SSブログ
ラブストーリーの棚 ブログトップ
前の10件 | 次の10件

ラストノート【飯田雪子】 [ラブストーリーの棚]

タイトルの「ラストノート」の意味って知ってますか?

ラストノートとは、香水等の香り成分のなかで、時間がたって
後から香ってくる香りのことで、最初に香立つのを「トップノート」、
次に香のが「ミドルノート」、そして残り香が「ラストノート」または
「ディープノート」というそうです。

女性は普通に知っている言葉なのかもしれませんが、私は初めて。
この小説はタイトルのように、忘れられない恋の余韻の物語です。

【 story 】

学生時代に少しずつ育まれていた、洋祐と文香の恋は、
ほんの些細なことが原因で壊れてしまう・・・・・・。
洋祐も文香もその恋に心の整理ができず、新しい恋にも臆病になっていた。
そして、ふたりには進むことのない3年の月日のみが流れていた。

友人の結婚祝いを兼ねた12月の同窓会。
洋祐と文香は再会する・・・。

ラストノート―きみといた季節 (ハルキ文庫)

ラストノート―きみといた季節 (ハルキ文庫)

  • 作者: 飯田 雪子
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2009/01/15
  • メディア: 文庫

 ▲ やさしい雰囲気の表装です。
   雪の降る中、ちょっとさみしげに立つ1本の木が、
   洋祐と文香の心を表わしているようです。

【 恋したときの臆病な気持ち 】

  逢いたい。逢って話をしたい。
  自分のこの気持ちを伝えたい。
  でも、会ったら笑って普通に話せるだろうか。
  彼は笑ってくれるだろうか。
  相手がもう自分のことなどなにも思っていないかもしれない。
  この気持ちを伝えていいのだろうか。

再会を前にしての期待と不安に揺れ動く文香の気持ちが、痛いほど伝わってきました。
  素直に自分の気持ちを伝えたいという気持ち。
  わずかでも希望にかけてみたい気持ち。
  でも、駄目だった場合に自分が傷つかないように予防線を張ろうとする気持ち。
こんな時って、息ができないほど、どきどきして逃げ出したいほどですよね。

こういう臆病な気持ちって、決して女性だけではなく、男もそういう気持ちになります。
ですから自分の(少ない^^;)経験と重ね合わせてしまいました。

【 恋愛小説に思うこと 】

このブログに取り上げている作品は、まだ読んでいなかったら「読んでみて!」
っとお薦めしたい私の好きな作品ばかり。
なので、「恋愛小説」について最近感じていることを、この作品の紹介の中で
あえて取り上げることもないのですが、今回、ちょっと触れたいと思います。

「恋愛小説」を読んでいると、まさに運命としか言いようがないほど、ふたりが深く
結びついているのに、恋人どおしにはならず(戻らず)、別の道を未来に向かって
歩みだしていく物語って多くないですか?

いつも思うんですよネ。うまくいってほしいな!って。
お互いに相手を必要として求めあっているのに、なぜ別れなくちゃいけなの?
どうして元にもどっちゃいけないの?って。
例えば、この作品のふたりがやり直したとしても、きっと、うまくいくだろうなと思います。
3年間も相手を想い続け、
かけがえのない存在であることを再認識しているのですから・・・。

もちろん、別の道を歩みだす選択ってあると思います。
そうやって、その恋の痛みを自分の糧(かて)にして歩みだして行くこともあると思うから。
それは共感しますし否定するものではありません。
でも、単純に「上手くいってほしい」って思うんですよね。
理想的な恋愛すぎですか?


nice!(0)  コメント(1)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

美丘 【石田衣良】 [ラブストーリーの棚]

何年か前にハードカバーが出版されたとき、装丁の美しさ
 ― 女性特有の透き通るように美しく、また、やさしい曲線美
に目を奪われ、どんな作品なんだろうとすごく気になりました。

今回、(たぶん)同じ装丁で文庫本が発売され、石田衣良さんの
作品を是非一度読んでみたいと思っていた僕は、迷わず手に
取りました。

 ▼ 最初、“美丘”ってお尻を指しているのかと思いました(恥ズ!)
   性も描かれていますが、装丁のように美しいと思います。
   美丘s.jpg
   ▲  美丘 (角川文庫)
      ( ↑ amazonへはタイトルをクリックしてネ!)
      作者: 石田 衣良
      出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
      発売日: 2009/02/25
      メディア: 文庫

