駆け引きといった
レースの魅力を描いただけでもきっと素敵な作品になったと思い
ますが、この作品は、さらに、悲劇の事故への真相に迫るという
要素も織り交ぜて、グイグイと物語に惹き込んでくれました。
そしてラスト、「サクリファイス=犠牲」というタイトルの真の意味を
知ったとき・・・。
是非、素晴らしい読後感を味わっていただきたいです。

【 +plus 】

誓の3年後を描いた「サクリファイス」の続編『エデン』(単行本)が
発売されていますヨ。

EDEN.jpg
エデン (←amazonへはここをクリックね!)
作者: 近藤 史恵
出版社/メーカー: 新潮社
発売日: 2010/03
メディア: 単行本

読むのはこれからですが、とても楽しみ~☆


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天地明察 【冲方 丁】 [最近の素敵な本の棚]

ご存知、2010年本屋大賞の受賞作。
私もだ~い好きな『神様のカルテ』、『神去なあなあ日常』
『猫を抱いて象と泳ぐ』、『船に乗れ!』、『植物図鑑』といった
作品たちを抑えて、さすが大賞を受賞しただけのことはあります。
惹き込まれました!
この作品も私のお気に入りに仲間入りデス!
 (o^-')bグッド

天地明察.jpg
天地明察 (← amazonへはここをクリックね!)
作者: 冲方 丁
出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
発売日: 2009/12/01
メディア: 単行本

 

【 story 】

太平の世へと移り変わりつつあった四代将軍家綱の御代。
“碁打ち衆”と呼ばれ、将軍様の前で“御城碁”を打つことを
許された四家の一つ、名門・安井家に生まれ、安井算哲、
公務以外では「渋川春海」と名乗る青年を“碁”以上に夢中に
させたものが算術だった。

ある日、春海は、老中・酒井雅楽頭から下命を受ける。

  「北極星を見て参れ」

それは、日本全国を旅して、緯度を計測し、地図の根拠と
なる数値を出してこいというものだった。
そして、それが改暦という未曽有の大事業の始まりだった。

【 まさに春海を表わす言葉、「天地明察」 】

平安時代から800年も続き、人々の暮らしに溶け込んでいた
でだろう暦。
今と違って天文への理解も浅い世の中で、文化そのものと言って
いい暦を変えようという途方もない大事業を行おうとするんです
から並大抵のことではないですよネ。
そんな大事業を、不屈の闘志と、失わない謙虚な心根で行う
人間「渋川春海」の魅力と、その波乱万丈とも言える凝縮された
一生に魅せられ、感動しました。

春海の改暦への想い。“えん”という女性との出逢いと別れ。
不遇の天才算術家・関との縁。そして、改暦を夢見た数々の
人々との結びつきなどと絡めて、春海が非常に親しみがあり、
素直で飾らない人柄として描かれたており、すごく感情移入が
しやすかったです。

読んでいるうちに、何だか、渋川春海という人物と一緒に、
途方もない大事業に取り組み、肩に力を入れ、苦しみ、
打ちのめされながらも、大願成就を夢見た人たちの想いを
胸に突き進んでいるような、そんな気持ちになりました。
ラストを読み終えて、春海と一緒に燃え尽きたような読後感
でした ^^;

ところで、天地明察の「明察」とは、「正解」、「ご明答」という
ような意味。
天の理、地の理を「正しく」解き明かした春海をまさに表わすに
ふさわしいタイトルですネ!

【 +plus 】

この物語で描かれている、春海が改暦に失敗したことなどは、
どうも史実のようです。
この物語がどこまでが史実であり、どこまでが冲方丁さんの
創作なのかは分かりませんが、江戸時代の前期という時代に、
非常に精度の高い暦を開発した渋川春海という偉大な人物が
実在し、大事業を成し遂げたという事実は、それ一つだけでも
本当に感動ものですよネ。

 


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Another 【綾辻行人】 [最近の素敵な本の棚]

「強い意志を秘めたような表情でこちらを見据える少女」
書店で初めて見かけた2009年の秋。
表紙に惹きつけられ作者を見ると、だ~い好きな綾辻行人さん。
それ以来、本屋さんで見かけるたびに気になっていました。
って、早く買って読みなよ~!って感じですよネ ^^; 

  Another (book).jpg
  ▲ Another (← amazonへはここをクリックね!)
     作者: 綾辻 行人
     出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
     発売日: 2009/10/30
    メディア: ハードカバー

▲ 好きなんですよね~、こういうイラスト о(ж>▽<)yスキ ☆。
  表紙を開いて見たら「装画 遠田志帆」の文字。
  おお!最近、気になっていたイラストレータさんだー♪