【 story 】

 ミオカ、きみと会ったのは、あたたかな11月の月曜日、
 穏やかな空が東京の街のうえに青い板のように広がる午後
  だった。

平凡な大学生活を送っていた太一の前に突然現れた美丘
彼女の魂の強さや美しさに太一は次第に魅かれていく・・・
そして、ついにふたりが結ばれたとき、美丘は
   「ほんとうに好きになった人だけ」
そういって自分に課せられた過酷な事実を明かす

残された命を見つめ、限りある生を一生懸命に生きる美丘
そして,彼女が生きたことの証を心に刻みつつ共に生きる太一
一緒に生きようと決意したふたりに待つのは……


【 心に響く 】

ゆっくりと壊れていく美丘
そして、そんな美丘のすべてを心に刻みつけるかのように見守る太一

死が常に隣り合わせであり、壊れていく自分を見つめる美丘のつらさ
目の前で愛しい人が壊れていく姿をすべてを見守り続ける太一のつらさ
ふたりが幸福であればあるほど、その後に訪れるふたりへの過酷さに
涙しそうになりました。
(電車の中で涙が溢れそうになりました。部屋でひとり読んでいたのなら、
絶対に泣いていたと思います。)

  わかるだろうか。ぼくは今も目覚めたまま、きみの夢を見ている。

これ以上ないというほど深く結びついたふたりの魂
そして、決して揺らぐことのないふたりの愛
誰もが求めてやまないけれど、ほとんど得ることのできない「深い愛」を
ふたりが得られたことが、物語に暖かな明かりを灯していました。

ただ美しいだけの浅い純愛物語ではい、等身大の男女が紡ぐ現実感
のある作品。人を愛することがどれほど大切で、どれほど重いものな
のかということが心に響いてきました。

素敵な作品に出逢えました。

  ※ レイアウトや誤字を修正しました。(2015年12月21日追記)


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

キスまでの距離【村山由佳】 [ラブストーリーの棚]

ブログを始めて2周年\(^^)/
昨年の1周年記念では,村山由佳さんの「天使の卵」シリーズを取り上げました。
そして2周年は・・・。やはり村山由佳さんで「おいしいコーヒーのいれ方」です。



【 story 】

高校3年生になる春、父の転勤のため、いとこ姉弟と同居するはめになった勝利(かつとし)
そんな彼を驚かせたのは、久しぶりに会う5歳年上の「かれん」の美しい変貌ぶりだった。
しかも彼女は、彼の高校の新任美術教師。
同じ屋根の下で暮らすうち、彼女が気になるようになる。
なんでこんなに彼女が気になるんだろう…?
あるとき「かれん」が好きであるという自分の気持ちに気づく・・・。
そして、かれんの秘密とその哀しい想いを知り、さらにその思いが強まる。
  守ってやりたい!
押さえられない、あふれる想い。
恋愛の幸福感、不安やかっとうなどを描いた、そんなピュアな物語です。

おいしいコーヒーのいれ方 (1) キスまでの距離 (集英社文庫)

おいしいコーヒーのいれ方 (1) キスまでの距離 (集英社文庫)

  • 作者: 村山 由佳
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1999/06/18
  • メディア: 文庫

 ▲ イラストの雰囲気もすごく好きです。
   同じイラストレーターさんですが、雰囲気は
   JUMP JBOOKSよりこちらの感じのが好きかな。


【 ピュアな想い 】

「おいしいコーヒーのいれ方」の第1巻は「キスまでの距離」

キスって、“特別な人”への入り口。
好きな人と口づけを交わして、初めて“特別な存在”としてなれた気がします。
でも、いざキスしようとするときって,嫌われたらどうしよう、抵抗されたらどうしよう
って不安に思うし、キスするときってホント勇気がいります。
だから、彼女が応えてくれると、うれしさだけじゃなくて安心もするし・・・。
でも、“特別な存在”になると、さらに“もっと特別な存在”になりたいって願ってしまいます。

この物語は、恋したときのそんな想い、ためらい、あせり、不安などの複雑な気持ちが
リアルに描かれていて、自分の甘酸っぱい想い出を刺激するのでしょうか。
胸の奥でチクッてしました。


 男って(少なくても僕は)
  
ただ彼女の笑顔を見たい
  守りたい
  彼女のためだったらどんなことだってする
本当に好きになったときって、そんな気持ちになります。
 
そして、「自分が彼女にとって特別な存在になりたい」と願い、
彼女が自分のことをどう思っているのかわからずに不安になり、
やっと想いが通じたとしても
 
 本当に好き?
  本当に?
  本当にっ!?
そう確かめたくなります。

この物語の主人公・勝利の
  
悩む彼女をなんとか助けたいと純粋に願う想い
  相手が好きと言ってくれても、何度も何度も確かめたくなる気持
  好きな人が他の男の人と話していると嫉妬する気持
って、まさに同じなんです。自分が恋をしたときの・・・。
そして、こういう気持ちってどうにもならなくて、自分でも、もどかしい。
そういう想いがリアルに描かれた作品だから、読んでいて共感して、
そして、こういう純粋な想いって読んでいてとても気持ちいいから、
作品にどんどん魅了されていきました。

とても素敵な作品に出逢えたと思います。
このシリーズ、大切に読んで行きたいな!


【 かっこよすぎだよ! 】

この物語の主人公・勝利にしても,「天使の卵」「天使の梯子」の歩太にしても、
人に非常に気を遣える魅力的な男性。
しかも、押し付けがましくない、さりげないやさしさ。
きっと僕だったらアタフタしちゃうようなことも冷静に自己分析している。

村山由佳さん!あなたの描く男性はかっこよすぎ!魅力的すぎます。
歩太や勝利は、まさに僕の理想の男性像なんですよね。
自分では努力しているつもりですが、ここまではなれません…。
一生かかっても、歩太くんや勝利レベルにはなれないかも…。
読んでいて口惜しくなりますよ(苦笑)


タグ:村山由佳
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

ラブファイト【まきの えり】 [ラブストーリーの棚]

映画を観た後、すぐ1階下の本屋さんに走りました!
(実際は早足程度でしたが(^^;)
この物語の世界にもっとひたりたくて。
小説の世界も林遣都くん、北乃きいちゃん、大沢たかおさんのイメージのまま読めたので、
すぐ物語に引き込まれました。
お気に入りの小説です!

【 お話のさわり! 】

  「稔ちゃんをいじめたら、オレが許さへんからな」。
幼稚園のころは、自分が男の子だと思っていた幼なじみの亜紀。
その亜紀に、幼稚園入園以前からずっと守られ、情けない日々。
稔は、そんな弱虫で惨めな自分が情けなく思う一方、
次第に美しくなり始めた亜紀が気になりだす。
あるとき、稔は大木と出会い、やがて大木のボクシングジムで
ボクシングを習い始める。
次第にボクシングの魅力にはまっていく稔。
同じ高校に進む亜紀には内緒のはずだったが、
そんな幼なじみの変化に気づかないはずがない。
  「稔君の行ってるジム、見つけたからね」
亜紀も同じジムでボクシングを始める。

ラブファイト―聖母少女〈上〉 (講談社文庫)

ラブファイト―聖母少女〈上〉 (講談社文庫)

  • 作者: まきの えり
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/10/15
  • メディア: 文庫

 ▲ 上巻は、林遣都くんの真剣な表情。
    映画では、どちらかというとオドオドの表情が多いけど、垣間見せる真剣な表情。
    なんだか別人みたいに表情が違いますネ! 

【 上巻 】

上巻は映画と同じように、亜紀と稔の恋愛未満の関係が初々しくて!
相手に対する想いが恋だと気付かず、気付いても相手に伝えることができない。
そんな2人の関係が気になって次へ次へと読み進めました。
自分にも、そんな経験があったのかも忘れちゃったけど、なんとなく、
苦い想いでにひたって・・・。
なので、なおさらこの恋が成就して欲しいと願ってしまいました。

ラブファイト―聖母少女〈下〉 (講談社文庫)

ラブファイト―聖母少女〈下〉 (講談社文庫)

  • 作者: まきの えり
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/10/15
  • メディア: 文庫

 ▲ 下巻は、北乃きいちゃん!こちらの表情はりりしいですネ。
    かわいい笑顔と、りりしい表情がどちらも似合います!!

【 下巻 】

下巻も終盤になると、だんだん恋愛よりボクシングという方向に。
前半が亜紀と稔の不器用な恋愛を中心に描かれていたので、
後半は「2人の恋は発展するのか」、「想いが成就するのか」、
といった流れになるかと思っていたら、急にテーマが変わってしまった感じ。
  えっ、2人の恋愛は・・・!?
肩透かしをくった感じです。
なので、読後感は、ちょっともやもやって感じ。
しかも、映画のイメージもあって亜紀に思い入れがあったからか、
亜紀の行動にショックも…(苦笑)

っと、ちょっと批判的な感想に感じるかもしれませんが、原作も決して悪くなく、
というか僕にとってかなりの高評価なのです(好きと言っていい)。
そして、原作を読んで感じたのは、映画はテーマを絞って、恋愛部分をシンプルに
うまくまとめているなぁと思いました。
ほんと、映画がすごいお薦めです。