 

【 story 】

1998年の春。
肺の病気のため東京を離れ、夜見山(よみやま)市にある
亡き母の祖父母と一緒に暮らし始めた榊原恒一。
ちょっとタイミングが遅れた転校生として夜見山北中学校の
3年3組に転入した恒一は、クラスの雰囲気に不信を抱いた。

この教室の空気にはどこか、必要以上の静けさがあって・・・
いや、静けさというよりも堅苦しさ、みたいな?
― 堅苦しさ、妙な緊張感・・・うん、そういう感じ。
なんだろう、これは

そんなクラスで、恒一は、片目に眼帯をつけた少女に気づく。
ミサキ・メイ ― 病院で出会った不思議な少女。
しかし、彼女の存在を意識するのは恒一だけで、ほかのクラス
メイトにとってメイを存在していないかのようだった・・・。
彼女は本当に存在していないのか!?


【 綾辻ホラーの魅力! 】

おもしろかったぁ!

この作品は、『十角館の殺人』を始めとする『館シリーズ』のような
本格推理物ではなく、『緋色の囁き』を始めとする『囁きシリーズ』
のようなホラー要素が強い作品です。
私はあまりホラー系は好きではありませんが、綾辻さんのホラー系
作品は一味違って好き(「囁きシリーズ」もだ~い好きで一気に
読みました!)。

しかも、綾辻さんらしく、「謎」がいっぱい散りばめられていて、
その謎にグイグイ惹き込まれて!
そして物語の雰囲気も、まるで霞がかかったよう。
  始まってしまった惨劇、それを止めることはできないのか?
  クラスの中にいる<もう一人>は誰なのか?
  メイが<もう一人>なのか? もしかして自分が・・・!?
サカキやメイたちの緊張感が読む方にも伝わってくる感じで、
最後までドキドキしてしまいました。

それにしても、次が読みたくて、読む時間を作るのが大変でした!
約670ページと分厚い本でしたが、一気に読んでしまった感じ。
そんな魅力的な作品です (o^-')bグッッド

【 +plus 】

この作品は、
  このミステリーがすごい!2010年版 (国内)部門3位
  文春ミステリーベスト10 2009年    (国内)部門4位
だそうです。

ミステリっというカテゴリが妥当か分かりませんが、ホラーに
ミステリ要素を混ぜ込んだところが、綾辻ホラーの魅力なのかも!



 


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グラデーション 【永井するみ】 [最近の素敵な本の棚]

永井するみさんは “ 初めて ”。
しかも、名前を存じ上げてなくて・・・(ファンの方、スミマセン)。
きっかけは、普段、あまり行かない書店の新刊コーナーで
表紙が目に入って来て。
手に取って背表紙のあらすじを読んだら、私好み。
実際、“すご~く”私好みでした о(ж>▽<)y イイ! 

グラデーション.jpg
グラデーション (光文社文庫) (← amazonへはここをクリックね!)
作者: 永井 するみ
出版社/メーカー: 光文社
発売日: 2010/05/11
メディア: 文庫

【 story 】

14歳。
桂真紀は中学2年生の女の子。
みんなが憧れてる先輩からの誘われても気後ればかり。
そして、学校行事で行った夏のキャンプ。
親友・睦美の密かな想いを知る。

16歳。
H高校に入学して1か月半。
最高の友だち、岬すずとの出会う。
すずに背中を押されて入った美術部。
絵の世界に自分の好きなものを見つける。
そして、中学からの親友・睦美からのお願い・・・。

【 微妙で繊細な気持ちが丁寧に描かれた作品 】

紹介した“あらすじ”は14歳と16歳ですが、この後、
17歳、18歳、19歳、20歳、22歳、23歳
と、真紀のその時々の姿が瑞々しく描かれています。
まさに、少女から、大人への過渡期。
それぞれの時々に、その年代特有の悩みや想いを抱え、
そして積み重ねて大人へとなっていく姿が描かれています。

こういう、その年代特有の感情って女の子だけのものでは
ないから、男の私でも、昔、そんな感情を味わったなって、
切なくやるせない、けど懐かしい想い出に、胸がチクッと
してしまいました。

この文庫の背表紙には、『14歳の少女が23歳の大人の
入り口に立つまでの10年間を丁寧に描いた連作小説』と
紹介されていましたが、まさにそのとおり。
その時々の“微妙”で“繊細”な気持ちが非常に丁寧に
描かれて、それぞれの年代がまったく異なる美しい色合い
で輝いているようです。
「グラデーション」というタイトルは、そんな意味も込められ
ているのかも。

こういう小説はもともと好きですが、この作品はかなり上質!
とてもお気に入りです


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