【 +plus 】

実は、映画を観おわった後、本屋さんに急いだ訳。
それは、映画館に入る前に本屋さんに寄って、ラブファイトの上巻が
1冊しか残っていないのをチェックしていたからです。
もう一度、映画の余韻(よいん)にひたりたくなったのだけど、僕みたいなのがいて、
先に買われてしまったら、今日はもうこの世界にひたれないぞ!
ってあせって走りました(^^)。
しかし、ラブファイトの上巻だけが1冊しかなかったのは、もしかして映画を観た後、
僕みたいに買いに行った人が多かったのかもネ。

ちなみに、先日、亜紀と稔に触発されて、ジム(フィットネスですが)で1時間ほど
走ってきました。
いつも、「無理は身体に悪い!」などと都合のいい言い訳して途中で切り上げるんだけどネ。
頑張っちゃいました。


タグ:原作
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

VOICE【市川拓司】 [ラブストーリーの棚]

「市川拓司さん」づくしの第2弾は「VOICE」

単行本「Separation」に収録された小説を文庫化した際に分けたそうです。
それでなのか、この作品の主人公も「悟」と「裕子」。
同じシチュエーションもありますが、しかし、まったく別の物語です。

【 story 】

高校生の悟はある日、隣のクラスの裕子の心の声を聞くという不思議な体験をする。
その後、偶然、近くの森で出会った二人はお互いの境遇を語り合ううちに惹かれあい、
付き合うようになった。
しかし、悟は身体を壊し、受験に失敗。一方、裕子は東京の女子大に進学することに。
距離のできた二人は、それでも共鳴しあう心がお互いを強く結びつけていたが、
次第に裕子は新しい世界を広げてゆく。
やがて、彼女の心の声が聞こえることが悟を苦しめてゆくことに…。

VOICE (アルファポリス文庫)

VOICE (アルファポリス文庫)

  • 作者: 市川 拓司
  • 出版社/メーカー: アルファポリス
  • 発売日: 2006/10
  • メディア: 文庫

【 いたい! 】

この作品は読んでいて、正直、痛い作品でした。
こんなこと書いたら、読む前に敬遠してしまう人がいるかもしれませんね。
Sparationが純粋に美しい、理想的な「純愛小説」だとしたら、
このVOICEは、現実的な「悲恋小説」だと思います。
愛し合っていながら、気持ちが通じ合っていながら、すれちがっていく二人。
初めはほんのわずかでしかなかった距離が、しだいに大きくなり、
そして、二人の人生は二度と交差しない未来へと進んでいく。
想っているからこそ、別々の道を進むことになるのは「つらい」し「いたい」です。

恋愛って、好きになればなるほど、相手の気持ちを知りたくなって・・・・。
でも、相手の気持ちってみえないから、不安になって、相手のしぐさの中に、
自分への想いを探したり
、ちょっとした相手のやさしさが最高にうれしかったりして・・・。
相手の気持ちが分からないから、ちょっとしたことに一喜一憂していますよね。

だから、僕も、相手の気持ちが分かったらどんなに・・・っと思ったことはあるけど、
でも、この作品の悟のように、相手の気持ちが、声が聞こえてしまうのも、つらいものですね。
相手の気持ちが見えてしまうから、そして、相手を想うからこそ、逆に、傷ついてしまう。
「心が痛い」そんなふうに感じた作品でした。

【 でも・・・ 】

SeparationとVOICE
どちらが好き?って聞かれたら、間違いなくSeparationを選ぶでしょう。
でも、どちらが印象に残っている?って聞かれたらVOICEです。
「好き合っていても結ばれない恋愛」って、現実にあり得る恋愛。
こんな熱烈な恋愛経験はないけど、片想いから始まって、
誰しも似たような経験があるのだと思います。
そんな経験と重ね合わさるようなストーリー。
僕も、自分の少ない経験と重ね合わせて、主人公たちの幸福感、絶望感に共感しました。

そして、このVOICEのラストの強烈なインパクト・・・。
印象が強く残る作品です。


タグ:市川拓司
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

Separation【市川拓司】 [ラブストーリーの棚]

11月は僕の記念月!(なぜかはヒ・ミ・ツ ^^)
そういう個人的な理由で、3月の「天使の卵」づくしに引き続いて、今月は大好きな作家、
「市川拓司さん」づくしといきます。
そして、その第1弾は「Separation-きみが還る場所」です。

【 story 】

  そう、とにかく、記憶の初めにあるのは、彼女のブラウスを透かして見えていた、
  下着のあざやかな白さだった。
  出会いから語ろうとすると、どうしてもこの記憶から始めなくてはならない。
  15の彼女は一切の虚飾をそぎおとした、とても簡潔なからだつきをした、どちらか
  と言えば控えめな印象の少女だった。

同級生だった悟と裕子は、やがて惹かれあい、親の反対を押し切って結婚した。
愛し合い、幸せに暮らす二人だったが、やがて裕子は身体に変異を感じる。
はじめは、次第に背丈が小さくなっていることに・・・。

だんだん、顔は幼く、体全体のサイズが小さくなっていく裕子。
原因の分からないまま不可思議な若返り現象は進み、徐々に孤立を深めていく二人。
やがて待ち受ける別れを悟ったとき、二人は寄り添いあい、大切な時間を過ごしてゆく・・・。

Separation―きみが還る場所 (アルファポリス文庫)

Separation―きみが還る場所 (アルファポリス文庫)

  • 作者: 市川 拓司
  • 出版社/メーカー: アルファポリス
  • 発売日: 2006/10
  • メディア: 文庫

 ▲ やさしい色づかいの表装は、物語の「やさしさ」を感じさせます。

【 やさしさ 】
市川拓司さんの作品は、ほんと、常に「やさしさ」であふれています。
やわらかな空気に包まれ、ふんわりと海の波間にただよっているような、そんな心地よさ。
だから、あたたかな気持ちにさせてくれます。
以前、このブログの他の作品で触れた際も書いたと思うのですが、市川拓司さんって、
きっと、根からやさしい人なんでしょうネ。
この作品を読んでいるときにも、
あらためて感じました。

【 純愛 】
『ナラタージュ(島本理生)』のような「燃えるような恋愛小説」が好みの僕。
でも、「やさしい恋愛小説」が読みたくなって、市川拓司さんの作品なら・・・と手に取りました。
だって、市川拓司さんの作品は、相思相愛ですしネ。

しかし、正直なところ、この作品を読む前は、妻が子どもになっていくというストーリーに、
「読みたい」っという触手が伸びませんでした。
どんな恋愛か想像がつかなくて。
しかし、とても素敵な恋愛小説です。
何かを失っていく毎日。そして、最後に待ったいるのは間違いなく「悲しい別れ」。
希望のない未来、そして限られた時間のなかで、あふれんばかりの愛が描かれえいます。
お互いに気持ちは伝わっているけれど、でも、もっと、もっと大切な想いを伝えたい。
主人公たちの、そんな狂おしいほどの気持ちが流れ込んでくる小説です。

そして、相手を愛おしく想う気持ちがとても純粋!
それは悟の想いからも・・・。

  セックスしている男女が最も親密な関係にあるなんて幻想に過ぎない。
  「親密」という言葉は、肉体ではなく、心の在りようを表すものなのだから。

セックスの一体感を全く否定するつもりはないけれど、本当に純粋な愛は、
そういうものなのかもしれないですね。
 ― ただそばにさえいてくれれば ―
そう思える恋愛って、とても素敵です。
読み終わって、純粋な、心地よい気持ちにさせてくれました。

【 +plus 】
「いま、会いにゆきます」と雰囲気が似た作品ですね
舞台の共通点も多く、例えば、二人で行った公園や森の中のランニングなど、
光景が重なりました。

ところで、この作品。
市川拓司さんのデビュー作にして、「14ヶ月 妻が子供に還っていく」というタイトルで
ドラマ化された作品だそうです。


タグ:市川拓司
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

ナラタージュ 【島本理生】 [ラブストーリーの棚]

窓の外は、瑞々しく、そして、やさしく輝く若草色の葉。
乱舞するようにあふれんばかりの光。
窓際には、女性がたたずむ。
その女性の顔は、陰になって表情をうかがい知ることはできない。
まるで彼女の心のうちのように・・・。

  ナラタージュs.jpg
  ▲ ナラタージュ (角川文庫)
   ( ↑ amazonへはタイトルをクリックしてネ!)
    作者: 島本 理生
    出版社/メーカー: 角川書店
    発売日: 2008/02
    メディア: 文庫

この小説の表装を担当した片岡忠彦さんという方に脱帽である。
そう思うほど、この表装は、この小説を物語っている。
若草色と黒を基調としたコントラストがすばらしい。

そして、帯

 壊れれるほどに、愛した。

この小説をまさにひとことで表している。
こちらも脱帽...。

私にとって、もしかしたら、最も大切にしたい作品かもしれない。

 

【言葉はいらない】

この作品は語る必要がない。
語ったら、その素晴らしさを壊してしまいそうだ。
文字にしてしまうと、その素晴らしさが半分も伝わらなくなりそう。

  とまどい
  迷い
  願い
  祈り
  あきらめ
  かっとう
  そして、想い

それらの心の叫びがググッと伝わってくる。
瑞々しいまでの感性。そして、痛々しさ。
  「祈りにも似た、絶唱の恋愛文学」
帯にはそう紹介されていたが、私には作者の「絶叫」にも感じられた。
この小説はすごすぎる...。
そして、こんな
全身全霊の恋をしてみたい

【感じて欲しい】

いつもとは逆に、最後にストーリーを紹介する。
ここも余計なことは語らないようにするので、雰囲気を味わっていた
だきたい。

大学2年の春、母校の演劇部顧問の葉山先生から携帯に電話が
かかってきた。

   「ひさしぶり。元気にしていましたか」
   電話ごしに彼の声が聞こえてきたとき、昨夜みた夢が現実に
   飛び込んできたような気がして、
私はすぐに返事ができなかった。
   「こちらこそおひさしぶりです、葉山先生」
   相手の名前を口にした瞬間、自分の心拍数が上がったような
   気がした。
   「良かった、返事がないから間違えてかけたのかと思ったよ」
   「あんまり突然だったので、びっくりしたんです。どうしたんですか
   急に」

泉が所属していた演劇部の公演の手助けして欲しいという依頼だった。

   「葉山先生」
   私は少し迷ってから、言った。
   「本当にそれだけの理由ですか」
   そう尋ねると、次の言葉まで間があった。電話の向こうで言葉を
   選んでいる気配が伝わってくる。
   いや、と彼は呟いた。
   「ひさしぶりに君とゆっくり話がしたいと思ったんだ」
   なぜか、こんなふうに電話がかかってくることが分かっていたよう
   な気持ちになった。
   「そうですね。私もひさしぶりに話したいです」
   一年前は四六時中ずっと胸の中を浸していた甘い気持ちがよみ
   がえりそうになったので、すぐに感傷だと思い直し、次の土曜日に
   行くという約束をして電話を切った。
   携帯電話から頬を離すと、右耳がぼんやりと熱くなっていた。

【ナラタージュとは】

【narratage】
 :映画などで、ある人物の語りや回想によって過去を再現する手法。


タグ:島本理生
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

カフーを待ちわびて【原田マハ】 [ラブストーリーの棚]

   カフー:果報。与那喜島の方言。いい報せ。幸せ。

「第1回日本ラブストーリー大賞受賞作品」

ラブストーリーが読みたい!って思っていたときに見かけた帯。
しかし、実は、買ってからしばらくお蔵入りしていました。
そして、2~3か月して、急に
ラブストーリーを読みたくなって、
読み始めたこの作品。
舞台が沖縄・与那喜島というだけだからではなく、
さわやかな風が吹いている素敵な作品です。

【story】
沖縄の太陽の下、祖母から譲り受けた雑貨店を営みながら、
愛犬のカフーと暮らす明青(アキオ)。
ゆるやかな時の流れの中で、変化はないが自由に平穏な日々を送っていた。
そんなある日、1通の手紙が届く。そこには、
  『私をあなたのお嫁さんにしてくださいますか。』
「幸(さち)」と名乗る女性からの手紙に冗談とは疑いながらも、
少しばかりの淡い期待と、もし本当に来てしまったらと緊張する明青。
しかし、その女性は現れず、時は過ぎていった。

気持ちに区切りをつけようと手紙を燃やした翌日の夕方。
明青は、散歩の帰り道にガシュマルの木の下に佇(たたず)む、
白い帽子とワンピースの女性と出逢う。
  「友寄明青さんのお宅は、どこでしょうか」
  「うち、ですけど」
 あ、と彼女の口元が、困ったような微笑でほころぶのがかすかに見える。
  「はじめまして、幸です」

幸は明青の家に居つき、お店を手伝い始める。

カフーを待ちわびて [宝島社文庫] (宝島社文庫 C は 2-1)

カフーを待ちわびて [宝島社文庫] (宝島社文庫 C は 2-1)

  • 作者: 原田マハ
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2008/05/12
  • メディア: 文庫

 ▲ 真っ青な空。作品のイメージどおりの素敵な表紙です。

【 心地よさ 】
さわやかな風が、すぐ脇を通り抜けていくような、そんな心地よい作品です。
展開は多少読めてしまい、ちょっと強引かなって思うところもありますが、
でも、素敵なラブストーリーです。

 幸という「美(チュ)らさん」は、なぜ明青の元へやってきたのか。
 幸が抱える秘密とは・・・。

ミステリアスな「幸」の存在。
そして、次第と大きくなる彼女の存在に、ただ純粋に「幸」を大切に思う、
そんな明青の気持ちが心地いいんです。
「カフー」はやってくるのか、ドキドキしながら先を読み進めました。
さわやかさを感じたいなら、お薦めです。

【 +plus 】
この小説を読んで、もっとラブストーリーが読みたくなりました。
そして、今、また違うラブストーリーを読んでいるのですが、こちらがまた、重い。
っというか、心の描き方が深い。
でも、私には、こういう繊細な作品のが好きかな。
こちらの小説も次に載せることになりそうです(※「こちら」は秘密です!)。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

クローズド・ノート【雫井脩介】 [ラブストーリーの棚]

【 本との出逢い 】 

映画館で予告を観たとき、そのストーリーに魅かれて『絶対に観よう!』
と思っていながら、タイミングがあわず見逃してしまった映画、『クローズド・ノート』
店頭でハードカバーの原作を見かけてから、ず~っと『読みたい!』
っと思っていた小説です。
何度か手にとりながら買うのを悩んでいた僕なので
(結局、欲しかった文庫を数冊買ってしまった(笑))、
新刊の文庫本を店頭で見かけたときには、うれしくて、うれしくて、
も~悩むことなく買いました。
こうして楽しみにして読んだこの作品。期待を裏切らない素敵な作品でした。 

【 story 】

  その男の人は、私の住むマンションを見上げていた。
  というより、二階にある私の部屋を見上げていた。

ある日、教育大学の学生である堀井香恵は、かなり使い込んだ風合いの
折りたたみ自転車にまたがり、時間が止まったかのように自分の部屋を
見上げる男の人を見かけた。
その男の人は、香恵に気づいても、人影に気づいたというような反応をし、
もう一度だけ香恵の部屋のほうをちらりと見て去っていった。
そして、香恵のほうへは振り返らなかった。
それからしばらくして、アルバイト先の文具店にその男の人が現れる。
気に入った万年筆を一生懸命探す彼の姿に香恵は好感を持つ。

そんなころ、自室のクローゼットで、前の住人が置き忘れたと思しきノート
を見つける。
最初は、人のノートを覗き見するのは嫌だとそのまましまっておいたが、
あるきっかけでそのノートを手にする香恵。
そこには、小学校教師の「伊吹先生」の生き生きとした日常がつづられていた。
その閉じられたノートが開かれたときから、香恵の平凡な日常は
大きく変わりはじめるのだった―。

クローズド・ノート (角川文庫 (し37-1))

クローズド・ノート (角川文庫 (し37-1))

  • 作者: 雫井 脩介
  • 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
  • 発売日: 2008/06/25
  • メディア: 文庫

 


 ▲ やさしい色づかいの表紙が物語のやさしさを語ってくれているようです。

【 恋物語としての魅 】

最後は涙かでてきてしまいました。
つらい涙ではなくて、じ~んと心を温かくする涙です。

この物語を抽象的にいうと、
  
何んとなく気になる素敵な人がいて。
  その人と話ができたらいいな~、なんて半分諦めながら、でも期待して。
  偶然に話ができたら、それがどんなたわいのない会話でもうれしくて。
  そのときの、相手のしぐさ、ふっとした表情がうれしくて。
  自分だけに許してくれたような、なにげない「しぐさ」がうれしくて。
そんな感じの、だれもが経験しているような、ちょっと素敵な甘酸っぱいお話です。
香恵と自分の経験を重ね合わせてしまって、ちょっとドキドキしてしまった。

そして、香恵の恋を応援するように、たくさんの元気をくれるのが「クローズドノート」。
そのノートに書かれた伊吹先生の前向きな生き方、一生懸命に生徒に取り組む姿勢、
そして、悩む姿は、香恵に勇気と元気をくれます。

生徒たちからの手紙がすごくよかった(あとがき(※参考文献)を読んでみてネ)。

【 +plus 】

 ▲ 原作を読んで、映画を観てみたくなってしまいました。

【 episode+ 】

小説や映画はもちろんドラマや漫画など、フィクションと分かっていても前向きな考え方、
姿勢とかに、影響を受けたり、元気をもらったことってありますよね。
僕が真っ先に思いついたのは、『僕の生きる道』。
DVDも買いました(大満足!!)。
何度も泣いて、自分も頑張って生きようと元気をもらいました。

ちなみに、僕は、自然に元気をもらったこともあります。
非常に苦しい悩み事があったときで、たまたま長野県の北アルプスにある
「燕岳(つばくろだけ)」に登りました

大自然の雄大さに圧倒され、美しさに心が洗われました。
自然の力強さに『くら~』ときました。僕なんかちっぽけなんだなって、本当に実感しました。
今でも忘れられない最高の光景です。


タグ:原作
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

ヘヴンリー・ブルー【村山由佳】 [ラブストーリーの棚]

『小説・映画がだ~い好き(*^^*)』を開始して1周年!
 勝手に立てた「記念企画」第3弾として「天使の卵」アナザーストーリー
“ヘヴンリー・ブルー”をご紹介します。
 僕とって記念すべき3月は「天使の卵」づくしです。
 春なので気持ちも「恋」モードなのでしょうか *^^*



【 Episode 】

“天使の梯子”を読み終えた後、「もっとこの作品に触れたい!」、
そんな衝動が湧き上がってきた。
そのとき「ふっ」と、映画化されたころ本屋さんの棚に平積みされ
ていた「白っぽい表紙の本」の映像が眼に浮かび上がった。
「もしかして!?」
そう、もう一度、出逢えました。
この素敵なお話に・・・

【 story 】

ベランダにかがんで見あげる空は、熱をはらんだ蒼穹に、
湧きあがる雲の白さがまぶしくて、思わず手をかざす。
植木鉢やプランターのひとつひとつに、丁寧に水をやっていく。

  ああ・・・どうしてこんなに胸が痛いんだろう。

そう思いかけて、ふと気づいた。そうか。あの日も、ちょうどこんな
ふうに晴れていたのだ。
夏姫がたどるのは姉・春妃との想い出。歩太との想い出。
そして・・・・

  ※蒼穹とは青い空のこと

  ヘヴンリー・ブルーs.jpg
  ▲ ヘヴンリー・ブルー 「天使の卵」アナザーストーリー
    ( ↑ amazonへはタイトルをクリックしてネ!)
    作者: 村山 由佳
    出版社/メーカー: 集英社
    発売日: 2006/08/25
    メディア: 単行本

【 夏姫の想い 】

この作品に“天使の卵”や“天使の梯子”のような、新たな清烈な
恋愛物語を望んでしまうと、この作品には物足りなさを感じてしま
うと思う。
この「へヴンリー・ブルー」は夏姫の回想。夏姫にとってすべての
時を止めることになった姉・春妃の死、そして、春妃と夏姫、歩太
をめぐるできごと・・・。夏姫にとって人生の転機となった出来事を、
夏姫の視点から淡々と想いかえす。

私も、正直、「天使の卵」や「天使の梯子」のような、新たなピュア
な物語を期待しなかったわけではない(というか、すごく期待して
いた)。しかし、この作品を読み終わってみると、この作品で
“天使の卵”や“天使の梯子”のように、物語を別の視点から事細か
にたどり直すことをしなかったのは正解だと思う。なぜなら、これら
の二つの作品で、春妃、夏姫と歩太の物語は既に美しく完結して
おり、夏姫の心情をすべて明らかにすることでさらに質の高い作品
になるとは思えないから。それほどこの二作品は完成されている
と私は思う。

そうはいっても、夏姫の視点から描かれたのは素敵だ。
“天使の卵”では、(悪い言い方をすると)邪魔者でしかなかった
夏姫の心情が描かれ、“天使の卵”の裏で苦悩していた夏姫の姿
がより鮮明になっている。そして、慎一の視点から描かれた
“天使の梯子”では明らかにされていなかった夏姫の本当の気持ち
が、少しだけ明らかにされて、前二作品により深みをあたえている。
そういう意味で、すべての出来事をなぞり直して語りすぎることは
なく、淡々とその時その時の心情を振り替えって、
長い闇と通り抜けて1歩踏み出そうとしている夏姫の姿が感じられ
るこの作品のスタイルはとてもいい。

前の二作品は男性の視点から描かれていていたが、この作品は
夏姫の視点から・・・。ふっきれたような夏姫の視点がすがすがしい。
そして、最後の二行に夏姫の心情がにじみでている―

【 plus+ 】

“天使の梯子”のあと書きによると、村上由佳さんは、“天使の卵”の
ときは春妃が理想の女性であったが、10年を経過し、夏姫のような
女性が理想に変わってきたそうだ。
私自身、“天使の卵”を読んだとき、春妃のようなはかなさを持つ
女性に魅力を感じていた。しかし、今は、強がっていながら、心の底
では怯えて震えている、そんな夏姫をもいとおしく思う。
見えていなかった夏姫の心情を知って愛おしくなったのか、それとも、
10年を経過し、僕も女性観が変わったのだろうか。

― 「ヘヴンリー・ブルー」とは、「天上の青」という意味をもつ朝顔の名 ―

  ※ レイアウトや誤字を修正しました。(2015年12月20日追記)

 


タグ:村山由佳
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(1) 
共通テーマ:
前の10件 | 次の10件 ラブストーリーの棚 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。